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陰陽師異界録  作者: TAKE
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プロローグ その2

「大丈夫か!!」

俺は叫んだ。するとアザミは俺達に気づき、弓で攻撃しつつダイダラボッチとの距離を保ちながら向かってきた。


「どういうことだ、説明しろ。」

親父はアザミに言った。

アザミは片膝を着き事の説明をした。


「は、はい・・・・。私たちがこの山に到着してすぐにヤツは姿を現しました。形態は見ての通り幼体です。そこで私たちは一気に攻撃を仕掛けました。しかし、ヤツの力は凄まじく瞬く間に仲間は・・・殺されました。」

そこで親父は言った。


「結符を使わなかったのか?」

「いえ、結符は使いました。しかしヤツには効きませんでした。」

「そうか、ならあとは我々にまかせろ。お前たちは援護に回れ。」

「はい。」

アザミは返事をした。そして、俺はアザミに駆け寄った。


「大丈夫か?」

「ええ、心配ない。・・気を付けて、ヤツはただものじゃない。」

「見ればわかるよ。俺を誰だと思っているんだ。それに俺はそう簡単には死なないし、死なせない。」

「ふふっ、分かってるわよ。期待してるわよ、『鉄壁の陰陽師』さん。」

「やめろよ。まあいいや、それじゃ行くか。」

「ええ!!」

俺とアザミはダイダラボッチへと向かった。


          


「嘘だ・・・・・ろ・・・・・。」

俺は脇腹を抑えながら何とか言葉を放った。眼の前には李萩家に加え俺たち亜守家の陰陽師たちの亡骸が転がっている。わずかに残ったのは俺と親父、アザミと両家の陰陽師と巫女数人だけだ。


強すぎる。アザミの言うとおりヤツは強力だ。全身黒く、筋骨隆々の上に鋭い爪。全長約10メートル。顔には目鼻口のような模様が描かれている。

今ヤツは、右手に人の首をまるでボールを上から掴み上げるかのように持っている。すると首は骨が砕ける音と共に握り潰された。握った手から髪の毛と脳みそと砕けた頭蓋骨の破片があふれ出ている。


 ダイダラボッチはゆっくりと歩き始めた。どうやら俺に向かってきているようだ。途中に死体を踏み潰しながら俺へと向かってくる。

さ~て、どうしたもんか。今俺は最初のダメージおかげでもうほとんど動けない。何せ最初の蹴りで左肋骨を4本も折られちまったからな。しかも俺の防御符は一撃で蹴散らされた。


親父たちの方を見る。親父は部下の陰陽師に支えられている。俺より重症だ。あの親父でさえ手こずるとなると相当だな。まずい、どんどん距離が近づいてくる。逃げようにも肋骨が・・・下手に動かせば臓器に刺さる恐れがある。まずいな、ここは妖縛印で動きを止めるか。だめだ、今の状態では確実に動きを止めることはできないな。どうする・・・・・・。


その時、俺とダイダラボッチの間を遮るように一本の矢が飛び出した。飛び出した方向を向くと、アザミが矢を構えていた。

「早く逃げて!!」

再び矢を射る。

バカ野郎!!下手に刺激するようなマネすんじゃねえ。チクショウ、思うように言葉をだせねぇ。


二本目の矢はヤツの腕に向かったが、堅い皮膚を貫くことができずに矢は弾かれた。そして矛先は俺からアザミへと変わった。

まずい!アザミの方へ向かいやがった。その足取りはさっきまでのとは違い幾分早く感じる。アザミは一定の距離を保ちながら矢を射る。


その時だった、突然アザミの足取りが重くなった。

アイツ、無理してあんなことを。もう霊力は枯渇している筈なのに、無謀にも程がある。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・」

アザミは肩で息を吸う。とてつもない倦怠感に襲われ、今にも倒れそうな勢いだ。


負けない、あんな奴に!仲間の仇を打つまで私は!!

その時、アザミの眼の前には鋭い爪を蓄えたダイダラボッチの姿があった。

うそ・・・・・・・アザミの決意が一瞬で打ち砕かれ、その手がアザミへと伸びた瞬間だった。


「え・・・・・・・・・。」

アザミの眼の前には身体を貫かれ、そのまま上半身と下半身が分離した奏政の姿が眼の前にあった。全てがゆっくりと見えた。血を吐きながら重力に従い奏政の上半身が地に落ちてゆく。アザミは膝から崩れ落ちた。理解するのに脳の処理が追いつかない。なに、何が起きたの。奏政、え?ふらふらと四つん這いになって奏政の顔を覗くとそこには口と鼻から血を流し瞳が半分閉じた奏政の顔があった。上半身と下半身からおびただしい量の血液が水たまりをつくり、その上に内臓が広がっていた。


「――――――――――――!!!!!!」

アザミは声にならない叫びを上げた。

怒り悲しみ後悔殺意が籠った叫びだった。


ダイダラボッチを見る。その手は血を纏い血の水滴を落としながらじっとその場に立っている。アザミは立ち上がろうとするが力が入らない。涙で視界が揺らぎ、ダイダラボッチの姿をまともに見ることができない。


アザミの流した涙が奏政の眼に落ちる。それはまるで奏政が泣いているかのようだった。光を失ったその眼はただただ虚空を見つめているだけだった。


読んでいただきありがとうございました。

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