47 霧の朝
「さぁ、出発だね♪ワカ。」
アルマスのテンションが珍しく高い。
出立の朝。
今日も辺りに霧が出て辺りは霞んでいる。
王都へは歩いても行けない距離じゃないけど、教会の客人としてのメンツ的に馬車を出してもらうことになっていた。
ブリジットや歌巫女達にいくつか服のおさがりをもらって、お土産の授与品なんかも合わせて沢山馬車の荷物入れに詰めてもらう。
「どうせ近くなんだしこっちで住めばいいのに…今は人手不足でホント困っとるんじゃがなぁ。」
ロナンさんは名残惜しそうに出立の手伝いをしていた。
「わかったよ、その時は頼む。」
「落ち着いたらすぐ、住所を知らせてくだされよ。」
多分ロナンさんはアルマスと一緒にいたいんだろうなって思う。
アルマスにとってもそれが一番良い気もするけど…。
「ん?どうかした?」
アルマスはすごく晴れやかな笑顔。
まさかこのままここにいたら?なんて言えないし、ひとまず王都まで行ってから考えよう。
お城がどんな所か調べたり、色々やること考えなきゃ。
裏門まで、教会でお世話になった人達が見送りに来てくれている。
「ワカ!また遊びに来てよ、約束よ!」
昨日一緒に怒られた歌巫女達。まだパジャマ姿のままだよ。
あれ、さっきまでいたブリジットの姿が無い。
さっきまた、いつでも会えますわねって言い合ったし、またすぐ会えるね。
アルマスも何人かの神官さんと軽く挨拶をして、馬車に乗り込む。
御者さんが軽くムチを振るうと、馬は静かに走り出した。
ありがとうー!と姿が見えなくなるまで手を振った。
さて、次はいよいよ王都だ。
がんばって「おつかい」を果たさなきゃ。
…。
アルマスは走り出してすぐ、正面の席から左へ移ってきた。
その勢いで手を繋ぐ。
そうか、久しぶりに2人っきりだ…ニヤニヤしてる1匹は置いといて。
アルマスはニコニコっと楽しそうだけど、こっちは恥ずかしくて段々顔が上げれなくなってくる。
あ~すぐ顔が赤くなるの、何とかならないかなぁ。
「ワカ、あんまり下を向いてると酔うよ?」
いや、誰のせいだと…。
右側の窓を開けて外の景色を見る。
アルマスの方は見ない。見れない。
「ワカ、教会は楽しかった?」
こくり。
「沢山友達ができたし、ブリジットにはすごくお世話になったよ。」
「今度はゆっくり、この街に観光に来ようね。」
「うん。」
本当に、そう思う。
馬車はそのうち教会都市の出口を抜け、真っ直ぐに街道を進む。
左手から伝わる体温が、温かくて、優しくて、心地よかった。
ずっとこのまま手を繋いでいられるなら
馬車が止まらなくてもいいかな、なんて馬鹿なことをぼんやり考えていた。
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20話くらいかかって、やっとこの街を出立してくれました。




