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あの鳥のように(後編)

 お兄ちゃんは私を突き飛ばし義父を起こす。

 「父さん!父さん!!わああ、父さん!!!」


 私はしばらく呆然としていたが、ハッと我に返って声を掛けようとした。手を伸ばし、

 「お兄ちゃん?私?・・・」


 「近寄るな!お前がやったんだろう?全てお前がやったんだ!1」


 「何言ってるのか分かんない!私、怖いよ、お兄ちゃん!!」 

 「とぼけるな!玄関に倒れているあの人は、義母さんの意識が戻って、聞いた事を伝えに来てくれたんだ!!義母さん、二階の階段から落ちたのは、突き飛ばされたからだって言ったんだ!朝、この家に居たのはお前と義母さんだけだろう!!そして今、玄関のあの人を抱き起こしたら、腹にカッターナイフが刺さってた!!あそこで正面から腹を刺せたのはお前だけだろう!!」


 「・・・・・・・え?・・・・私が・・・・・・・え?」

 

 頭に靄のようなものがかかっている。何か・・・・おかしい。


 朝、母さんとケンカして・・・それから・・・先に部屋を出た母さんを?・・・母さんを追いかけて・・・?

 階段のところで母さんの背中を・・・・・。


 ・・・さっき?さっきの玄関は?・・・・・男が玄関に入ってきて、ああ、この人は母さんの浮気相手だ、って分かって・・・こいつがいるからお義父さんとお母さんが離婚なんかするんだ、って考えたら、許せなくなって・・・?許せなくなって・・・・?

 許せなくなって、カッターナイフで一気に刺した・・・・。


 今・・・今は?今・・・

 このままじゃお兄ちゃんは行ってしまう。でも、お義父さんがここに居れば、居てくれれば・・・・お兄ちゃんも、ここに居てくれるはず、そう思って・・・そう思って・・・・??


 目の前にあったはさみで、お義父さんの喉を・・・?喉を・・・・・。


 「お兄ちゃん!私・・・私・・・・。」

 「うるさい!近寄るな!!とにかく病院へ・・・・」


 お兄ちゃんが携帯電話を取り出し、救急へ電話をかけた。

 状況を説明している、その背中を見ていると、また頭に靄が掛かっていくような・・・・。


 このまま救急車が来て、病院へ行ってしまったら、もう二度と会えない。二度と会えないんだ・・・・。

 どうしよう・・・どうしたら・・・・?

 そうだ・・・お兄ちゃんもここにいてくれればいいんだ・・・ここに・・・・。

 そうすれば、ずっと一緒に居られる・・・。お兄ちゃんと・・・ずっと一緒に・・・・。


 私は、お兄ちゃんにゆっくりと近づきその背中に向かってはさみを振り下ろした。その時、お兄ちゃんの向こう側から手が伸びてきて、私の手を掴んだ。

 瀕死の義父が、必死で手を伸ばしてきていた。


 私の行動に気付いたお兄ちゃんは、振り向き様に私を思いっきり突き飛ばした。


 私は頭を強打し、薄れゆく意識の中で救急車のサイレンの音を聞いた-------。



 次に気がつくと、私は拘束衣を着せられ、ベッドに固定されていた。


 私は精神を病んでいると言われ、ここで治療する。良くなるまではこの部屋から出せないそうだ。




 小さい、正方形の、鉄格子の入った窓から見える青空に、鳥が飛んでいくのが見える。


 私もいつか、ここを出て、あの鳥のように自由に何処へでも行けるようになるだろうか。


 ・・・そうしたら・・・、そうしたら、今度こそ、お兄ちゃんの所へ・・・愛しいお兄ちゃんの所へ・・・行って・・・・・ずっと・・・・・ずっと一緒に・・・・・。

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