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その6 幕間
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己の命より大切なものはない。
そう、人はいう。
だが自分よりも大切なものはある。
愛する者がある。
あの娘の命が助かるのならば。
なにを犠牲にしてもいい。
(たすけてあげようか)
娘が病から解放されるなら、何だってしてみせる。
(ほんとうに?)
あの娘が元気になり、
食事をして、散歩をして、
楽しそうに笑う姿が見られるのなら
何を犠牲にしてもいい。
(じゃあ、かわりにしねる?)
もちろん、
あの娘が助かるのなら、
今すぐにこの命を捧げよう。
(――ほんとうに?)
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