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第十三魔導武装学院  作者: 黒姫
第一章 学内順位戦編
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八型一刀流

登場人物紹介


黒神刹那くろがみ せつな

 黒髪の青年で戦闘能力は高いが、魔法を数回放っただけで倒れるほど魔法適性値が低い。心優しく優柔不断な面と残忍でさっぱりとした面を併せ持つ二重人格者。八型一刀流の使い手だが、戦闘で中途半端に優しさを出すからよく負けてしまう。


ティア

 蒼白の髪の少女で刹那の妹。魔導研究所出身で研究所閉鎖の際に刹那のおかげで黒神家の養子として引き取られた。無口で何を考えてるのか分からない不思議ちゃん。常に自分の事を気に掛けてくれる刹那の事が好きで、積極的にアピールしているがいつも刹那に誤魔化されている


ステラ・スカーレット

 紅い髪の女の子で元一校のエリート。少々意地っ張りでツンデレ。自分の気持ちに素直になれないことに対して自分でも悩んでいる


小桜風香こさくら ふうか

 緑髪のお姉さん、元七校の風紀委員長であり、真面目で礼儀正しいのだが、基本的な問題解決方法が武力的なのが玉に瑕。


白神琥珀しらがみ こはく

 白髪の少女で刹那の幼なじみでティアと同い年。刹那と同じく八型一刀流の使い手。心優しく謙虚で小動物を彷彿させるような少女。刹那に対して強い憧れと恋愛感情を抱いているが、謙虚さが仇となっている。


黄瀬隼斗きせ はやと

 刹那のクラスメイト。元十二校で自称情報屋。VRゲームで鍛えた反射神経で二丁拳銃を使いこなし、また魔法による後方支援も得意としている。明るく軽い性格なのだが、厄介事によく巻き込まれる体質で苦労人。


ギルバート・エストレア

 金髪の刹那のクラスメイトで元四校出身。無愛想な性格で実力主義者。昔の事件で失った親友のことを今でも悔やんでおり、二度と同じことを繰り返さない為に強さを求めている。


鈴鹿藍すずか あい

 紺色の髪をした刹那のクラスメイト。謎が多い青年。女の子っぽい自分の名前に悩みを持っている。


碧川海翔みどりかわ かいと

 青髪の青年。元二校の生徒会副会長で実力主義者。相手を見下したような言動が多く、弱者が強者に虐げられる事を当然だと思っているが、その代わり強者が弱者を庇護するべきだと思っている


蒼崎凛あおざき りん

 蒼髪のお姉さん。元二校の生徒会長で刹那と海翔の先輩。天性の治癒能力を持っている。喋り方が独特で誰に対しても老人口調で話す。可愛いモノ好きで可愛いモノを見掛けると愛でたがる。


沢木境さわき きょう

 眼鏡をかけた真面目そうな紫髪のお姉さん。元二校の生徒会書記で戦闘歩法の縮地しゅくちを極めており、瞬間移動を基点とした高速戦闘が得意。凛の命令を絶対としている。


桃井芽愛ももい めあ

 ピンク髪の女の子。元一校出身で現代で希少な魔法使いで明るく元気な性格でドジっ子。一人ではしっかりと目的地まで辿り着くことができるが、集団で行動すると何故か方向音痴になる。

