#1 見逃せない少女
―――夜。辺りはすっかり寝静まり、足音が静かに鳴る。
(やばい、やばい。早く帰らないと・・・)
その足音の正体は16歳くらいの少女。慌て、息を切らしかけながら走っている。
(・・・・あれは・・・・!?)
家と家の隙間、路地裏に今時全く見ない風貌のヤンキー4人が、幼い子供二人を囲み何か言っている。そもそも、こんな時間に子供が出歩いているというのも問題ではあるが、その自体を見逃せなかった。足を止め、助けるか、そのまま去っていくか、二つの思考が彷徨い、自分でも決断出来ていないまま、路地裏に来てしまった。
「お・・・・お前たち・・・!!子供をいじめるなんて、さささ・・・最低だよっ!!」
威圧的な言い方をしようとしたのだが、相手は四人、さらにガタイの良いわけで弱々しい言い方になる。ここまですでに言い出してしまったが、内心逃げてしまおうかという考えが勝りかけたが、なんとかその場にとどまる。
「あぁ?なんだ、このアマ。」
少女の制服の襟を掴み、額をぶつける。少女もそれに対抗し、額を押し返す。その時、既にマークの解かれていた子供二人は路地裏を出て逃げていた。
「あのクソガキたちはなぁ。俺達見て笑いやがったんだ。だからムカついてんだよ!!」
額を僅かに引き、再び強く額に叩きつける。
「うあっ!!・・・・」
頭蓋に衝撃が走り、脳が揺さぶられる。そのまま壁に叩きつけられ、全身に痛みが走る。首を掴まれ、壁と手で絞められる。
「あぐっ・・・あっ・・・やめっ・・・・がっ・・・・」
微妙に痙攣している手を無理やり動かし、男の頬を殴る。ほんの少しばかり絞めが緩くなる。
「はっはっは、まだそういう事が出来るか。」
そして、男の殴りが入る瞬間、光が少女の心臓付近で光る。全員が目を咄嗟に閉じるが、少女はすぐに瞼を開くことができた。何故か、眩しくはない。光を直視できる。
「げほっ・・・げほっ・・・・なに・・・・これ・・・・」
光が消え、彼女の首を絞めていた男が口から泡を吹き、倒れている。外傷はない。
「ど、どういう事だ!?テメェ、シャルク君に何しやがったっ!?」