50 王都の夜に1
アルマスが、珍しく不機嫌顔を隠さず食事の席についていたのは知っていた。
ブリジットは上機嫌でアルマスをからかっていたのも見ていた。
あの時、途中でしっかりフォローを入れるべきだったか。
それとも食事が終わってから、部屋を訪ねてゆっくりお話すべきだったか。
後悔先に立たずって、こういう時に使うんだっけ…?。
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宿屋の食事はとても上品で、あっさりしていて美味しかった。
塩味の野菜スープをおかわりして、お腹いっぱいになったのですごく眠たい。
ブリジットと寝る支度を整えている頃、プーが窓の隙間から入ってくる。
『アルマスの奴、外に出ていったぞ?』
えっ?アルマスが?
「また聞き込みに出たのかな…ちょっと見てきてくれる?」
『使いっぱしりじゃないぞ!…勿論見に行くけど。』
好奇心に勝てなかったプーはまた外へ出ていく。
宿屋の人が夜は危ないって言ってたな。
アルマスは男性だし強いから心配ないとは思うけど…。
「何かあったんですの?」
ブリジットは髪をブラシでとかしている。
あれだけ狭い思いをしたのに自分の鞄はキッチリ抱えてきていて
美容関係の小物も化粧品も完備していた。
「いや、ちょっと妖精さんと話をしてて…。」
「ワタクシも姿が見えたら良いんですが…気にせずお話してくださいね?
今日は疲れましたし、先に休んでいますわね。」
ブリジットはボフンとベッドを占領するとくるっと布団を巻いてうずまる。
いいけど、私の入る隙間は開けておいてよ~。
とにかく、心配だから様子を見に行こうか。
厚手のローブを引っかけて廊下に出る。
「闇の精霊さん…私の姿を誰にも見つからないよう闇に隠して。」
段々魔法にも慣れてきていた。
まず、魔法の姿をイメージする。
イメージ出来ることは魔法で出来ることってプーが言ってたし。
暗いもくもくした闇の煙が、自分を包んでいき、普通の人の目には見えなくなるイメージ。
それから精霊さんに呼びかけて、言葉の形にする。
うん。
イメージ通り闇の精霊さんが煙のように周囲を囲んでくれている。
本番も近いんだし
ちゃんと練習して、いざって時に使えるようにならないと。
…よし、練習を兼ねてこのまま外に出てみよう。
1階はもう食堂が終わってるから明かりが少し暗い。
でも調理場には明かりがついてるな。
「闇の精霊さん、足音や床のキシミの音も消してね。」
それから一応、そーっとそーっと階段を下りる。
全然音がならない。
2mmくらい浮いてる感じ。
・・・。よし、完璧。
これ隠密行動かなりいけるんじゃない?
忍者になれるかも。これ楽しいかも。
あ、でも疲れて倒れたらいけないから
外へ出たらすぐ魔法は終わりにしないと。
継続性のある魔法は、続いている間ずっと気力みたいなのを使い続けてしまうんだよね。
ゲームでいうMPってやつなのかなぁ?
自分のステータスとか見れないんだろうか?
あー、見れたとしても村人以下の最弱だろうからいいや。
超貧弱ステータスの車酔いスキル付きだよきっと…。
そんなこんなで宿の外に出てから「魔法はここで終わり」と宣言して解除する。
それから辺りをキョロキョロ見回しながらプーの帰りを待つ。
まだ夜は肌寒いからローブをしっかり被る。
王都は道々に外灯があって明るいし、すべての道が舗装されてるし、
そこかしこで夜でもお店が開いていて、やっぱり都会だ。
『おい、アルマスだけど…』
そのうち遠くからひらひらっと光りながらプーが戻ってきた。
「あ、アルマスいた?聞き込みしてくれてた感じ?」
プーはにやにやっと笑う。
あーこの顔、嫌な予感…。
『角の酒場でベロッベロに酔っ払って暴れてるぜ。アルマスが。』




