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45 老執事の心馳せ

「坊ちゃま、上手く行きましたかな?」


「ありがとう、ロナン。何とか解決しそうだよ。」



---


最初の日にお聞きした時は、軽い冗談かと思ったけれど

アルマス様はどうやら本気であの、小さなワカ様を大切に想っていらっしゃるようだ。


少し若すぎるかな?とは思うけれど、なぁに、後10年もしたら立派な奥方になれるだろう。

貴族間では生まれたての赤子と婚約することだって珍しくはない。

それより出自しゅつじが不明なのが気になるけれど、

何より、あの思慮深いアルマス様が自ら選んだお相手だ。


私めが必ず何とかいたしますぞ、アルマス様。



「ごめんねと言ってワカは走って去ってしまったんだけど…

 もしかして僕は振られたのか?」


「それだけではなんとも…。もう一度、ちゃんとお話する機会を作るしか無いですな…。」


昨日の晩、青い顔をして食堂に戻ってきたアルマス様を

部屋にお連れして色々事情を聞き出した。

誠意を込めて、ワカ様に愛を伝えたそうなんじゃが…


それから儂は直々に出かけ、マクファーソン家のドアを叩いた。


「…こんな時間に誰です?無礼ですね。」


しばらくしてドア越しに声が聞こえる。

まったく無愛想なメイドじゃ。それに返答が遅い。


「バーウィン様に教会のロナンが、元ダナン家の執事ロナンが来たとお伝えください。」


ガタガタッとドアの中で音がする。

「えっ!ダナン家というと、あの執事コンテスト4年連続優勝した殿堂入りのロナン様ですか…?」


「そんな昔のこと忘れたわい。それより、頼みたいことがあるんじゃが…。」


なんとかバーウィン夫妻のご都合を伺うと、儂も同席が条件となってしまったが

首尾よく明日、アルマス様をお茶会に招待していただけることとなった。


ふぅ。なんとかお話する機会をお作りせねば。


アルマス様の滞在中は、しばらく教会に泊まって爺やがお世話をするかの。




---




一夜明けて。


なんじゃ、あの金髪浮かれ巫女は!何故同席しておる!

邪魔ばかりしおってっ…!

大体、ワカ様のお世話も儂がすると言ったのに無理矢理役目を奪いおって~!


「ほんっと、筋肉ジジイのお陰で馬車が狭いですわ!」


こんのぉ~~!馬鹿娘がぁ~!

そんなに儂の筋肉が見たいのかっ!!


・・・。


・・・。


王国一の歌巫女なのは認めてやろう。

スローニャ様があんなに喜んでおるわい。

今年の寄付金も安泰だな…


それに、バーウィン様には少し打診はしておったが

上手くアルマス様を気に入ってくださったようで良かった。


しかしこんなに人数がいたら、2人きりで話していただく機会が無かったわい。


こうなったら馬車を下りたあと、あの金髪娘を引き止めておきますから

会う約束を取り付けてくだされ。


・・・。


ふぅ。なんとかお伝えできたようじゃな。


よし、では時間までに美味しい料理で気合いを入れていただきましょうか。

もちろん身支度もお手伝いしますぞ。

お屋敷で栽培していた種類の薔薇の香油も手に入れましたから。


そんなに緊張しなくても大丈夫です、アルマス様。

ミュージェル様とノーラン様の忘れ形見である、美しくたくましい御方。


ノーラン様以外お仕えしない誓いを立てたせいで、お側に居られなくはなりましたが

ギルマスから様子は逐一聞いて、奥方様のことも案じておりました。

少し大人しすぎる様子に、心配もしておりました。


ここまで本当にご立派になって…ううっ‥。とイカンイカン。

歳を取ると色々緩くなってしもうてな。


あとは上手く行くようお祈りするだけじゃ。

どんな結果であろうとも、爺やがついておりますとも。


さ、行ってらっしゃいませ、アルマス様。


ロナンには、口では「坊ちゃま」と呼んでいるけど

心の中は「アルマス様」と呼んでいる執事性質があります。


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