#9 ジュウ
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「お兄・・・ちゃん・・・」
自然とその一言が口に出ていた。さっきまで他人の記憶が自分に流れ込んできている不快感が、やがて自分の記憶に刷り込まれる。
「そうだ。僕たちは兄妹だ。記憶喪失の理由、分かったよね?」
「お兄ちゃん・・・」
視界が歪み、目を擦ると、涙を流していることに気が付いた。自分が、いつの間にか。
それをネイラが優しくぬぐう。
すると、ピピピピピと、機械音が聞こえる。
「・・・おっと、もう、帰らなくてはいけない。さようなら、ベリアル。」
「お兄ちゃん・・・」
浸透していった記憶だが、今も戸惑いが隠せない。狼を背に、ネイラは去っていく。
「ベ・・・ベリアル・・・」
「うっ・・・うう・・・・」
ネイラの姿が見えなくなった後、泣き崩れ、リスタがその頭を撫でる。
「そ・・・そうだ・・・お母さんは!?」
「まだ、目が覚めない。呪術の影響かもな。」
そして、空から大きな翼を羽ばたかせる亜人・リノが戻ってきた。
「リノ、犯人は!?」
「ああ、見つかった。」
握っていたハンカチを開き、何かが落ちた後、それが大きくなり、人間の姿となる。
「うぐっ・・・・、ば、ばれた!?」
「こいつが犯人だ。犯行理由は、ブラックトロフィーという組織に命令されたらしい。こいつもその組織にはいっている。」
小太りの、眼鏡をかけた男が汗をかき、慌てふためいている。
「ブラックトロフィー?」
「ブラックトロフィーというのは・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれっ!!!それ以上は――――――っ」
バンッ!!という音と共に男の頭から血が噴き出した。そのまま、生気のない瞳のまま倒れ、命を引き取る。死因は、傷の形状から察するに、銃殺だろう。
「あっちだ。誰かがいる。」
リノが指さした先、木の上にスナイパーライフルを持った女がこちらに不敵な笑みを浮かべていた。そして、女のスナイパーのスコープがリノの脳天に向く。
バンッッッ!!!!
「よし、殺し・・・はっ!?」
吹っ飛んだはずの頭が無傷なことに驚く。額に煙が僅かに立ち、2pカラーの瞳で睨み付ける。
「ならば・・・」
女は標的をベリアルに変え、撃ち放つ。だが、これも当たらない。当たったのか、それも分からなかった。
「あ、あっぶなっ・・・」
ベリアルは鎧をまとい、防いだ。銃弾は跳ね返り、木にぶつかってコロコロと地面を転がる。そして、鎧を解き、銃を出現させ、撃つ。
それを、女は指で掴んで回転の摩擦を止め、力を殺す。
(これは。魔力!?)