14 出立の朝
出発の朝。
されるまま身支度を終え、動きやすいチュニックのシャツに厚手のケープ、裾を絞ったズボンに編みサンダルを履かせてもらった。
風に当たらないようにケープの帽子をかぶると、
帽子についていた木のブローチにプーが居場所を見つけた。
視察先のブレーデンさんの家への道は山道を進むのが近道らしく、
メアリさんに酔い止め薬を飲ませてもらう。
「王都の名物は、串巻きとナツメ焼きだよ。沢山食べといでね!」
串巻きは、串に刺さった魚のすり身を焼いたもので、
ナツメ焼きは炒り豆と砂糖を合わせたようなお菓子らしい。
「アテが外れたなら、すぐにここへ戻って来なさい。」
ギルマスさん。
「人手が足りなくってね、ちゃんと仕事も居場所も用意しておくからさ。」
メアリさん。
嘘をつくつもりは無かったけれど、王都に遠い親戚を訪ねるって事になっていた。
皆で少しずつカンパしてくれたお小遣いを巾着にいれて首にさげてもらった。
「ありがとう…。」
お世話になってばっかりで、何もお返しが出来ない事に泣きたくなった。
玄関口へ出ると、レナとアルマスが支度を整えて待ってくれていた。
レナはいつものメイド服、アルマスは黒髪を一つにまとめた、動きやすそうな旅の服だ。
「エミル様も出立された事ですし、そろそろ出ましょうか。」
「そうだな、夜になる前に辿り着きたいね。姫を野宿させるわけにいかないから。」
「そうなったら夜通し温めてあげるけどね」って小声で言われた。
何だろうこの感情は。ドン引きしてるのかな。はははっ。
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馬車の御者台には、馬番のロイドさんが座っている。
予備の馬車は見た目は小さかったけど出来る限りの準備はしている感じで、
屋根もついていて、床には絨毯を敷き、固定された小さな木のテーブルにはランプが備えており、ふかふかの長椅子が縦に置かれ、そこに3人が座る。
長椅子の下は収納になっていて食べものや着替え、食器やら何やら詰め込まれている。中を覗くと、短剣がキラッと光った。
「山には魔物やオオカミなんかも出るかもしれないからね。山賊はもうこの時代いないだろうけどね。」
じゃあ行こうか。と御者台に呼びかけると
ロイドさんが頷く。
「ア、ハイ、アルマス様。ハイ。」
ギルマスさんとメアリさんが手を振る中、
屋敷の窓からは奥様が見送ってくれていたのが見えた。
アルマスは笑顔のまま、それを見つめていた。




