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44 乙女の妄言

…あれから、どうやって部屋に戻ったのが覚えていない。


大丈夫ですの?と言われたけど、なんて答えたか覚えていない。

とにかくベッドの中でぼーっとしている。


「…プーさんや。」

『…なんだよ。』


「どういうこと?」


『…俺もさ、一応色々考えたんだけど。』

「うん。」


『最初、アルマスの屋敷を出た時、襲われたよな?』


うん。山道で馬番のロイドさんに…。

レナはあれから上手くやっているだろうか。


『その時、アルマスがしびれ毒を盛られたかなんかで、植物の精霊を使ったよな。』

「あーうん、そうだった。」

『惚れ薬も毒の一種だし、その時に効果が消されてたんじゃないかと思ったんだけど…。』


「…そんな前から?」


じゃあ、2人で山を抜ける時、山肌のくぼみで抱えられながら眠った時も

酒場で働く姿をかわいいって褒めてくれた時も

盗賊にさらわれて、あんなに怒った時も


「今まで本心で、私を好きって言ってくれてたってこと?」


『知らないって!だって全然変わりなかったじゃんアイツ!また告白してたしさぁ。

 人間の心がどうなってるのかまだ全然わからないよ…。』


プーはベッドの上をくるっと一回りする。


『あとお前も、泣いたり、震えたり、赤くなったり青くなったり、何でそうなるんだ?』


さっきの事を思い出して恥ずかしくなる。

こいつはどこまで見てたんだろうか。


たしかに、すぐ心臓はドキドキするし、足や手は震えるし、汗はかくし、

一番困るのは頭が真っ白になること。

脳の中のドーパミンとかいう麻薬物質みたいなのが出るからだっけ?

元の世界の自分は、恋の一つもしたことが無かったのかしら。


「あのさぁあのさぁ、プー。」


『なんだよ。』

「神様のおつかいをちゃんと出来たら、その、この体を大人にしてもらえるかなぁ。」


子供のままだったら、アルマスと結婚できないし。

いや、もしかしたらアルマスは子供の方が好きな性的趣向だったりする?


『いやお前、元の世界に戻るんだろ?』


プーがあきれた顔で見ている。


「あ、そうだった…。」


でも、でも。


「でもアルマスを好きになっちゃったんだけど…。どうしたら良い?」


『俺に聞くなよー!好きにしたらいいだろ。』


そうか、そうか。好きにしてもいいのか。

きっと神様だったら何でも叶えてくれるはずだよね。

とにかくまず、指輪を手に入れたらいいんだよね。


「アルマスを危険な目にあわせたくないから、王都にはブリジットと行こうかなと思ってたけど、でもアルマスと離れたく無いんだけど…どうしたら良い?」


『もー!!俺に聞くなってばっ!』

プーは頭を抱えてフルフルしながら窓から出ていった。


「ちょっとくらい相談に乗ってくれたっていいじゃん…。」


ふと部屋を見ると

さっきもらったピレスラムの花が、机の上に飾ってある。


そういえば授与所にピレスラムの花のしおりが売ってたっけ。

押し花にするのって、乾燥させるのに時間がかかるかなぁ。


そうだ。

白紙に花を挟み、その上から分厚い本を3冊重しにする。


「植物の精霊さん、この花で押し花を作りたいから、早く花が乾燥するよう手伝って?」


本の下でキラキラとしたものが、ネバネバっとうごめいた。

植物の精霊さんは、いつもネバついてるなぁ。

明日、しおりが上手く出来てるか楽しみにしておこう。


寝る前には

月の精霊さんに、アルマスの健康とブリジットの喉の健康を祈った。



恋する乙女の飛躍する妄言は

プーにはキャパオーバーだったようです。

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