51 王都の夜に2
ええ!
あの、いつも静かで大人で優しくてカッコいい…
アルマスが、何だって!?
『あいつ、すげーよ!ククッ…。』
「笑ってる場合じゃないって!止めに行かなきゃ…!」
すぐにローブをなびかせながら通りを駆け出す。
暴れてるって、どのくらいなんだろ?喧嘩?
アルマスが怪我するのも、誰かに怪我させるのも嫌だよ!
通りの角にある小さな酒場。赤い看板を外灯のランプが照らしている。
【スーニャの酒場】
開きっぱなしの扉からは光が溢れ出し、中からは騒がしく歓声が聞こえる。
「おーそこだ!やれやれー!」
「よっし俺、若い兄ちゃんの方に銅貨20枚!」
「のった!」
「アタイも!」
闇の精霊さんにもう一度姿を隠してもらってから、
そーっと騒がしい酒場の中をのぞく。
テーブルがひっくり返ったり椅子が倒れている荒れた酒場。
人々に囲まれて、中央で殴り合っている男性が2人。
ガタイの良い皮の鎧を着ている傭兵風の男と、、アルマスだ。
「プー、これどういう状況!?」
『やー、アルマスが絡まれて、そんで…』
バコッ☆
その時、アルマスが放った下顎へのストレートが見事に決まり、
相手はそのままガクンと気を失い倒れこむ。
酒場中にワアッと大きな歓声が飛んだ。
「っしゃー!!アンちゃんつえーぜ!」
「しびれるゥ~!俺のおごりだ、飲め飲め~」
「んだよーアイツ口だけだな!」
ワァワァと大変な騒ぎになっている中、
アルマスはぼーっと握りこぶしを見つめて立っていた。
「…ヒック。俺そろそろ帰ります。嫁が待ってるんで…。」
嫁って誰。
おもむろに椅子やテーブルを片付けはじめたり、
気絶した男性の介抱を頼んだりしてから、フラフラと店を出る。
「兄ちゃんまた来てくれよな!今度はおごらせてくれ!」
アルマスは後ろ手に店を出て、真横を通り過ぎる。
精霊さんのお陰でこちらには気付いて無いようだ。
ふらふら~と壁にぶつかりながら路地を歩くアルマス。
あーあ、こんなになるまで飲んで、喧嘩して…。
もー、仕方ないなぁ。
隣を歩きつつ、服を引っ張りながら真っ直ぐ宿へ導く。
宿はすぐそこだからね。
「…ワカ?」
えっ。
見上げるとアルマスもこっちを見ている。
えっと、精霊さんの魔法で見えてないはずよね?
『あ、触っちゃってるから、薄っすら見えてるかも?』
薄っすらって!?そーいうもん!?
慌てて手を離そうとするけど、素早く捕まってしまった。
身体的なトロさは壊滅的。
あー、これ魔法の事完全にバレちゃったよね…。
「ん…?これ、夢?」
アルマスはしゃがんでボーッと顔を見つめている。
えーと、なんとか夢ってことに…なるかな?
こくり。
何も言わずにうなずいてみる。
夢だよー宿に帰ろうねー。
「・・・。」
じーっとこっちを見ている。
や、やっぱ無理があったかな…?
「…ぐすっ。ワカぁ…。」
ボロボロっと涙がこぼれたと思ったら
ぎゅーっと抱きしめてきた。
「ぐすん、ぐすん…ワカに会いたい~…。」
いや、ここに居ますよー。
あーあ。この酔っぱらい、
どうするかなぁ、もう。




