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6 食事風景

『人間の食事ってのは面倒なものだな。』


主屋おもやの北西側にある正賓室せいひんしつ

装飾が施された柱が並び、白い壁が奥まで続く長方形の立派な部屋だ。

夕方になって少し薄暗くなった部屋には

10人程座れそうな長いテーブルに白い布がかけられ、席の端と端にロウソクが静かに灯り、木製の器とスプーン、お手拭きが並んでいる。


食事は、ウサギ肉のシチューと鶏と野菜のスープに、焼きたてのパンが2つ。

あとボウルに入った水。

目の前の大皿には取り分けられるようなハムとソーセージ、赤と黄色の果実が並んでいる。

レナさんと初老執事のギルロイさんがテキパキ支度を整えている中、

周りをプーがハエのようにぶんぶん飛んでいて、ちょっとうっとうしい。


そのうちに奥の扉から女性と小柄な男性が部屋へ入ってくると

こちらをチラッと見た気はするけれど何も言わず一番奥の席へ座る。

奥方様と呼ばれる、アルマスのお母さんと、弟さんかな。

顔はよく見えないけれど、2人とも金色の髪だ。


続いてアルマスが部屋に入ってきて、目が合うとニコッと笑い隣へ座る。

黒髪を後ろで一つに束ねていて、動きやすそうなシャツ姿だ。


「その姿も素敵だね。」


ドキッ。

動揺しながら目の前の食事に視線を移す。

そんな事を平気で言うタイプの人なのかな?と考えながら大人しく待つ。

レナさんから食事中に決して喋ってはいけないと厳命されているのだ。


「では…。」

食事の前にはお祈りがあるそうで、アルマスと同じ言葉を真似る。

「主ディエバス神よ、今日の食事に祝福と感謝を、、」

「でぃ、ディエバいすしんよ…」


遠くから冷たい目線が飛んできている気がする。


そして食事が静かに始まり、シチューやパンを緊張しながらほおばる。

ボウルに入った水を飲もうとして、レナさんに怒られた。

これは、手を洗う用のものだそうだ。


<人間の食事ってのは面倒なものだな。>


…うん、私もそう思う。




---



「それで、その娘はなんなのです?」


ドキッ。


食事が終わる頃、おもむろに奥方様―モルヴェンがアルマスに問いかける。

こちらとは決して目を合わそうとしない。


「母上、私の客人です。バーウィン家の6番目の娘のエイラですよ。」

「たまたま近くをミランとこの子が乗っている馬車が通りかかったので誘ったのですが、ミランは用事があるそうで彼女だけ招待したのですよ。」


何かスラスラと知らない話をしゃべっているけど。


「フン。なんであんな没落した家の者を誘うの。近づけないでね、私は子供が嫌いなの。」


隣のエミルを見て、貴方は別よと伝えている。

エミルは無表情だ。


「もちろんです、母上。食事もずらしますし、家には私が送り届けますので。」


モルヴェンは一瞥すると、エミルと部屋を出ていく。


部屋の緊張した空気がほどけて、すこし息をついた。


アルマスはこちらを向いてニッコリ笑う。

「ごめんね~、貴族って気難しくって。もう会わせないから。」


いや、気にしてないです。

泊めてもらって、ご飯もいただいて感謝してます。


スラスラと口から作り話が出て来るアルマスも、只者じゃない気がした。



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