61 夜のお城へ1
部屋に戻ると、プーはもう起きていて夜の街並みを眺めていた。
「プー、もう起きて平気?」
ベッドに座ると彼はふわりと飛んできて、手のひらにちょこんと座る。
「まだ少し痺れてるよ。この姿だとかなり打たれ弱いみたいだ。」
プーも妖精の国では幼稚園児くらいの背丈はあったもんね。
小さい体になって何かと苦労があるのかも。
「怪我は精霊魔法で回復できるの?」
「俺が精霊に近い体だから、精霊魔法はあんまり意味無いかもな。これぐらいなら自然に治るよ。」
心配するなと笑う顔がいつものそれだったから大丈夫だろうと思うことにした。
「それで、お城では何があったの?」
プーはゆっくり思い出しながら話し始める。
…城に入ってワカとブリジット達が教会に向かった時、俺はすぐ城内に入ったんだ、
なにせ誰にも姿は見えないんだからな、安心しきってた。
そしたら、入ってすぐに良い匂いがしてきて、惹かれて奥へ向かったのが…
「いい匂い?」
「うん。花とか緑の気持ちいい感じがして。俺、元々木の妖精だから。」
それで奥に行くと、ガラス張りの屋内庭園があったんだ。
そこは手入れされた木や花が緑がキラキラしてて、とても美しい庭だった。
今思えば何かの魔法がかかっててあんなに強く惹かれたんだと思う。
どうしてもそこに入りたくて、たまらなくなったんだ。
どこか入れないか探して、窓の上に隙間があったから入ろうとしたら
バシッと何かに挟まって、、、
そこから記憶がない。
気がついたら鳥かごの中だったんだ。
「そうなんだ…。」
ネズミ取りみたいなのが仕掛けてあったのかな?と思ったけど口には出さなかった。
「それで、捕まえた妖精達は全部、1階の植物園に全部閉じ込めてるってお姫様は言ってたけど、中に妖精はいたの?」
「今考えたらだけど気配は何か感じた。前から何人も派遣されてるから、あそこに居るんだと思う。」
プーは下を向いて少し考え込んでいる。
表情がいつになく真面目だった。
「俺、仲間を助けに行きたい。捕まっているなら尚更。」
顔を上げてこちらに向き直り、姿勢を正したプーは真っ直ぐこちらを見る。
「姫の指輪も、もちろん取り返すけど、俺、先に仲間を助け出したい。
仲間がいたら出来ることが増えるし、こっちから扉も開けれるかもしれない。」
「扉っていうのは?」
「妖精の国への扉だよ。大昔こっちとあっちが行き来してた頃は
妖精が集まって輪になり魔法を唱えると、向こうの国への道が簡単に開いたんだ。
フェアリーサークルっていってな。もしそれが今も出来るなら…。」
大昔。
人間の姫様が、妖精王の指輪でディエバス神を倒す前の話。
人間と妖精はもっと親しい間柄だった。
「昔は人間の国から妖精の国へはすぐ行けたんだ。
妖精の取り替えっ子の話だとか、バンシーが泣くと不幸があるとか、おとぎ話が色々あるだろう?
もっと身近で…仲良しの隣人だったんだ。」
それこそ「小さなお隣さん」と呼び合うような。
人間の神様が色々不安定になってから、妖精の国と人間の国の通路が分断されたって。
昔はもっと自由に行き来出来たらしい。
「その頃にこっちにいた妖精さん達はもういないの?」
「まだあれから200年位だから、どこかにいると思う。
本当はそいつらが扉を開いてくれたら良いんだけど…滅んじゃいないさ。」
指輪の力で人間以外は追いやられてるようだから、どこかに隠れてるかもしれない。
元々自然が多い所が好きだから、こんな街中や人間のいる所では会えることは無いんだろう。
「じゃあ、扉を開くことが出来たら妖精王にこっちの世界に来てもらえばいいね?
直接姫と交渉してもらったら、全部解決じゃない?」
プーはまん丸な目をさらに丸くする。
「お前、そんな恐れ多いこと言う?」
「…だって、元はと言えば自分の失敗だよね?妖精達も沢山捕まったり、大変な目にあってるよね?
妖精王さんがこっちの世界に来れなくなったからこんなまどろっこしい『おつかい』をしてるんでしょ?」
「そ、そうだけど、、もし来れる可能性があるなら聞いてみるけど…。」
プーはあまり積極的じゃない返事だ。
妖精王さんとはあまり喋ったり出来なかったけど、怖かったり気難しい方なのかな。
でも人間の国が荒れた時、助けたかったけどこちらに来れなくて助けられなかった、
みたいにプーは話をしていたし、きっと冷酷な人じゃないよね。
むしろこっちの国に来たいんじゃないのかなぁ?
「そうだ、もし私が指輪を取り返せたらどうやって向こうへ戻る予定にしてたの?」
「ああ、指輪の力を使って人工的に?魔法的にフェアリーサークルを作れるんだ。そこから帰れる予定にしてた。」
「結構簡単に向こうへ戻れる感じなんだね…。」
「妖精の国(向こう)からは鍵もかけてないから、こっちからドアを開けれさえすればいいんだ。」
取りあえず仲間が心配だし、妖精への扉が開いたら色々解決しそうだし、
そっちを優先して考えたらいいかなって結論になった。
「わかった。何とか今夜、お城に忍び込んでみよう!」
「ありがとう。」
---
隣の部屋のアルマスがぐっすりと寝た頃、宿をこっそり忍び出た。
宿から王都へはそれでも近い方で、20分も歩けば街の外れの城へ向かう山道へ入れる。
そこから外灯のない暗い夜道をくねくねと曲がりながら登っていくのだ。
夜の街を歩くのは少し怖かったけど、闇の精霊に包まれると、とても静かで心が落ち着いた。
『あんまり闇の精霊と仲良くなりすぎるなよ、しつこく付きまとわれるぞ。』
夜の街をうっとり、ぼーっとしながら歩いていると
考えてることが顔に出たのか、釘を刺される。
精霊は生物では無いけれど、熱量のような個々の魔力の流れが存在していて、
魔法を使えば使うほどその流れが大きくなって行き、サラサラのスムーズになるそうだ(プーの説明で言うと)。
つまり魔法を使って経験値が上がったら、MPみたいなのが上がって
その属性の精霊魔法に必要なMPも少しで済むようになって疲れにくくなる…って感じなんだと思う。
それからレベルがすごく上がったら、言葉で頼まなくても意思疎通が出来るようになって
詠唱なしでも魔法が使えるようになるらしい。
(そのかわり四六時中精霊がまとわりついてくるそうだけど。)
魔法についてそんな話を聞いたので、魔法を沢山使う気で意気揚々とお城へ向かっている。
頑張って魔法を練習して、早くそのレベルまで持っていきたいな。
今までろくに役に立っていないから、パッと魔法を使えるようになったら活躍できるはず…多分。
見上げれば月の光が優しく、山から下りてくる夜風が爽やかに街を駆け抜ける。
暗い水路も、月の光をキラキラ踊らせている。
光の精霊さん、風の精霊さん、水の精霊さん、闇の精霊さん、植物の精霊さん…このくらいかな?
がんばろうね!
新年度、忙しくて中々更新できずです。
書き溜めてから‥とも思いましたが間が空きすぎるのもな、と思い投稿です。
まだまだ長い話になりそうなので、のんびり読んでいただけたら。
5/28 少し編集しました。
6月末までさらに忙しくなりますが少しづつ書き溜めていきます。




