16 精霊魔法
「あいつらが探しに来る前に山を越えましょう。夜の間は探せないはず…。」
「肩を借りてすまない…痺れが残っていて。」
荷物の中の毛布とタオル、ランタンと少しの食べものを抱えて馬車から離れる。
【不思議な出来事】が起こって、馬車は奇跡的に崖の下へ着地。
アルマスも間もなく目を覚まし、ひとまず徒歩で移動することになった。
レナは歩いている間ずっと拳を固く握りしめ、ディエバス神に祈りを捧げていた。
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「プー、アルマスは大丈夫なの?」
頭のブローチで休んでいるプーに訪ねる。
さっき、時間稼ぎをしてくれた事がものすごく疲れることだったみたいで
ダルそうに頭の上から返事が聞こえる。
『寝てるみたいだけどな。
今度は植物の精霊を使ってみろよ、あいつらの得意分野だから。』
夕闇の中、茂みを覗くと木や草がぼんやりと光っている。
「植物の精霊さん!アルマスは大丈夫なの?寝てるだけなの?」
聞いてみた。
『あーダメだ、精霊は話したり出来ない。そういう存在じゃないんだ。』
プーが頭をかきながら、
『身体の毒を抜いて、みたいに命令するといい。具体的に想像するんだ。』
そうか…。そう言えば毒があったら抜いてくれるし、毒が無かったとしても害はないのか。
「精霊さん、アルマスの‥」
『あーダメダメダメ!どの精霊か決めてからじゃないと、どいつが動き出すかわかんねぇ。』
有象無象のあらゆる精霊が飛んでるんだからと怒られる。
3回もダメって言わなくてもいいじゃん…。
「すません‥。」
ほんと使えないなぁ。って感じで頭をふりふりされる。
『あと、精霊を使う度に精力抜かれるから、あとですごい疲れると思うけど?』
そーいうデメリットは先に言ってください。
でも、アルマスをこのままにしておけないし
今の時点では気が張ってるせいかそんなに疲れは感じない。
ふぅっと息を吐いてから、植物の上にアメーバのようにうねうね動いている彼らにお願いをする。
「…植物の精霊さん、この人の、アルマスの目が覚めないの。身体に毒が入っていたら治して欲しい。です。よろしく。」
締まらないなぁ~とプーに笑われたけど、魔法とか初めてでわかんないから!
私の名前はわかんないのワカなんだからね!ふんっ。
…。
植物の精霊は、ゆっくりそろそろと馬車の中へ染み出してきた。
隣でレナさんが祈っているけど、それには全然気付かないみたいだ。
身体を這い上ってきた透明の何かは、アルマスの口の中に次々と入っていく。
「あれは、、大丈夫なの?」
『体の中に入っても、そのうち下から出てくから大丈夫だろ。』
「そ、そうなんだ…。下から…。」
数分経った頃、アルマスがうーんと唸りながら目を開けた。
レナさんはパッと祈りを止めて、頭を起こすアルマスを手伝う。
「大丈夫ですか?アルマス様。お怪我はありませんか?」
「う~ん、体の感覚がおかしい。痺れてるみたいだ、どうしたんだろう。」
「いえ、いえ、ご無事ならなによりでございます…。本当に…神よ‥。」
レナの目じりが光っていた。




