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ホープ オア ディスペアー -the first tales -  作者: 林檎鮫
第1章 
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#4 アジン

この森に母を攫った者はいるのだろうか。


「ベリアル、金属類は持ってるか?」


「えーと、持って・・・ない。」


「そうか。」


そして、ついに森の領地に足を踏み入れる。その瞬間、僅かに体が重くなる。


「くっ・・・・そうか・・・人間の体は僅かに磁気を帯びてるって本で見たことがある・・・この森、人間にまで干渉するのか・・・」


いつもよりも物理的に重い足取りで進んでいく。なんとなく、ここにいるような気がした。だが、足跡や、乗り物の跡が出来ていない。


「止まれ。」


突如、リスタが停止命令を下す。


「ど、どうしたの・・・?」


「̪シッ、静かに。」


リスタの視線の先を見ると、その原因はすぐに分かった。


―――ベリアルの母親が縄で木に縛られていた。猿轡(さるぐつわ)をされ、気を失っているようだ。幸い、外傷はないようだ。


「お母さ・・・」


「「止まるがよい。」」


拘束を外そうと、母の元に駆け寄ろうとしたとき、男の低い声が聞こえた。


「「俺の領地に足を踏み入れるとは愚かなり。」」


その声は聞こえてはいるものの、まるで脳内に直接語りかけられているように、声の主の居場所が分からない。


「どういう事だ・・・?どこにいる・・・・?まるで、脳内に・・・というか、全方向から聞こえるような・・・・」


「どういう事・・・?」


男の嘲笑が聞こえる。


「「男の方は察しが良い。」」


そう、聞こえた後、草が一点を中心に靡く。それと共に風が二人に襲う。そして、奴の姿が露わとなった。

人間ではない。亜人というべきだ。額からは日本の角が生えていて、そこはトガ二族、背中から羽が生え、そこはウィロウ族、人間の肌よりも真っ白に肌が透き通っていて、そこはハクバニ族、それぞれの一族の証を持っている。


「何だあいつ。見た目が色々カオスだぞ・・・」


「お前が、私のお母さんを攫ったの・・・・?」


奴の見た目に対してディスるリスタ、単刀直入に、変な流れでベリアルが奴に指さしながら本題を聞く。奴は眉間を爪で軽く掻き、その後腕を組み、しばし考える。思いついたような素振りも見せず、辺りをみまわし、ベリアルの母の姿を見てから、理解したようだ。


「「ああ、そういう事だったか。だが、我ではない。しかし・・・その犯人、分からんでもないぞ?」」


「え?本当?」


ベリアルが期待の眼差しで男を見る。


「「我は命あるものを見れば、いつ、どこにいったか、そして、生年月日、名前、色々と分かる。だから、それを使えば、誰が犯人かなど造作もない。」」


「じゃ、じゃあ・・・探してくれないか?」


「「・・・・いいだろう。ベリアル、リスタ、犯人を見つけ次第、伝えに来る。それまで、ここら一帯を見ていてはくれぬか?」」


犯人を捜してきてくれることと、ジキの森の監視という交換条件、少し条件が楽ではないかと思うが、楽に越したことはないだろう。


「分かった。この森を、私たちが守る。」


「「交渉成立だ。私の名はリノ・アルジェナ。それでは、すぐに見つけてくる。」」


そう言うと、翼を思いきり広げ、10m程の巨大なものとなった。そのままノーモーションで上空50m程まで飛んでいた。すぐに飛び去り、完全に見えなくなる。


「じゃ、ジキの森防衛戦、開始!!」


「そこまで大袈裟じゃないでしょ!!」


大規模な言い方に、ベリアルが間髪入れず突っ込みを入れる。そして、母の元へ駆け寄り、縄に手を掛ける。


「あれ?ほどけない・・・・」


「めっちゃきつく結んであんな。・・・・おりゃあぁぁっ・・・・っっつ・・・・っっっ・・・・・」


結び目に指を引っ掛け、全力で力を入れるが、一向にほどける気がしない。


「くそっ・・・・全然ほどけねえ・・・!?・・・・・・・ベリアル、これを見ろ。」


「何・・・?」


見ると、縄に謎の文字が刻まれていた。


「これ、呪術文字じゃねえか・・・?やべえ、早く解かないとベリアルの母さんの命が危ねぇっ・・・!!」


呪術―――魔法の亜種である。専用の文字を刻み、呪いを込めることで、対象者に災難が降りかかる。


「このパターンは・・・多分、縄がほどけないとか?」


「何その曖昧な感じ!?」


危機的状況の中、またもや突っ込みを入れ、緊張感が崩れる。



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