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そこは夢の始まり、あるいは夢の跡。
見渡せど辺り一面は真っ白。振り返れど歩いた跡は砂に埋もれて消えていく。
脚が重たい。しかし背中には何も背負ってはいない。脚に枷が付いている訳でもない。
引き摺っているのは自分自身の体。
立ち止まることは許されず、されど駆けることも叶わず。
自分自身を引き摺って行く。
ふと思う。自分は何者なのか。
それは誰しもが抱く永久不変の問い。
それを証明する術はなく。明確な答えもない。
だからこう答える。分からない。と…
それでも人は問い続ける。自分は何者なのかを。
もし答えられるというならば、貴方に問いたい。
貴方は何を以てして貴方なのか?
名前があるから貴方は貴方なのか?
ならば名前を失くした貴方は果たして貴方なのか?
記憶があるから貴方は貴方なのか?
ならば記憶を失くした貴方は果たして貴方なのか?
才能があるから貴方は貴方なのか?
ならば才能の失くした貴方は果たして貴方なのか?
名前か、記憶か、才能か、それとももっと別の何かか。
それらを一体何処まで失くせば、貴方は貴方ではなくなるのか?
更に問おう。
一年前までの貴方は貴方なのか?
一昨日までの貴方は貴方なのか?
一秒前までの貴方は貴方なのか?
この問いを見た貴方は、読む前と同じ貴方なのか?
その答えは出せるだろうか?
鏡に写った虚像が実際には存在しないというのならば、そこに姿を写す自分は果たして本物なのか?
自分と同じ姿形、能力、才能、癖、記憶を持つ人が目の前に現れた時。自分を自分と証明できるか?
そんな途方もない事を考えながら真っ白な世界で。
自分自身を引き摺って行く。




