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〜シックス〜  作者: 悠栖
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告白

 弥央は幸雄の写真が飾ってある仏壇に向けて正座していた。


 手を合わせて祈る。願い事だけは、山のようにあった。


「神様……お願い。あの子を幸せにして……」


 インターフォンが鳴り響く。突然の来客に、弥央は小首を傾げた。


「山崎さん……」


 玄関に居たのは、山崎だった。いつものスーツ姿ではなく、ジーンズにニットといったラフな格好だ。


「今日は非番なんだ」


 弥央は無言で山崎を家に上げた。


 何をしに、何を言いに来たのだろう。何も言わずに真一と暮らし出した弥央には、罪悪感しか残っていなかった。


「突然押しかけてごめん。迷惑なのはわかってたんだけど……」


「心配で、心配で」と山崎は俯いた。弥央は良心が痛んだ。


 こんなに想ってくれる人から、どうして自分は逃げたのか?


 答えは簡単だ。大事な人を亡くしたショックから、愛に触れる事を避けていたのだ。


 そうすると、弥央の真一に対する想いは やはり男女の愛ではないのか。


 しばらく弥央の自問自答が続く。その間二人は沈黙だった。

 少し経って、山崎が口を開く。


「今日は真一くん……署に行ってるんだってね」


 それは知っている。静かに頷いた。二人は座る事もせず、リビングで立って向かい合っている。


「大谷さんと高井さんが守ってくれている。俺は……」


 山崎の手が、弥央に伸びる。


「弥央ちゃんを守りたい」


 弥央は山崎の腕に包みこまれていた。

 肩口に彼の呼吸を感じた。早い鼓動も胸から伝わる。


 ほだされてしまいそうだ。真直ぐな愛に。


「山崎さん……」


 やっとの思いで声が出た。山崎は弥央を腕の中に納めたまま、力を緩めてその瞳を覗き込んだ。


「始めから、山崎さんに励まされて……それがなきゃあたし、駄目だった」

「そんな事ないよ。弥央ちゃんは強いから」

「駄目なの……」


 顔を埋めて、静かに泣いた。

 久し振りにこの人の前で素直になった気がした。


「弥央ちゃん」


 山崎もまた、頭を撫でて抱き締める。

 届く距離に彼女が居る。体温をこの腕に感じる。


「好きだ……好きだ」


 うわ言のように繰り返した。弥央の嗚咽は益々早くなった。


「俺、待っててもいいかなあ」


 頬が熱い。何だか自分も泣けてきた。


 弥央は何も言わずに、山崎の服を掴む手を強くした。山崎にはそれが肯定にとれた。


「待ってる。お嫁に行くまで待ってるから」


 弥央が顔を上げると、すぐ近くに山崎の顔があった。


 山崎は少し強引に弥央の唇を奪った。


 濡れた瞳に、上気した頬。絡まった髪も全て愛しくて、鼓動が鳴り止まない。


 一瞬重なるだけでは物足りず、口付けは少しずつ激しいものへと変化した。

 何度も何度も繰り返した。反応を返してくれる弥央が嬉しかった。


「愛してる……」


 呟きは彼女の胸に すとんと落ちていった。



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