#5 ジョウトウ
「てか・・・ベリアル。何か、変な音しないか?」
「ん・・・?そう・・・・?」
リスタは何かの音が聞こえているらしいが、ベリアルには不審な音は聞こえない。
「足音か?それも、複数いる。」
「足音・・・・。何か、聞こえるような・・・・」
微かに連続した音が聞こえた。
「お、おい・・・狼だっ!!ベリアル!!お前の母さんを守るぞ。」
このまま二人で逃げたとしたら、リノとの契約を破棄することになってしまうし、さらには母の命が危ない。だとすれば、戦って退ける他ない。
(昨日、ヤンキーたちを退けたあの力・・・今は、使えるのかな・・・・・・ただ、試すしかない)
『グルルルルッ・・・』
狼が唸り声をあげ、全匹分の咆哮を同時に浴びる。それは耳に響くというより、風として、髪や服を揺らすような感じであった。
「ファスクッッ!!」
リスタによる魔法詠唱。手から解き放たれたオーラが直径1m程の火球へと化し、狼の大群へと襲い掛かる。
『ガゥルルルルッ・・・!!』
軽い身のこなしで火を避けていき、地面に衝突する。
「おりゃぁぁあっ!!!」
前回やったように、狼を殴る。避ける気配もなく、殴打が当たるが、前のように破裂しない。
「お、おい、ベリアル。何やってんだ。」
「使え・・・ない・・・」
昨日の能力が使えなくなっている。というより昨日、どうやって使えたのか、分からない。ただ、無意識に殴っただけだった。
「くっ、しょうがない。ファナクゥッ!!!」
手を横に振り、纏っていた魔力が水滴のように幾つにも分かれ、一つ一つが氷となって狼に襲い掛かる。
数匹、氷が刺さり血が飛び出り、3匹絶命する。
「よし、次っ・・・!!」
『グルルルルッウッ・・・・ッ・・・!!』
二人に飛びかかる。
「うあっ・・・・やめっ・・・」
リスタが腕を噛まれ、牙が肉に突き刺さる。そのまま、ベリアルの母の方へ飛ばされる。幸い、牙に引っ掛かることなく、抜けてくれたので、追撃はない。
「いってて・・・」
「くっ、リスタ・・・・。」
次は、ベリアルに襲い掛かる。それも、十数匹が同時に飛びかかる。押し倒され、動きを封じられる。
「たっ・・・・助け・・・・!」
これから噛まれるという恐怖が襲い、魔力を体中に纏わせる。そして、有無を言わさず狼の鋭い牙が同時に迫る。
――――ガキィィン!!
『ガゥゥウッ!?』
全匹後ろに跳び下がり、口から固形物がぽろぽろと落ちる。歯だ。歯が欠け、歯ぐきから離され落ちる。
「な、何・・・!?何が、起こった・・・の・・・?」
自体が全く飲み込めず、体毛を逆立てている狼たちを見る。
「っっ・・・・ベリアル・・・何だ・・・それ?」
「え!?」
リスタが指さした先は、ベリアル。どういうことかと見ると、自分の体に、魔力で作られた鎧が纏われていた。
「なに・・・これ・・・・私にも、分かんない。」
「と、とりあえず、お前は今、攻撃を受けても多分大丈夫だ!!一気に攻めろ!!」
「良く分かんないけど、上等ォッ!!一匹残らず、お母さんに手出しはさせないっ!!!!」