48 王都
王都―リングヒルの街。別名「指輪の街」とも呼ばれる。
中央山脈を背にして、西へ西へと広がっている大きな都市。
最東端の丘の上には街を見下ろすようにデリーン城がそびえ立っている。
「この辺からもう全部リングヒルだよ。」
王都リングヒルは、セリドウェンの教会都市と違って壁や境界線は無く、道に沿って延々建物が並んでいる感じだ。東に進むにつれ、背の高い建物や広場が目立つようになる。
まもなく街の中央付近にあるレンガ造りの大きな宿屋に到着した。
止まる時、ヒヒーンと馬が暴れて驚いたけれどすぐに収まり、
今回は車酔いせずに無事にすんでよかった。
「ひとまず1週間この宿を手配してもらったから、王都観光もできるね。」
ドアが開くとアルマスは先に下りて手を引いてくれる。
御者の人も一緒に荷物を下ろしてくれて、一礼をすると馬車は間もなく帰っていく。
木の窓枠にも飾りが凝っていて、3階建てのどっしりとした立派な宿だ。
「それから後は、王都で…家を探すの?」
「不動産屋も紹介してもらってるから、決めようと思えば家はすぐ決まるかもね。」
「…その、親戚のコトが片付いてからでもいいしね。」
そうだった。
王都に行きたいって言い出したのは私で。
ここに親戚がいるからって事になってるんだよね…。
妖精は嘘をつかないって言うけど、
嘘をついたら何か体に悪いことがあるんだろうか?って位に、すごく辛い気持ちになる。
少しうつむいていたら、頭を撫でられた。
「…色々話をして、それから考えようか。」
アルマスは無理に聞き出そうとはしない。無理強いもしない。
いつも私から話をするのを待ってくれているみたいだ。
「あの…私も、アルマスに話したいこと、いっぱいある。」
受け入れてくれるだろうか。
人間じゃない事とか、魔法のこととか。
「うん。いっぱい話をしようね、これから。」
優しい笑顔が、より辛かった。
すべてが終わって、帰ってしまえばそれで終わりだけど。
離れたくないのが辛くて、嘘も辛くて
好きも辛いな。
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レンガ造りのドータナの宿。
チリーン♪と銅鈴の音が鳴って宿屋のドアは開く。
ホテルのように入り口すぐに受付があり、年配の男性がカウンターで管理をしている。
「セリドウェン教会から承っております。2部屋を1週間、3階でお取りしておりますよ。」
アルマスがチラッとこっちを見る。
ん?
「1部屋にして、あとはキャンセルで返金してもらうのは可能ですか?」
同室…ってそうだよね。お金に余裕もないだろうし。
いいよね?ってこっちを見るから、うんうんと頷く。
「そうですね、明日からの分ならキャンセル扱いで…」
と、その時。
「何を言ってるんですの!?教会から2部屋と伝えていますでしょ!?これでいいんですの!!」
えっ
振り向く。
ええっ!
「ブリジット!?!?」
金髪カール頭、栗色の瞳。
教会にいるはずの彼女がそこに居た。




