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25 朝焼けの炎

「ありがとな、ワカ!」


少女は顔を上げて真っ直ぐ朝日を見つめる。

赤い髪は炎のように輝き、風に揺れていた。




---




酒場は今夜も盛況だった。


それでも明日の昼間には出発するので

今日は早く上がるようネッサさんに言われていた。


限られた時間の中、はりきって手伝ってはいたけれど、

今だに運ぶ先をちょこちょこ間違えるし、手を滑らせてジョッキを落としてしまう。


「あらっ!」

「大丈夫か!?」

「アタイが悪かった!4つも持たせたから…!」


近くのテーブルから4・5人ワラワラ駆け寄ってきて介抱される。

布でゴシゴシ顔や体を拭かれながら

ここの大人たちは本当に子供が好きで、大事にしてるんだなぁと実感する。

そんな時、


リリーン♪


「いらっしゃー…いいっ!」


人の良さそうな青年、ビデリアの想い人、ケヴィンだ。


「明日、帰るんだ。最後に食べとこうと思ってさ。」


「そ……そうかい。」


ビデリアはくるっと後ろを向き、目を合わさないように話す。


「今日は肉をたっぷり仕入れたんだ、たーんと食って行きなよ!南の故郷は魚ばっかりだろ!?」


「じゃあ、おまかせでお願い。」


ダダダッと調理場に猛烈な勢いで駆け込んで来る。

ネッサさんはやれやれと肩をすくめ、好きにさせなってジェスチャー。


どんっ☆


どどんっ☆


猪の塩焼き、ヤギ汁、鹿のハーブ煮、薄切り豚の生姜焼き、牛のミートボール、兎のスパイス焼き、燻製肉のアラカルトソーセージ付き。


「おごりだから全部食べな!!明日、弁当も持ってってやるから…

 だから…明日…見送らせて。」


目を合わさないままテーブル一面に料理を出す。

ビデリアの目はうるうるしている。

ケヴィンは少し、困り顔の笑顔だ。


「いつもありがとう、ビデリア。」


ああ、ケヴィンはもうビデリアの気持ちはわかってるんだな。

気持ちを隠す事もできなさそうだし。

それに応じてないってことは、そういうことなんだな。


色々察したアルマスは、ビデリアと皿洗いを交代し

しばらくウェイターとして一緒に食事を運んだ。


「おいおい、男が運んだって全然酒が美味くねー…って睨むなよアンちゃん!」


「一緒に働けて幸せだねっ♡」


この人いつ薬が切れるんだろう。

反動が怖い気がする…。


いつもの元気が嘘のようにショボンとしていたビデリアだったけど

ケヴィンが帰る時には、明日の見送る時間をきっちり聞き出していた。


で、店じまいが始まる頃。


「ワカぁ。一生の頼みがあるんだけど…。

 明日一緒に来てくんない?…ダメ?」


恋ってこんなに人を乙女にするんだなぁと関心しながら、乙女の願いを快諾した。




---




「ねぇ、プー。聞きたいことがあるんだけど。」


『目的外使用は禁止だ。』


もー。食堂の天井からニヤニヤしながら全部見てたくせに。


「でもさ、検証が必要と思うの。惚れ薬の。」


『検証?』


「アルマスってさ、紳士じゃない?ちゃんと薬が効いてるのか、いまいちわからない所があって。」


「いざ本番で使う時に、どのくらいの時間で効いてどのくらいの効果があるか、色々試してみないと危険だと思うの。」


『…。』


「本番で失敗しない為に練習するのは当たり前でしょ?それは必要だよ。まだ沢山あるんだよね?それ。」


『…10粒くらいはあるけど…。』


知ってる。

結構わかってきてる。

妖精は嘘はつかないし裏表もないし、結構単純な生き物だってコト。


「練習しないと本番が不安だよ~。プーだってそう思うでしょ?」


『うーん。確かに…。』


3粒ゲットした。




---




見た目は子供だし、夢物語みたいなコト言っても許されるよね…?


「もし、もし妖精の惚れ薬があったらどうする?」


まだ人気のない朝霧の中、ビデリアと街の外れまで歩いている。

リュックには何段も重なった気持ちのこもった特製弁当が入っていた。


ごめんなごめんな、とずっとモジモジとしているビデリアに

少し話題を変えようと振ってみた。


「あるなら飲みたい。」


「え?相手に飲ませるんじゃなくて?」


「ホントにこの気持ちが好きなのか知りたい。

 飲んだ時と飲まなかった時と同じ感情だったら、確かにアイツのこと好きってことだろ?

 それがわかったらきっと、きっと、今より自信もって言えると思うから。」


うつむくビデリア。

「今のアタイじゃ、こんな小娘じゃ、自信が無さすぎて何も言えねぇ…。」


プーと目を合わせる。

そんな考えもあるんだ。


『好きなら好きで言うだけ言えばいいのに。』


はぁっ。とため息をつくビデリアに、思い切って薬を差し出す。


「信じないかもしれないけど、でも、これ妖精の薬、飲んでみる?」


間髪入れずに、赤い実は奪われた。


「ああっ!本人目の前にしてから飲んでねっ!」


「あ、あ、そうか?つい、うん、ありがとな?」


『まったく抜け目のないやつだぜ…。』




---



申し訳なさそうに笑う青年。


「ありがとう、ビデリア。

 お金も貯まったし、これでくににいる彼女と式を挙げるよ。」


「ああ。…知ってると思うけど、…アンタのこと好きだった…です!」


ビデリアは真っ赤な顔をあげると、いつもの笑顔でニカッと笑った。


「よかったな。またいつか、奥さんと子供と一緒に酒場に来てくれな!絶対だぞ!」


少女は顔を上げて真っ直ぐ青年を見つめる。

赤い髪は朝日に照らされ炎のように輝き、風に揺れていた。


「元気でなーー!」


ビデリアは晴れ晴れとした顔で、馬車が遠くなるまで見送った。



・・・



「ありがとな、ワカ!」


「うん。…薬の効果少しはあった?」


「ああ、妖精の薬っての、作り話でも嬉しかったぜ!

おかげで勇気と元気でた!言うだけは言えた!すっきりサッパリしたぜ!!」


「いや、いやいや、ホントの所、体とか、ドキドキしたりとか、気持ちに変化は全く無かった?」


「へっ?」


ビデリアはうーん、と頭をポリポリ掻く。


「腹の足しにはなんねぇな。さ、帰って朝食にしようぜ!」


プー?


プー助さん!?


惚れ薬の効果ってどうなの??

これ大丈夫なの??


じとーっとプーと睨む。


『ホントに効いてないみたいだ…。何でだ?』


王城から秘宝の指輪を取り返すなんて壮大なことを、

今まで甘っちょろく考えすぎてたかもしれない。


ちょっと長めですが、シーン終わらせたくて&更新頻度優先で…

いつも読んでいただいてありがとうございます。

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