17 風が強い夜
しばらく歩いた先の山肌に、休めそうな洞があったので一旦休むことにした。
風が強い夜、ランタンの灯りが岩肌をゆらゆら照らしている。
クッキーなど携帯食を少し食べ、水筒に入った葡萄ジュースを回し飲みする。
アルマスは少し落ち込んた、暗い顔をしている。
「ワカ、巻き込んでしまってすまない。レナも。」
アルマスは、ポツリ、ポツリと話をしだす。
奥方様―、モルヴェンは後妻で血が繋がっていないこと、
父親が死んでからは、自分の子供のエミルしか目に入ってなかったこと、
昨日の晩、ロイドと何か話していたのを聞いていて、警戒はしていたこと。
「…母上がここまですると思っていなかった。
こんなことをしなくても、いつかエミルに譲ろうと全て準備していたのに…。」
「アルマス様、教会の教えで、兄を差し置いて弟が領主になることは禁じられております。なので、奥様は…。」
「対外的な事を考えて、か…。」
沈黙が続く。
私には何も言えない。言えないんだけど。
「アルマス、あの…元気、だして?」
ああ、そのまんましか出ない、語彙力が無い。
「ふふっ。」
え?
灯りに照らされた顔は笑顔。
隣に座っていたアルマスに、毛布ごと抱きしめられる。
「ワカ、実はね、落ち込んでいるわけじゃないんだ。」
「こんな時に信じられないかもしれないけど…幸せなんだ。」
ええっ?
母親に命を狙われ、こんな不自由な山の中で逃げ回っているのに?
「だってね、生きてるし、君がそばにいる。」
顔が近いです。
「それにね、もう領主しなくてよくなった。」
「ワカとも問題無く結婚できる。働き口を探すから、王都で一緒に暮らそう。」
カコンッ
レナがコップを落とした。
手がわなわなと震えている。
ごめんなさい、一時の気の迷いだから!
1週間ほどしたら薬が切れて目が覚めるから!…多分…。
風の音に紛れて、
誰かが見ている気配には全く気付けなかった。




