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あの鳥のように(前編)

 私は、クラスメートに教えられたとある神社に来ていた。少々寂れてはいるが、地元の人や神社・仏閣マニアの人には有名な、強力な縁結びの神社だそうだ。


 お賽銭を投げ入れ、ぶら下がっている太い紐を思いっきり円を描くように振り回すと、上部の大きな二つの鈴がぐゎら、ぐゎらん、と重々しい音をたてた。


 そして正面を向き手を合わせ、一心不乱に祈る。


 お兄ちゃんと離れ離れになりませんように・・・



 お兄ちゃんと初めて会ったのは、小学四年生の夏だった。

 バツいちの母と結婚を決めた、同じバツいちのお義父さんが連れてきたのが、2歳年上のおにいちゃんだった。


 おにいちゃんは私に色々と気を使ってくれ、様々な面倒を見てくれた。

 かっこいいお兄ちゃんに優しくされる日々が続き、私のお兄ちゃんへの感情は、段々と憧れから恋愛感情へと発展していった。


 そして今年、私は中学へ進学する。お兄ちゃんと同じ中学へ進学し、自宅以外でも一緒にいられる、共有の時間が作れる---。

 そう思うと、中学に通い始めるまでの時間が待ち遠しかった。

 

 そんな矢先、母と義父の離婚の話が持ち上がった。


 ・・・・・そして今日、義父と兄は、出て行ってしまう予定だ。

 私が何も出来ないまま、この日が来てしまった。


お兄ちゃんと離れたくないんです!どうか、母と義父を、そして私とお兄ちゃんを離れさせないで下さい!

 ・・・・・強く祈り続ける。

 途中、朝、学校に行く前に母とけんかして出て来たのを思い出し、それからは私とお兄ちゃんの事だけを、さらに強く祈り続けた。


 放課後すぐにここに来たのに、気が付くとあたりは暗くなっていた。

 私は、最後に大きな声で

 「お願いします!私とお兄ちゃんを離れ離れにしないで下さい!!」

 と言ってもう一度深く頭を下げ、神社を後にした。


 家に帰ると、早速お祈りの効果が顕れたらしく、母が家の階段で落ちて病院に運ばれ、意識不明の重体に陥っているという。


 義父もお兄ちゃんも既に帰ってきて、居間にいた。義父は一度病院に行ってから帰って来たらしい。


 母は昼ごろ発見され、一命は取り留めた状態だったようだ。もっと遅ければ命に関わっていたという。


 私は、母のケガを心配するより、喜んだ。

 これで、まだお兄ちゃんと一緒にいられる、もっと居られる、そういう思いのほうが強かった。


 私も居間のテーブルのお兄ちゃんの向かいに座り、一緒にいられる時間を楽しもうとしたが、空気は重く、あまり交わす言葉もないまま時間が過ぎていった。


 私は仕方なく、図工の予習をと下準備を始めた。


 そして、不意に義父が私に話しかける。

 「真奈美ちゃん、落ち着いて聞いてね。今、この状況は辛いかもしれないけど、お義父さんたち、今日は次の家へ行って、不動産屋さんと話をしなくちゃいけないんだ。

 知り合いのつてで借りられるようになったから、その不動産屋さんには今日、一度会わないといけないんだ。だから、真奈美ちゃん、少しの間一人で居られるね。」


 私は、これでまたしばらくお兄ちゃんと一緒にいられる、すぐには出て行かないだろうと思っていたのに、違う家に行ってしまうということはやはり離れ離れになるのか、と思い、顔色が変わった。


 私の顔色を見て、勘違いした義父が私に言う。

 「気持ちは分かるよ。お母さん、あんな事になって今は心細いだろう。でも、今日はどうしても私達は行かなきゃならないんだ。」


 そう言うと、居間の隅にまとめてあった荷物を、義父と兄が持ち始めた。


 どうすればいい?このまま、お兄ちゃんと別れてしまうなんて・・・。


 うろたえていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。

 すでに荷物を持ってしまっていた義父たちが顔を見合わせていたので、私が出る事にした。


 「はい。どちらさまでしょうか?」

  そう言いながら、ドアを開けてしまった。

  

  そこには、見知らぬ男性が立っていた。普段ならいきなりドアを開けるなんてしないのに、動揺していたのだろう。


 すると、その男性は私を見て一瞬戸惑ったような顔をした。そして、私に語りかけた。

 「こんばんは。お嬢さんだけかな?他に誰かいるでしょう?そう聞いて来たんだけどな。」

 「な、何ですか、いきなり・・・」

 私が逡巡していると、玄関に男性もののクツが置いてあるのを見て、

 「ああ、やはりおられますね。声を掛けさせて貰いますよ。」

 え?と思った刹那、

 「すみませーん!文夫さーん、貝塚です!ちょっと話があるので、出てきてもらってよろしいですか?」

 大きな声で呼びかけ始めた。

 

 まだ夜も浅い時間とはいえ、なんて非常識な、あつかましい男だ、と思っていると、不意に声が止んだ。


 次の瞬間、男の口から血が吐かれ、私の顔や体に降り注いだ。


                           続く

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