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第3話 千代田にて


 東京千代田区。そこにあるさびれた雑居ビルの一室に、未来と雪路は向かっていた。



「ねぇ未来、どこに行くの?」



何も聞かされていない雪路は、未来にそう尋ねた。



「雪路が東京を地獄にするのに対して、やれダメだの、やれやめろだの言うからさ。仲間に説得して貰おうと思ってね!」



未来は街中を楽しそうに歩きながら言った。

雪路は、包帯だらけの顔で、そんな未来のあとに続いて歩いていた。



「・・・仲間か。つまり未来と同じ危険思想を持つ、悪人どもの巣窟に行くのね。はあ〜」



「そーゆー事!で、その後は服とか買いに行こ?雪路のも買ってあげるから」



「あー、そっちがメインの用事なのね・・・」



2人は千代田区へ楽しそうに向かった。

ただ、顔中包帯だらけの雪路は人目を集めていた。







 未来と雪路が目的の雑居ビルに着く。

階段を上り、2階にある一室に入る。



「おじゃましまーす!」



未来は元気良く中に入り、雪路はその後に続く。



 中には大きなテーブルや高価そうなソファが置いてあり、一見すると立派な応接間のようだった。

しかし、そこにいる人物たちは、その部屋に相応しいとは言えなかった。



 手前に男が1人に少女が1人。そして奥に青年がもう1人いた。



 手前の男は、柄モノのワイシャツを胸元まで開き、サングラスにオールバック、ソファに偉そうに踏ん反りかえってタバコを吸っている。



 もう一人手前にいた少女は、雪路が知っている人物だった。

静かに本を読む少女は、『不登校』だったあの少女だ。

今日も殺気を出しながら、熱心に本を睨みつけている。



「あー未来さん。どうぞ座って下さい」



そう言ったのは、奥にいた青年だった。

テーブルの上に、様々な携帯情報端末やノートパソコンを置いて、何か忙しそうに作業をしていた。

その姿は、ラフな格好にボサボサの髪、青白い顔、すぐに不健康だとわかった。



「あいよー」



未来は熱心に本を睨み付けている『不登校』だった少女の隣に座る。



雪路は未来に続き、未来が座るソファの後ろに立った。



「その鬼が未来さんの『使鬼神』ですか?』



不健康そうな青年はそう聞いてきた。



「そう!ゾンビの雪路。雪路、挨拶」



未来はペットに言うような口調で、雪路に言った。



「あー・・・。どうも雪路といいます。よろしく」



雪路は頭を掻きながら挨拶をした。



「よろしくお願いいたします」



「おう」



「よろしく」



「よく出来ました!」



未来はペットを褒めるように、無難な挨拶をした雪路を褒めた。



「では、こちらも紹介いたしますね」



不健康そうな青年はそう言って立ち上がった。



「自分は『前田』と申します」



不健康そうな前田は、頭を下げて挨拶した。



「そちらで禁煙なのにタバコを吸っているチンピラが、『在須(ありす)』さんです。気軽にちゃん付けで呼んであげて下さい」



「ちゃん付けしたら、殺す」



紹介された在須は、ドスの利いた声で雪路を睨みつけた。



「で、未来さんの隣で本を読んでいる彼女が『皆川』さんです。いつも殺気立っていて絡みづらいですが、本当に絡みづらいので注意して下さい」



「・・・そんな事はない」



本から目を離さずに、『不登校』だった皆川は無愛想に言った。



「あと『団長』がいるのですが、今日は来ていません。それに団長は紹介する価値も無いので、割愛かつあいではなく省略させていただきます」



不健康そうな前田はそう言って座った。



「前田さん、今日はどうしてアタシ達を呼んだの?あ、あとさ、雪路が東京を地獄にするのやめろってうるさいから、なんとか言ってやってよ!」



未来はソファに気持ち良さそうに座りながら言った。



「お呼びした理由は、皆さんの進捗(しんちょく)(うかが)うためです。それと雪路さんが反対する気持ちは分かります」



不健康そうな前田はそう言って、また立ち上がると人数分のお茶とせんべいを持って来てテーブルに置いた。



「どうぞ皆さん召し上がってください。では、雪路さんに簡単に『なぜ東京を地獄にするのか?』について説明いたします」



「はい。悪事を正当化する言い訳を教えて下さい」



雪路は前田に対して、とげのある言い方で返した。



「はは、手厳しいですね。まず言っておきたい事がひとつ。誰かが何もしなくても、いずれ『東京は勝手に地獄になります』」



不健康そうな前田は、そのまま雪路に説明を続けた。






 地獄化とは『地獄門』が開き、その門から魑魅魍魎が出てきて人々を殺戮して行く事である。



さらに門からは地獄風が吹き、大地は痩せ、草木は腐り始める。



まさに人々が思い描く地獄である。



地獄門は自然発生する自然現象で、

地震、台風、火山の噴火、隕石の落下と同じである。



だが、有史上で地獄化を観測した例は「科学的な記録には残っていない」



記録として残っているのは、俗物的な書物や頭狂あたまぐるいが書いたインチキ魔術書などである。



「しかし地獄化を記録に残している集団がいます。その集団の記録によると、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、トルコ、エジプトで過去に地獄化が有ったと記録されてます。それらは全て自然発生したモノです」



「・・・富士山がいつか噴火するみたいに、東京もいつか地獄化すると」



「そうです。つまり予測不能な自然発生を待つのではなく、人的に『地獄門』を開き、東京を地獄にする。それが我々の目的です」



「・・・」



「何の準備もなしに、とつぜん地獄になるより。あえて自分たちで門が開く日時を決め、その日に備えて地獄を乗り切る。ご理解いただけましたか?」



前田は淡々と雪路にそう伝えた。



「地獄化や門が開く事は防げないんですか?」



「防げます」



前田は即答した。



「な!?防げるなら、防げばいいじゃないですか!」



「防ぐためには莫大な費用と人手が必要です。それを用意出来るのは、国家レベルではないと無理です。そして国は、門を開く事に肯定的な立場を取っています」



―と、本を睨みながら皆川が口を挟んできた。


「・・・財界が無駄金を出す訳がない。地獄化とそれを防ぐ事を金勘定で計って、地獄化が得だと判断したのさ。人が死のうが関係ない。あいつらは人命より金が大事なクソ野郎なんだよ」



「ホントむかつくよね〜!」



未来もせんべいを食べながら、皆川の言葉にうなずいた。



「どう言う事?日本の政府が『東京を地獄にする』事を進めているんですか?」



「日本政府『も』が正しいですね。我々は政府とは関係ない民間団体ですし。我々以外にも自分たちの都合で地獄化を企んでいる集団は大小たくさんいます」



「マジですか?」



「マジです。我々は自分たちが決めた日時に地獄門を開く事で、『国』や『他の集団』に一泡吹かせる。そして、地獄を生き延びる事が目的です」



 雪路は疲れた様に頭をさすった。



「ちなみに、記録を残してる集団ってなんですか?胡散臭いんですけど」



「たしかに胡散臭い集団ですね。あまり詳しくは言えませんが、たった『ひとつ』を崇め、世界中に狂信者がいて、己たちが正しいと盲信し、自分勝手な正義を押し付けては侵略を繰り返す集団です」



「なんですかその危険集団は!?」



「我々はその集団を『教会』と呼んでいます。簡単に言うと世界最大の宗教団体です」



 雪路はすぐにその集団が分かった。

なぜなら教科書にも載っているほど有名な集団であり、彼らが崇める本は世界で一番発行されている。

彼らを知らなければ、学校のテストで悪い点数を取ってしまうほどだから・・・。

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