でも、俺も完全な訳ではないからそんなに期待するなよ?」


「...それでも構わんが、どういう事だ?」


 刹那の発言に引っ掛かりを覚え、ギルは聞き返す。


「まぁ、俺なりの全力は出すから、気にすんなよ」


 質問をはぐらかしてスタートラインに向かう刹那。


「黒神家の剣術か~。いいもん見れそうだな」


「...アイツの家は有名なのか?」


 隼斗が何か知っているような発言をして、ギルは気になって聞いてみる。


「あ、知らねぇの?今じゃ廃れているけど、世界で初めて魔法の『まとい』を成功させ確立したのは黒神家と白神家なんだぜ」


「...まとい?」


「まぁ、見とけば分かるよ」


 そう言って隼斗もスタートラインに向かう。そして丁度次の対戦チームもフィールドに入ってくる。


「...フン。言われなくともそのつもりだ」


「ぁん?お前ら何の話してたんだ?」


「...気にするな。目の前の事だけを集中しろ」


「あぁ大丈夫、大丈夫。久しぶりに全力で出来るし、邪魔するもいないから、もう嬉しくて嬉しくて...」


「...そうか、ならいいんだ」


 さっきとは刹那の態度が打って変わって、かなり好戦的になり。ギルは少し不思議に思ったが、本人がやる気になっているのだから、それ以上の余計な事は言わないことにした。


『are you ready、3、2、1、GO!』


 試合開始の合図が鳴るが、誰も動かない。ギルと隼斗が行動しないのは当たり前の事なのだが、ギルと隼斗は相手チームや刹那が動かないのはおかしいと感じていた。


「まぁ、普通は警戒して来るよな。さっきのアホ見たいに突っ込んで来たり、初手から魔法の打ち合いなんかよりも、まずは相手の様子を見る。いいセンスじゃん。けど..」


 刹那がゆっくりと、虚空から刀を抜き、喋りながら歩みを進める。


「そんな悠長なことしてて良いのかよ?動きながらでも相手を観察することは出来るはずだぜ?」


 フィールドの中央で止まり、刀を構える。だが相手チームは警戒して近づいて来ようとしない。


「はぁ、ツマんねぇな。だったらこっちからいかせてもらうぜ!」


 溜め息を吐き、失望したように言いながら刹那は、相手との距離がかなり離れているのにも関わらず、何もない空間に刀を斜めに降り下ろす。すると、相手の一人の制服の胸がぱっくりと斜めに切れていた。


「次は本当に当てるぜ。精々、生命いのちを落とすなよ!」


 そう言って刹那は刀を乱暴に振り回す。相手チームは四方に散らばり逃げ惑う。


「...なんだ、あれは?」


「黒神家の八型一刀はっけいいっとう流。魔法を武器に纏い、最低の魔法力で最大限の威力を発揮させる」


ギルがいだいた疑問に隼斗が説明を入れる。


八型一刀はっけいいっとう流...」


八型一刀はっけいいっとう流は、その名の通り八つの属性からなっていて順番に言うと、いちかたが火、かたが風、さんかたが水、よんかたが雷、かたが氷、かたが地、ななかたが闇、かたが無。の火風水雷氷地闇無かふうすいらいひょうちあんむからできていて...」


「...多いな」


「まぁ、四大元素論が提唱される前に作られたからな~。って、あぶねぇ!」


 説明をしていた隼斗が急にしゃがみこみ、何をしてんだ?とギルはアホを見るような目で隼斗を見たが、すぐにしゃがんだ理由は分かった。隼斗の5mほど後ろにある壁に何かで切られたように横一線の傷ができており、それを誰が付けたモノなのかもすぐに察した。


