21 境界の街
「ぐすっ…ごめんなさ…。ゲフッ。ごほぉ…・。」
ガラガラガラガラ…。
馬車が遠くへ去っていく。
どうしても、ダメだった。
酔った。
6人乗りの乗合馬車に5人。
そのうち2人は夫婦で赤ちゃんも一緒だった(厳密に言えば3人)。
もうひとりは若い男性で、10人いる農家の家族代表として教会まで巡礼にいくのだそうだ。
夜に出発して寝ていたらそのうち到着している、はずだった。
お屋敷の馬車とは乗り心地が全く違う、ガンガン揺れる農作業用の馬車。
板張りの椅子と床、整備が雑な車輪。
あまり上手くない御者さんは、スピードにムラがある。
赤ちゃんは夜泣きを始め、太ったお母さんはその度にあやす。
若い男性はそのうち黙らせろよ!寝れない!とキレだす。
旦那さんはいびきを掻いていて起きない。
吐き気で顔が真っ青になって嘔吐きだした私も、絶対吐くなよ!って怒られた。
それでアルマスが殺気を出したもんだから、馬車の中は最悪な雰囲気だった。
アルマスに背中をさすってもらいながら朝を迎え、
疲れきって限界が来たところで馬車を降りることにした。
「リアダンの街で、もう少しいい馬車に乗り換えようね。」
『ホントお前、ダメダメな~。』
ぐすっ。
自分でも情けないと思う。
馬車も教会までの運賃を先払いで払ってもらってたのに、申し訳ない。きぼちわるい‥。
道端で少し吐き気がおさまるのを待ってから
アルマスにおぶってもらって街道をゆっくり進む。
まもなく東西の街道の境界の街、リアダンへと到着した。




