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5 お屋敷と使用人

じゃばじゃばじゃば


真っ裸で女の人にされるがまま体を洗われている。


「…ほんとアルマス様は何をお考えなの。こんな子供を拾ってきて…!」


ぶつぶつ言いながらもメイドのレアさんが

ゴシゴシこすって体の泥を落としてくれている。


レアさんはまだ若く、17歳くらいだろうか。

切れ長の茶色の目。

栗色の長い髪をキツく結わえてお団子にしていて、細身で背は低い。

袖まくりして、紺のスカートもたくし上げている。

このお屋敷に生まれたときから仕えているそうだ。

手はゴツゴツしていて力強く、若いのに働きモノの手って感じだ。


性格は、キツそうな感じだ。



---



気絶させるくらいにぶつかって

変なものも飲ませちゃって謝るのはこちらなんだけど

ぶつかったお詫びがしたいと、アルマスって人がお屋敷に招いてくれた。


丘の近くのお屋敷は、2階建てのレンガ造りの古めかしいお屋敷。

メイドのレナ、執事のギルロイと馬番のロイドが使用人で

アルマスさんは、お母さんと弟との3人で暮らしているそう。

お父さんは数年前に無くなって、今はアルマスさんが領主としてこの辺りを治めているんだって。


入ってすぐに開けたホールがあり、右手の応接間に通されかけたのだけれど

泥まみれになっている姿を見たレアさんが驚いて身支度を申し出た。


お屋敷の北側には小さな庭があり

右には馬小屋と倉庫、左側は使用人用の平屋の建物が隣接されている。

貯蔵庫や洗濯場、パン焼き場や従業員の部屋なんかがあるそうだ。


来客用のお風呂みたいなのは施設に無いらしく

左側の建物に入り、キッチンを抜けた使用人用の洗い場で

お湯を用意してもらい、普段は使わないらしい石鹸で洗ってもらう。


ちなみに、プーには屋敷のホールで待っていてもらうように頼んだ。

プーの姿は誰にも見えないらしいけど、裸を見られるのは遠慮したいし。


レアさんには自分で洗うと言いかけたんだけど、問答無用だった。


どうやら、何もわからない5歳くらいの子供扱いをされている。


アルマスさんには天使と思われたようだったけど、

普通の人には普通の子供の姿で見えているんだと思う。

鏡が欲しい。


そうこうするうちに、綺麗に体を拭いてもらい

やわらかな肌触りの生成きなりのワンピースを着せてもらった。

胸の下と首元にリボンとレースのあしらいがあって、半袖は少し丸く膨らんでいる。

パフスリーブってやつだ。

絹かなぁこれ。

なんか良いものを着せてもらったみたいだ。


「ふふっ。少しはまともになったわね。」


レナさんは自分の仕立てに満足そうに頷いている。


「靴はひとまずお古のサンダルだけれど、明日には子供用の靴を用意させるわ。」


古いけれど子供のサンダルのようだった。

それでもぶかぶかだったけど、裸足より全然快適です。


「ありがとうございます。」

ペコリとお辞儀をすると


「…ちゃんと喋れるのね。」

レナさんの目が一瞬さらにつり目になった気がした。


「貴方、一体どこの子供なの?親は?何が目的で旦那さまに近づいたってわけ?」


ひえっ。なんか怖い。


「えっと、たまたまぶつかって…」


「この辺り一体はダナン家の敷地内なのよ?アルマス様はご当主様なのよ?知らないわけないわよね??」


入ったらいけない場所だったのか…。

それに偉い人に色々悪いことしちゃったな。

知らなかったことでと申し訳なさそうな顔をしていると、レナさんはバツが悪そうに取り繕った。


「…そんなに責めてるわけじゃないわよ。何者か確かめてるだけなんだから。」


「とにかく、アルマス様がお客人として扱うようおっしゃっているからそうしますけど。」


髪の毛を素早く編み込みながらレナの顔が近づく。


「ある程度過ごしたら自分からお屋敷を出ていくこと。いいわね?」


怖いからコクンと頷く。


フッ、とレナは満足そうに笑う。


「なら好きに過ごしたらいいわよ。旦那さまが珍しくワガママおっしゃったんだから。」

「でも奥方様と弟のエミル様には近づかないこと。お二人には招かれていないんだからね。」

「もしみなし子なんだったら、数日中に引き取り手を探してあげるから安心しなさい。」


全てにコクンと頷く。


「で、貴方の名前は?」


妖精は名前を名乗ってはいけない―。

なんとなく、自分もそうなのかな?と思った。


「えーと、、わ、わか、わか、」


わからない~


とっさに名前を考えようとしたけど、なんか汗が出てきて思いつかない。

いっそ記憶がないって言ってみようか。


「ワカ?ワカって名前なのね?」


え?

あ、う、うん。と頷く。

呼び名なんてどうでもいいよね。


ふぅっ、とレナは息をつく。


「じゃあワカ、これからお食事だけれど、食事のマナーは知っている?」



今度はブンブンと首を横に振った。



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