「あ、わりぃ」


「あ、わりぃ。じゃねぇよ!もうちょっと周り見て剣振れよ!殺す気か!」


 張本人の刹那は気が付いたかのように謝るが、態度が謝ってるように見えない。


「大丈夫、大丈夫。乱斬みだれぎりはそこまで威力ねぇから」


 そう言って、さっきと変わらずに刀を振り回す刹那。


「そういう問題じゃねぇ!味方に当てる奴があるかぁ!って、うおぉわ!」


 今度は横に飛んで避ける隼斗。後ろの壁を見ると、縦に傷がついてる。


「あ、すまん」


「だっー、もう。お前わざとやってるだろ!」


 横に大きく飛んだせいで地面に倒れ、ガバッと顔を上げて刹那に文句を言う隼斗。


「気のせい、気のせい。当たってないからいいじゃん♪」


「避けてるから当たっていないだけで、避けてなかったら命中してるからな!?あと俺はともかく、アイツは当たってるからな!」


 そう言って隼斗はギルを指差す。ギルは不思議に思って、自分の体を見回すと。制服の左腕が切れ、傷口からは血が出ていた。


「あぁ、すまんギル。わざとじゃないんだ。許してくれ、な!」


 ニッと笑って謝ってくる刹那。全然悪びれているように見えないが、その笑顔がどこか悪戯好きで無邪気な子供にように見えた。


「...気にするな。...このくらい、傷のうちにも入らん」


 刹那が気にしないように(実際、気にしていないだろうが)適当に返事をし、水の魔法で傷を塞ぐ。


「じゃあ、戦法を変えますか、っと!」


 そう言うと刹那の姿が一瞬消え、次に視界に入ったときにはバックステップをしていた。

 ギルがどこまでも不思議な行動をする奴だと関心して見ていたら、隼斗が服装を整えながら戻って来る。


「やっと収まったかぁ。で、続けるけど、どこまで話してたっけ?」


「...八型一刀はっけいいっとう流が四大元素論よりも前にできていた。...というところまでだ」


「そうそう、で。四大元素論ができてからは八型一刀流を排除しようとする輩がいっぱい出てきてな~。まぁそんなこんなで今日こんにちにまで至ると。でぇ~、話を変えるけど。多分、刹那がいま使ってるのを見る限り、あれは二ノ型の『疾風はやて』だろうな」


「...見ただけで分かるモノなのか?」


「まぁな。八型一刀流の二ノ型は、吹き抜ける風の如く。と言う言葉を元に作られていて。一撃離脱、つまりヒット&アウェイに特化した型と言えるからな。」


「...他の型もそんな感じに作られているのか?」


「ん?あぁ、まぁ、そうだな。俺も詳しくは知らん」


「...興味深いな」


隼斗の歯切れの悪い言い方は気にせず、食いるように刹那を見るギルだった。


□□□


(反応速度、反射神経も共に良い方だな。合格)


 刹那は姿勢を低くし、一気に相手との距離を詰め攻撃。そして後方に飛び退すさりながらそんな事を思っていた。

 刹那がさっき、風のやいばを隼斗に向かって飛ばしたのはわざとだった。味方からの不意討ちに隼斗が反応できるかどうか、刹那なりのテストだったのである。つまるところ、刹那もギルと同じく隼斗を試したかったのだ。


「それじゃあ、そろそろ飽きてきたし、終わらせるとしましょうか?」


 そう言って先程から刹那はまともに相手に攻撃を当ててはいない。相手が防ぎやすいように攻撃をして遊んでいたのである。


「ほらほら~。気ぃ抜くと死ぬぜ!」


「っく!」


 相手に忠告しながら距離を詰め。今度は離脱をせずに流れるように剣戟を浴びせる。


「はい、サヨウナラ。っと」


「ぐはっ!」


 刹那の流れるような止めどない連続した攻撃に、相手は耐えきれず、ついに攻撃を受けて倒れる。


「さぁ、次はどっちから先にられたい?」


 そう言って刹那は振り向いて剣を相手に向ける。顔は笑っており、そしてその顔には返り血が付いていて、控えめに言っても残虐者そのものだった。


「正直、どっちから殺ったって良いんだけどな。だから同時に倒してやるよ。八型一刀流、一ノ型『燐炎』」


 わざわざ、様式にのっとって流派と型を言うと、刀には蒼炎が宿る。別に言わなくとも、先程の様に魔法を纏うことはできる。ただ元の自分がやることを真似て見ただけである。

 そして刹那は右側にいる敵に向かって走り出し、刀を縦に降り下ろす。相手は剣を横にして刹那の攻撃を受け止めようとするが、蒼炎を纏った刹那の刀が剣に触れた瞬間。剣がへし折れる。


