1 転生と妖精
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暗い、森の中。
小さな小さな自分の最後の言葉。
「じゃあ、さよなら。」
そこに感情は何も無かった。
・・
・・・
・・・・
「ん、眩し…。」
「おー成功、何とかなるもんだねっ!さすがアタシ。」
…。ココ、どこ?
ゆっくりと光の中にまぶたを押し開けると目の前には
大きな背格好の、ピンク…の髪の女性と、すごく小さな子供が数人?よく見えない。
「ゆっくりでいいよ、まだ体にも慣れていないだろうし。」
(え?体?)
横たわっている自分の体を確かめてみると
とても小さな腕の感覚。ぷにぷに。
あれ、自分ってこんな子供だったっけ?
アラサーくらいじゃなかったっけ?
コンビニでバイトして‥あれ、コンビニって何だっけ?
アラサー?
「とりあえず成功ってことで、落ち着いたらこっちにこさせて。」
ピンク頭の人が、誰かに話してる。
小さな人が近くに来た。
まぶたをおさえる。
すごく眠い。
…寝よう。
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「そろそろ起きろ!!」
体をゆすられて目覚める。
むにゃ。っと目をこすりこすり体を起こす。
あれ、ここどこだっけ…?
白く丸みのある壁の小さな部屋。大きめのかまくら?
ああ、頭がはっきりしない。
目の前に幼稚園くらいの子供がこちらを見上げている。
「ボク、お母さんは?」
・・・?
かわいい顔がぷくっとふくれたような?
透明な白い肌、金のゆる髪、青くて外国の兵隊さんのような服、目は緑‥それと
ばこんっ☆
「いだっっ!」
「寝ぼけるのもこれまで!」
え?杖?なんか殴られた!?すっごい痛いよ!
「痛いよ?」
ボク…彼はプリプリして扉へ歩きだす。
「王様がお呼びだ。急げ。」
え?急げ?行くの?あ、睨んでる?うーん、わかったよ。
白い扉を開けると、廊下は広く先へ伸び、
少し先の大きな銀色の扉の前に彼は直立して待っていた。
姿を離れて見ると、ファンタジー世界で見るような耳のとがった小人に見えた。
ファンタジー世界?
うーん、もう考えるのは後、とにかく扉を押し開ける。
「よく来たな。」
豪華な謁見の間の先に居たのは、ピンクの長い髪の、赤いドレスを着た、耳の長いー
「私が妖精王だ。」
妖精王だった。
誰?
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「…まぁ、そういうワケ。」
いやいやいやいやいや。わかんないって。
「人間だったお前の魂をその体に入れたのよ。やって欲しいことがあってさ~。」
軽い口調の妖精王と名乗る人が言うには、
私の魂だけを人間の世界から、妖精の世界へひっぱってきたって?
初めてやったけど上手くいったわーワタシすごい。とうんうん頷いてるけど。
そういえばさっきから違和感しかない自分の体は、小学生低学年くらいに幼く、手も小さく、足も細く短い感じ…。お肌はすべすべで嬉しい‥いや違うって!
「え?と、ならこの体の持ち主の…魂とかはどうなったんですか?」
「消えかけだったんだよ。ちょうどタイミングがあってね。その体はお前のものだよ。」
…つまり、消えちゃったってこと?
ピンク頭はドレス姿に似合わない所作で頭をガシガシと掻く。
「あーもーめんどくさいからさ。そろそろ行ってきて?おつかい。」
手をヒラヒラとあっちいけと揺らすと、いつの間にか周りを子供に囲まれていた。
「頼むね、今度こそ~」
わかんないってわかんないってば。
ガッシと両腕を掴まれて、謁見の間から引きずり出される。
いや、みんな天使みたいにかわいいわー。お耳は尖ってるのね。
いやいやいやいや、そうじゃなくって。
「説明を求むーーッッ!!」
バターン!
これが妖精王との最初で最後の謁見だった。
お試しで書いてます。