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神様の涙

作者: 龍川歌凪
掲載日:2007/09/09

 ある日、天使は悩んでいました。

 なぜなら最近、よく空の神様達が泣いているからです。

 でも彼はまだ幼かったから、神様達がどうして泣いているのかわかりませんでした。

 直接神様達に尋ねても、「大丈夫だよ、気にしないで」、とはぐらかされてしまいます。

 そこで天使は、下界に住む知り合いの精霊に聞いてみることにしました。

「あのさ、このごろ神さま達がよく泣いているのを見るんだけど、どうしてだかわかるかい?」

「ああ、そんなの簡単さ。神様達はね、人間のせいで泣いているんだよ」

「ニンゲンのせいで?どうして?」

 天使はきょとんとしました。

「だって人間は『神の名の下に』、とか、『神様の為に』、とか言って、同じ人間同士で傷つけ合ったり、殺し合ったりしているだろう?でも本当はね、神様達はそんなこと望んじゃいないんだ。ただ彼らに、平和な世界で、幸せに生きてほしいって願ってるだけなんだよ」

 精霊のその言葉に、天使はショックを受けました。

 自分にできることならなんでもしようと思っていたけれど、こればっかりは彼の力だけではどうにもならなかったからです。

「そっか、そうだったんだ・・・・・じゃあ神様たちはどうやったら元気になってくれるのかな?」

「んー、そうだな・・・・・。あ、じゃあさ、空にこれを持っていってあげたらどうだい?」

 精霊は天使にとある物を手渡しました。



 空へと帰る途中、天使は精霊が別れぎわに言っていた言葉を思い出しました。

『もしかしたら、世界で一番かわいそうなのって神様なのかもしれないな。だって神様は【誰かの】願いを叶えることはできても、【誰かに】願いを叶えてもらうことはできないんだから・・・』

 思い出すたびに、天使の胸はズキズキと痛みました。



 天使は空に帰るとさっそく、空の神様の一人、太陽の神様が泣いているのを目にしました。

 しかし天使が見ているのに気づくと、太陽の神様はすぐさま涙を拭いてしまいました。

「太陽の神さま、また泣いていたの?」

「・・・・・。」

「・・・ねえ太陽の神さま、こっちに来てください。おもしろいものを見せてあげるよ!」

「面白い物?」

「うん、こっちこっち!」

 天使はぐいぐいと太陽の神様の手を引っ張っていきました。



 そこは雲の切れ間でした。

 雲と雲の間から、美しい地上の風景が顔をのぞかせています。

「いったい何を・・・・おや、それは・・・・・?」

 ここで太陽の神様はようやく、天使がなにやら腕にカゴを提げているのに気づきました。

 カゴの中には白い、米粒ほどの小さな花がたくさん入っています。

「花の精霊さんがくれたんです。ほら、見ててください」

 そう言って、天使はカゴの中の花を一掴みすると、雲の切れ間からパラパラと落とし始めました。


 ふわりふわり。


 風に乗って落ちゆく姿はまるで雪のよう。


「ほお、綺麗ですね・・・・・」

「でしょ?花の精霊さんが考えてくれたんだよ!」

「おや、そうだったのですか。では後でお礼を言っておかなければなりませんね。・・・・・ところでこのお花、なんという名前なのですか?」

「『オリーブ』っていうそうです。花の精霊さんが言ってたんだけどね、ニンゲンたちの間では『平和』をあらわすお花なんだって」

「平和を・・・?」

「うん、だからね、これからぼく、世界中の空からこの『オリーブ』のお花を降らしていこうと思うんです。そうすればいつかきっと、平和を願う神さまたちのココロも、ニンゲンたちに届くだろうから・・・」

「・・・え?」

「・・・花の精霊さんから聞きました。神さまたちが泣いているのは、ニンゲンたちが争ってばかりいるからだって」

「!それは・・・・・」

「ぼく、神さまたちのこと大好きだから、神さまたちのお願い、かなえてあげたいんです。・・・でもぼくたち天使には、神さまたちのような願いをかなえる力はないから・・・・・こんなことしかできなくってごめんなさい・・・・」

 天使はしょぼんとしてうつむきました。

 すると太陽の神様は、天使の肩に優しく手を乗せ、言いました。

「ありがとう、そのお気持ちだけで十分嬉しいですよ。―――ええきっと、あの花と共に、私達の心も彼らに伝わるはずです」

 太陽の神様はにっこりとほほえみました。

 どうやら天使のおかげで、ほんのちょっぴり元気が出たようです。

「――――うん!」

 太陽の神様に励まされ、天使も満足そうにほほえみました。


 そして二人は願いを込め、さらにもう一掴み、『オリーブ』の花を地上に向けて放ちました。







 こうして天使は、神様達の心を人間達に伝えるため、今なお世界中の空から『オリーブ』の花を降らして回っているそうです。




 さて、この『オリーブ』のお花、あなたの元にも届きましたか―――――?




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― 新着の感想 ―
[一言] 世の中には色々な宗教があります。その教えに人間同士の争いが正義なのかあるのでしょうか?? このお話しのように、本当は神様は争いが無いことを祈っているかも知れませんね。人々は教えを広めていくう…
[一言] すごい、本当にこういう童話あってほしいなと思います。 素晴らしい話をありがとうございました。
[一言] 平和を願う作者の気持ちが伝わってきました。 私もこういう手のもの書きたいなと思っていたので、とても刺激になりしまた。 何かを訴える内容のものっていいですね。
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