「っぐわぁぁぁ!」


「残念☆避ければ直撃せずにすんだかも、な!」


 傷口から蒼い炎吹き出し相手を焦がす。それを嘲笑しながら振り返り様に、何も纏っていない刀をもう一人に向かって投げる。投げられた刀は相手の右胸に突き刺さる


「ぐふっ!」


「あー、ごっめーん。手が滑っちゃった~。でもダメだよ~、余所見よそみしたら~。いつどこで何が飛んでくるのかが解らないのが戦場なんだからさぁ?」


 わざとらしく棒読みで、嘲りの混じった声でゆっくりと最後の相手に近づく刹那。


「・・・・・の、・・・・く・・・め」


「はぁ?聞こえねぇな。もっとハッキリ言ってくれないか?」


 胸に刺さる刀のせいで、うまく言えないのか部分的にしか聞こえなくて聞き返す刹那。


「っこの!悪魔めっ!」


「ククク、悪魔ね。いまの俺に当てはまってて良い表現だ。。じゃあ、そんな悪魔である黒神刹那から君に素敵なプレゼントを贈ってやるよ。『絶望』を、な!」


 そう言って刹那は刀を掴み、引き抜くのではなく、右に向かって切り裂く。そして相手は大量の出血をし、倒れる。


「・・・ククク、アハハハハ、アーハッハッハッハ。うぐっ!」


 刹那は高らかに一人笑うが、急に頭が痛くなりフラフラとする。


「あーあぁ、ホントにシラケるわ」


 頭痛に伴い、腕や脚に急激な痛みが襲う。魔法適性値が低いことによる、異常な疲労。その疲労は身体だけでなく精神をも襲う。


「またやっちまったよ。本当に不便な身体を持ったもん・・・だよな」


 薄れ行く意識の中でそんな独り言を呟く刹那。


「なぁ?お前も・・・そう・・・・思う・・・だ・・・・・ろ?」


 意識が遠のく中で、刹那は自分にそう聞きながら倒れる。


□□□


 思考の海。それは人の価値観や概念を模索する場所。その一番下にある底で刹那は一人歩きながら考えていた。


(沙織博士が言っていた『自分と話せ』とはどういう意図があったのだろう?)


 沙織に言われた事を深く考える。


(そもそも僕は心が別たれた?それは何時いつ何処どこだった?目的はなんだった?)


 質問に対して自分の過去をゆっくりと思い出す。


(目的は、魔法適性値の低さを改善する為。・・・改善?おかしい、それだけで改善できるのならば、僕や世界の魔法界は苦労などしてるはずがない。じゃあ何故?)


 一つの疑問に突き当たり、刹那はいつも通り重大な事実に考えが移行シフトする。


(記憶がない。それは何故だ?何時から無くなった?)


 自分の記憶の一部が、何故抜け落ちているということに。


(僕は誰だ?僕は何者なんだ!?誰か教えてくれ!?)


 心の分離。それが行われて少しした頃。大体の記憶がもう一人に移行している事は知っていた。その移行した記憶を思い出そうとすると、夢の様にぼんやりと思い出せる。

 だが、それでも大きく抜け落ちた記憶があるのを刹那は知っている。それに気付いたのは、研究所が潰れた少し後の事だった。

 刹那は物心ついたときから剣を握って育ったと両親から聞かさせていた。八型一刀流の型をどんどん覚えていき、将来が楽しみだったとも聞いている。

 だが、魔法適性値が低く、稽古中によく倒れていたらしい。それをどうにかしようとし、両親に魔導研究所に入れられた。そしてそこでティアと出会い、研究所が潰れた後もティアを両親が引き取ってくれた。

 そう、全部覚えている。だが抜け落ちているのはそこじゃない。八型一刀流をどんどん覚えていったと言ったが、それを覚えた型の一部が一切無い。初めは久しぶりだから忘れてしまったのだろうと思ったが、普通なら身体が覚えているはずなのだ。

 だが覚えているはずに型は身に覚えがなく、むしろ一から覚えようとしてもできないのである。いくら型通りに剣を振ろうが纒ができない。いくら努力しようが失ってしまったモノは返ってこないのだ

 ふと、沈みきった思考の底を歩いていた体が浮かび上がる。考えがまとまらずゴチャゴチャとし始めると思考が拒絶を起こし、強制的に追い出されてしまうのだ。


(また、結局僕は何も解らないまま戻らないといけないのか?僕には何も掴めないのか?ねぇ、君は一体何を知っているだい?僕に教えくれないか?)


 自分の無力を実感しながら、自分にそう問いかける。そして意識が現実に引き戻されていくのを感じる。

 戻ったら自分に聞いてみよう。そう思いながら刹那は思考を切り離した。


□□□


 刹那が思考の海から戻ってきて、現実を目の当たりにすると半割り程ある出来事なのだが...


(ここは何処どこだ?何でうつ伏せているんだ?)


