第一章 3
僕はももかと別れた後で、昨日の部活見学でのももかを思い出していた。
(そういえばももかはいつも何かを探しているような感じだったな。僕はそんなももかといつもいっしょにその何かを探していたんだ。)
ももかのいない帰り道は久しぶりだった。
いつも通る道なのに何か寂しさを感じていた。
別れ際にももかが見せた寂しそうな顔が思い浮かぶ。
(デッセージ…絵を書くことが嫌いなわけではないけど…)
「あれ?珍しいね。今日は一人なの?」
後ろから声をかけられた。
振り返ると僕のクラスの委員長がいた。
「委員長も帰りですか?」
「ももかちゃんと帰りに部活のことで何か話してたよね。それでケンカでもしたの?」
(委員長だけあってクラスメイトをよく見てるなあ)
「実はももかがデッセージ部に入るって言ってて。もう多分入ってるんですけど、僕にもいっしょに入ってくれって言ってきて…」
「それで逃げてきたと。」
「にげ…まあ…そうですね。」
逃げてはいないつもりだった。
「みちだくんはデッセージ嫌いなの?」
「嫌いではないんですけど…」
「じゃあ入ってもいいんじゃないかな?わたしはデッセージについてはあまり知らないけど高校生なんだから部活を頑張るのもいいと思うよ。」
「そう…ですね…。」
「決めるのはキミだからね。後悔しないようにね。それじゃあ。」
委員長は行ってしまった。家についてすぐに風呂に入ることにした。
(僕も部に入ることが嫌なわけじゃないんだ。ももかの頑張りを無駄にしてしまうかもしれないことが嫌なんだ。)
誰にも言っていないけれど僕の母デッセージでインターハイに出ている。小さい頃から親しみがあったことでデッセージの能力は高いのかもしれない。
(でも、才能は努力に勝つべきではないと思う。その人の努力が全否定される気がするから。明日あそこに行ってみようかな。)
次の日…
授業が終わり、ももかが来る前に僕は教室からでた。
僕はよくももかとよく来ていた丘に来ていた。きれいな景色を見ると心も落ち着くようだ。
「はっ、はっ、はーちゃん!」
誰かが僕を呼ぶ
「ももか!?部活に行ったんじゃ…」
「はーちゃん!やっぱり部活やろうよ!迷ってるんでしょ?ここにいたのがその証拠だよ!」
確かに僕は何かを迷うとよくここに来ていた。
「わたしは誰でもないはーちゃんとデッセージがしたいんだよ!ずうっっっっっっっといっしょに何かがしたかった!やっと見つけられたんだ!その何かを!」
ももかの目は涙あふれていた。
「僕はももかの努力を潰したくないんだ!かあさんがデッセージをしてたから僕は才能があるかもしれない。そんなもので努力を踏みにじりたくないんだ!」
「じゃあ才能に負けないくらいに努力するもん!だから…いっしょに…」
才能に負けない努力。そんなものがあるなら…
「わかった。僕もデッセージ部に入るよ!」
ももかは最高の笑顔で。
「やっぱり、いっしょじゃないとね!」
「やるからにはインターハイ行くよ!」
「もちろん!」
探していた何かを見れるかもしれない。今はそんな期待にあふれている。