表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

4/24(水) <僕が神だ>

僕は、なんの特徴もないただの高校生である。

これまで生きてきた十数年の人生を、なんの山もなんの谷もなく、ただ普通に生きていた。

熱い青春や深い友情もなければ、病気やいじめに遭うことも無く、ただ単調な日々。

昨日だって、学校に行って勉強して帰るだけの、特に何もない普通の日だった。

夜22時、風呂に入ってパジャマに着替え、寝るためにベッドに入る直前までは――

ベッドに座ったとたん部屋が暗くなった。

停電かと思ったが、なんだか様子がおかしい。

暗くなっただけで灯りはある。

松明の灯りだ。

どこからかお経のような声が聞こえる。

それにお尻もなんだかヒンヤリする。

さっきベッドに座ったはずが、いつのまにか石の椅子に座っていた。

さらに、なぜか僕は全裸になっていた。


目が暗さに慣れてくると、まわりの壁が石で出来ていることに気づいた。

広さは20畳くらいだろうか、そこそこ広い。

湿気ているのか少しカビ臭い。

目の前にはいくつか小さな果物が置いてあり、その奥では十数人の人が僕に向かって土下座していた。

どうやら僕は祭壇に座っているらしい。

一番手前でお経を唱えていた司祭のような男が、顔を上げてこちらを見た。

僕の存在に気づいたようで、驚きと感動を混ぜたような表情に変わった。


「神だ。降りられたぞ!」


司祭のような男が叫んだ。

他の人も次々と顔を上げこちらを見る。

大衆に全裸を晒してる現状にどう反応すればいいか分からず、なんだか恥ずかしくなってきた。

司祭が手を合わせてこちらに語りかけてくる。


「降りたまわれし神よ、弱く儚き我らに御力をお貸し願いたい」

「力を貸す前に、服を貸してくれない……?」


僕がそう言うと、司祭とは別の男が服を脱ぎ、うやうやしくそれを献上してきた。

渡された麻布の服は、ゴワゴワしていて獣のような臭いがする。

着替えるために立ち上がったからか、まわりの人がまた土下座をはじめた。

服を着て石の椅子に座り直すと、司祭がまた語りかけてきた。


「神よ、我々に御力と恵みを与えてください」

「神って……僕は神なんかじゃないよ、ただの高校生」

「コウコウセイ? それは神のみに通じるお言葉。我々の言語にその単語はございません。意味をご教示願いたい」

「違うって、僕は……」


僕の言葉を止めるように、司祭が急に僕の近くまですり寄ってきた。

そして、僕にだけ聞こえるように小声で話しかけてきた。


「嘘でも良いのです、神と名乗っていただきたい。皆の希望になっていただけないでしょうか?」

「いや無理だって、そんな大層なもの」

「その嘘一つで、ここの人々の心を全て救えるのです。なにとぞ、なにとぞ」

「だって神ってあれだろ、『光あれ』とか言って光を生み出したり、そんなの僕に――」


そう言いながら手を前にかざすと、空中に光の玉が現れ、あたりを照らした。

人々がおぉっと驚いたが、僕も驚いた。

手を開けたり閉じたりすると、それにあわせ光の玉も付いたり消えたりした。

これは、僕が生み出した光、なのか?


「神にその御力を披露して頂けたぞ。やはり我らゼディラスの信仰こそ正義なのだ」


司祭の大きな声が石作りの部屋に響いた後、部屋がシンと静まりかえった。

そして部屋に居る人々が僕の方を見つめてきた。

これはどうやら言わざるを得ないらしい。

僕は立ち上がり、両手を斜め上に掲げながら言った。


「僕が、神だ」


わぁぁっと歓声が広がった。

悪くない気分――


次の瞬間、パッと目の前が明るくなった。

徐々に目が慣れてくると、いつもの自分の部屋に居るということに気づいた。

服もいつものパジャマに戻っていた。

ためしに手を前にかざし『光あれ』とつぶやいてみたが、なんの変化もない。

さっきのはなんだったのだろうか?

きっと、夢だったんだろう。

僕はそのまま、ベッドに横になり眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