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ヴァイス王国戦記 〜誕生〜

作者: 伊武

初投稿になります。よしなに。

これは、後に名君と呼ばれた男と稀代の忠将と呼ばれた2人の将の誕生物語である。


栄華を誇るヴァイス王国。煌びやかな朝の王城の廊下には、まだあどけなさが残る12歳の少年とクルトと呼ばれる執事が歩いていた。


「王子! おはようございます!」


元気よく声をかけた身軽な服装に身を包んだ男の名はロイス・レオ。齢24歳。彼は王子付きの近衛騎士団長を務めている。


「ああ、おはよう」


そして、この男がヴァイス・ソーレ。ヴァイス王国の王子である。


「朝早くから精がでるな、レオ」


「はい! 鍛錬こそが己を強くしますので! 王子もご

一緒に!」


「い、いや、やめておこう」


そう言うとレオはうなだれてしまった。


「そ、それならランチを食べたあとならいいぞ!

な!クルト!」


「予定はありませんので可能です」


男の顔がみるみる明るくなった。


「ありがとうございます!」


予定が決まるとレオはソーレに一礼して再び鍛錬に戻った。そして、ソーレは再び城内の散歩を始めてしばらく歩くと、そこには赤色の鎧を着た1人の女性がいた。


「おはようございます。 王子」


この丁寧を絵に描いたような挨拶をしてきたのは、齢24歳の王子付き近衛騎士補佐を務めるルイス・カラだ。この国では珍しいことではないが初の女性近衛騎士であり、戦乙女部隊(通称ヴァルキリー部隊)の団長でもある。


「ああ、おはよう。カラにしては珍しく朝が早いな」


「はい。今日は戦場に立つ日ですので」


今日は大陸の8割を治めるヴァイス王国が、いよいよ大陸統一を成し遂げるための大戦が行われる日なのである。


「そうだな、いよいよだな」


結局自分は戦場に立つことのない人生を送るのだな

とソーレは思った。


「戦争がなくなるのは良いことであると思います」


ヴァイス王国は元々敵国のミラ帝国と大陸を2分していたのだが、ミラ帝国皇帝が病気により死亡してから一気に弱体化し、ヴァイス王国の現王ヴァイス・カイ王の侵攻を許す形となった。ちなみにミラ帝国は紆余曲折あり現在はルーナ王女が現皇帝となっている。


「カイ王もさぞお喜びでしょう」


「……」


ソーレには思うところがあった。確かに父君であるカイ王は悲願である大陸統一を果たすだろう。しかし、戦においての手腕は尊敬に値するが、内政には目もくれない人であり独りよがりの決定をする人であるため、周りの評判はさほど良いとは言えないのである。


そのように物思いに耽っているとカイ王の近衛騎士の1人がやってきた。


「カラはいるか?」


「はっ!!」


「カイ王よりの伝言である。此度の戦にヴァルキリー部隊は不要。よって、留守を命ずる。」


「……承りました」


伝えた騎士は足早に去って行った。


「まあ、そう落ち込むな。戦のないことは良いことではないか」


「そうですが……」


見るからに落ち込んでしまったカラにソーレは提案した。


「そうだ!父君を見送った後に城下の散策に行こう!レオも誘って!」


「かしこまりました」


まだ元気はないがレオの名前を聞いた瞬間少し晴れやかになったように感じた。気付かなかったフリをしておこう。


「それでは、散策の準備をして参ります」


「ああ、頼んだ」


そう言うとクルトは部下に命じて準備をさせた。




カイ王を見送った2時間後、レオ、カラ、クルトを伴って城下に繰り出した。ヴァイス王国の首都は国の中心にあるため、流通の中心地になっている。城下には西洋風の建物が立ち並び、人の活気で溢れている。


「戦争が始まると言うのに民たちは元気だな」


「もちろんです!何があろうと元気でなければいけませんから!」


この活気は先々代の王が築いたものであると言うのは王国共通の認識である。そして学校の教科書にも必ず登場してくる話でもある。しかし、


「孤児も増えたように感じるな」


活気のある表とは裏腹に、戦争のための重税による孤児などの貧困が拡大しているのである。


(何とか解決しなければ……私が即位したらまず内から変えていかなければならないな……)


色々と散策を楽しみつつも王国のことを考えながら散策し、次の日の朝、いつもの様に執務をこなしていると廊下から声が聞こえてきた。


「何やら騒がしいな」


すると息を切らしたボロボロの騎士が1人、転がり込む様に執務室に入ってきた。


「どうした!!」


不吉な予感を抱きながらソーレが問いかけると騎士は、


「も、申し上げます!カイ王他10万の軍勢が夜間眠りについていたところにミラ帝国の軍勢が夜襲を仕掛け、カイ王および他の主だった将が討死。王国軍勢は壊滅いたしました!!」


「何だと!!」


執務室にいたレオ、カラ、クルトも驚きの表情を浮かべた。言い終えた騎士は夜通し駆けてきたのだろう、言い終えたと同時にその場に倒れ伏した。


「レオ、彼を治療室へ」


「か、かしこまりました」


レオが騎士を担ぎ出て行った執務室には幾分か静寂が訪れた。すると、クルトが言った。


「ソーレ王子、急なこととは思いますがご即位くださいませ」


「この状況でそれを言うか!」


いくら周りからの評判が低い王であったと言えど実の父親が死んだとあっては怒っても当然である。しかし、


「この状況だからこそです!王子。これから我が国は混乱するでしょう。これをいち早く鎮めなければたちまち蹂躙されるでしょう!ですから今ここで起つのです!!」


普段口数が少ないクルトが見せたことのない剣幕でまくしたてた。すると、帰ってきたレオ、カラ、クルトが片膝を立て、頭を垂れると同時にカラが言った。


「我らはいつ、如何なる時もソーレ王子の手となり足となり奔走いたします。ソーレ王子の命とあらば例えどの様なところであっても飛び込みましょう」


「……」


数秒考えた後にソーレは言った。


「後悔はしないか?死ねと言ったら死ねるか?」


「「「はっ!!!」」」


ソーレは多少ゆらげど決心した。これより王となり民や、臣の命を背負っていくと。しかし、問題は山積みである片付けなければならない案件は急を要するものばかりだった。12歳の少年には余りにも思い覚悟であったが背負っていくと決めた。


そして後に名君と呼ばれる王が齢12歳にしてここに誕生したのである。



















最後までお読みいただきありがとうございました。いかがだったでしょうか?短編ということもあり、あまり深く掘り下げませんでした。あまり設定等盛り込むと読み難くなると思いまして、評価次第では連載という形に持っていければと思います。評価のほどよろしくお願いいたします。

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