#7 ベリアルトネイラ①
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「ねえ、お兄ちゃん。この花はなに?」
「んー?・・・・・・えーと、これは・・・分かんない。」
広い草原に咲き乱れる金色の合弁花を1輪摘み、兄にその名前を聞く。が、少し考えて結論を出す。
「帰ったら、図鑑見てみるか。」
「うん。」
足で草をどけ、家へと向かう。
「お兄ちゃん、なんでここにはこの花だけが咲いているの?」
黄金色の花を兄に向け、指で回す。
「それも・・・分かんないな。多分、図鑑には載ってないから父さんか母さんに聞いてみるか。」
「痛っ!!」
突然、膝を押さえ、座り込む。
「どうしたっ!?」
どうやら草で切ったようで、切り傷から血がつーっと垂れている。
「えっと・・・何か絆創膏代わりになるものは・・・あった!」
ポケットに手を突っ込み、ハンカチとティッシュを見つける。取り出し、ティッシュで擦らないようにやさしく血を拭い、ハンカチで膝を結ぶ。
「これで良し。さ、おぶってやるから、早くしろ。」
「うぅ・・・うん・・・ひっく・・・」
涙を拭きとり、兄の背中に乗る。
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「ただいま。」
「あら、お帰り。夕飯の支度できてるから・・・って、ベリアルは寝ちゃってるのね。」
兄の背に揺られ、すっかり気持ちよさそうに眠った妹・ベリアルをソファに横にさせ、兄・ネイラが椅子に座る。
そして、夕食を食べ終わったが、ベリアルは目を覚まさなかった。そして、その後も、目を覚まさなかった。
「ベリアル、どうしたのかしらね・・・?帰る途中で眠っちゃったときはいつも、夕食の時に目を覚ますはずなのに・・・。」
「今日はそんなに遊んではいないはずだけどな・・・」
夜、寝る前になっても僅かに輝く黄金の花を両手で持ったまま目を覚まさない。
「ふむ、ベリアルの身に何か危険なことが起きているのかもしれない。しばらく安静にして置いておこう。」
父が、ベリアルの顔色を見る。
その日はベッドに眠らせ、一夜が明ける。土の日(土曜日)、朝方はぽつんぽつんといった感じの小雨だったのが、10時ごろになると一変し、豪雨と化す。雷が10秒に1回のペースで落ち、これはただ事ではないと誰もが思うほどだった。
「どうしようかしら、ベリアルも全然起きないし・・・、ネイラ、お父さんと薬買いに行ってくるからベリアルの看病お願いね。」
そういって豪雨の中、父と母が薬を買いに行く。
「多分、薬局じゃなくてハルバさんの所に行くな・・・」
ハルバとは、常に薬の研究を行い、様々な病気に効く薬を生み出した人物である。
「ベリアル・・・今朝もご飯食べてないんだ。腹減ってるだろ?目を覚ませよ。」
頭に手を乗せ撫でるが、昨日動揺、起きるような素振りがない。草原にいた時までは何も予兆がなかった。
「もしかして・・・・病気とかじゃなくて、誰かの魔法か能力に干渉したのかもしれないな・・・・」
あまり考えたくないことを思わず考えてしまい、頭を振り、無理やり忘れる。
「それにしても、母さん達、大丈夫かな・・・?」
窓から豪雨の景色を静かに眺めていると、窓の向こう、カーテンに隠れ、死角になっていた場所から人の顔が半分現れ、こちらを見つめていた。