 とまぁ、寝ている時などは一切無いことだが、もう一人に任せてしまっている場合に限って言えば、自分が何をしていたのか知らないから、理解するのに少々時間が掛かるのだ。


「おい、刹那!大丈夫か!?」


「あぁ、大丈夫だよ。っつ!!」


 隼斗が声を掛けてきて何とか立ち上がろうとするが、身体のあちこちに激痛が走る。


「おいおい、無理すんなよ。お前、魔力がいちじるしく低下して倒れたばっかなんだからよ。それにしても、よく気絶しなかったな」


「気絶?魔力が著しく低下?」


 隼斗が言っている事が理解できずに座り込んで少しの間、記憶を辿る。そしてぼんやりと自分がいままで何をしてしていたのを理解して頭を抱える。


「僕は一体何をしているんだぁ!」


「ホントに大丈夫か?倒れる際に頭でもぶつけたんじゃねぇの?」


「...自分が何をしていたのか身に覚えが無いのか?」


 一人頭を抱えて叫ぶ刹那を見て、隼斗だけでなくギルまでもが心配し、声をかけてくる。


「...それより、さっきとは、かなり雰囲気が変わっているが、どうしてだ?言い逃れはさせん」


「うわぁ、穏やかじゃないなぁ」


 槍を取り出し刹那に突きつけるギル。それを他人事の様に呟く隼斗。


「話したく無い、と言ったら?」


「...残念だ。...信用に足ると思った人間だったのだがな」


 座って身動きが取れない状態で見据える刹那と、槍を構えて睨むギル。


「だっー!もう、やめやめ!お前ら止めろよ。ここで仲間割れしたってどうにもならないだろ!?」


 さすがに放置できないと悟ったのか、隼斗が仲裁に入る。


「...邪魔をするな。...俺を止めると言うのなら、セツナを『喋らす』か『殺す』の二択しかない」


「はぁ~、極端すぎるだろ。せめて『諦める』も選択肢に入れろよ」


 ギルの極端すぎる考えを溜め息で返す隼斗。


「...残念だが、それは入れきれないな。...俺は信用できないヤツと組む気はない」


「いまの僕は信用できない。と?」


「...そういうことになるな。...お前は何を隠している?答えろ」


 ギルが刹那に感じているのは疑念。あからさまに話をはぐらかしたり、性格がコロコロと変わられると、誰でもそう感じる。コイツは一体なんなのか?と

 ギルはそう感じからこそ、刹那を問い詰める。過去のあやまちを繰り返さないために。


「それは難しい話だね。僕は僕自身が何を隠しているのかすら、わからないのだから」


「...ふざけているのか?」


「いや、大真面目のつもりだよ。それでも僕が信用できないと言うのなら・・・。その槍で僕を突き刺せばいい」


「なっ!お前バカか!?そんなことしたら、最悪死ぬぞ!?」


 刹那がとんでもない事を言い、驚いて隼斗がギルと刹那の間に入る。


「死のうが構わない。人は失敗して成長する生き物だ。だったら僕は常に間違い(ミステイク)し続ける」


 刹那がそう言い放つと、ギルの脳裏に刹那が昔の親友と重なる。

 己の犠牲を顧みない大切だった、今はもういない親友。


「...ッチ、興が冷めた。...セツナ、お前の勇気だけは信用してやる」


 そう言って槍を仕舞い。フィールドを出ていくギル。


「あ、おい。どこ行くんだよ!?」


 何処かに行こうとするギルを引き止める隼斗だが...


『え~っと。只今の試合をもって、Fクラスの選抜戦は終了します。各クラスの代表チームの発表まで時間がありますので、各自解散して自由行動とします。繰り返します...』


 選抜戦の試合終了の放送が入り、他の生徒も散っていく。


「あ~、結局。解散するんだったら良いかもな。別にいつまでも一緒に居ろって訳じゃないし...」


「そうだね」


 その放送を聞いた隼斗は少し考え直したらしく。それに同意する刹那。


「おーい、刹那く~ん。隼斗く~ん」


 フィールドに残っている刹那と隼斗に向かってくる芽愛。そう言えば一緒に連れてきていたのを、ぼんやりと思い出す。


「最後、何してたの?ケンカしている様には見えなかったけど・・・。あ、そうそう!そういえばギルくんどっかに行っちゃったけどいいの?」


「いいんだよ。アイツも少し頭冷やした方がいいだろうし・・・」


 やって来た芽愛の質問を隼斗が答える。


「あー、そんな事より腹減ったなぁ。飯食いに行こうぜ!」


「おぉ!いいね。私もお腹すいたし、3人でご飯食べよー!」


「よっしゃ!行くぞー!」


「おー!」


 隼斗がお腹を抱え、話題を変える。そして、その提案に乗っかる芽愛。何故かは知らないがテンションが上がっている二人。二人とも似た者同士なのだな、と思いながら立ち上がる刹那だった。


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