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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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孤独な進入試験③

空中へと放り出されたイエローが、一瞬にして透明な立方体に閉じ込められた。その異様な光景に、地上に残された三体は驚きの声を上げる。


「あぁ、イエロー!何だあの四角いの!あんなところにあんなの今までなかったぞ!?」


「諦めるな! パワーで押し破るんだ!」


仲間の声援を受け、イエローはキューブの中で必死に暴れ回る。内側から凄まじい連撃が加わり、魔素の檻が振動を繰り返す。

そして、耐えきれなくなったキューブは音を立てて砕け散った。


「やったぁ! 脱出したわ!」


ピンクが歓喜の声を上げ、落下するイエローを迎え入れようと走り出した。


だが、その喜びは一瞬で凍りつく。


キン!


自由を取り戻し、重力に従って落下するイエローの身体を、再び乾いた音が包み込んだ。


「えっ?」


空中で静止する二つ目のキューブ。


悠太は、一発で仕留めきれない事態を想定し、下の座標に二重の罠を構築していた。


「う、嘘だろぉぉ。もう一つあったの?」


二度目の捕獲にもイエローは力技で抗おうとするが、一回目ほどの勢いは出せず、ワナワナと両膝をついた。


「クソ! なんだよこれぇ!」


両手でドンドンと壁を叩くも、四角い捕食者はびくともしない。

イエローの身体は徐々に収縮していき、やがてキューブとともに虚空へと消えた。


「イエロー?  消えた?  嘘でしょ、本当に消されちゃったの……?」


ピンクが震える声で呟く。

再生素材である自分たちが、再生の余地もなく消失させられた事実に、試験体としてのAIが未曾有の混乱を来していた。


そんな最中、ブルーが低姿勢で悠太の背後へと回り込む。

『ウッルの目』の銃撃を避けるため、悠太を直視しないよう視線を伏せ、気配を殺して肉薄する。


(今度こそ!)


鋭い爪を悠太の背中に突き立てようとしたその瞬間、ブルーの足元から新たな魔素が逆巻いた。


キン!


「悪いけど、後ろにもあるんだ」


悠太が静かに告げると同時に、ブルーの身体を三つ目の『キューブ』が飲み込む。狭所での発動。バネ壁に挟まれ、いつもよりも小さめの大きさとなった立方体。

小さな檻に閉じ込められたブルーは、抵抗する余裕もなく消失のプロセスへと引きずり込まれていく。

試験体は受験者の能力を試しやすいよう飛び道具を使わない。その情報は事前に取得済みだったため、背後の『キューブ』設置はマストだった。


「残り二体…」


悠太はここで、出し続けていたバネ壁の魔素供給をピタリと止めた。すると、視界を遮っていた巨大な壁が霧が晴れるように消滅する。


障害物がなくなり、レッドとピンクがその急な変化に思わず壁のあった方角を向くと、視界にはっきりと悠太の姿が映り込んだ。


「まずい!」


反射的に悠太を見てしまった瞬間、止まっていた『ウッルの目』が再起動。


シュパパパパッ!! と、空気を切り裂く無音の銃弾がピンクに集中した。


「や、やだ! あ、あたし撃たれすぎてる!」


すでにこれまでの攻防でダメージを蓄積させていたピンクは、防ぐ手立てが何もないまま蜂の巣にされ、限界値を突破。その身体は形を維持できなくなり、ドロリとした液体へと戻っていった。


残されたのは、レッドただ一人。


しかし、レッドは悠太と視線を合わせないよう即座に後ろを向くと、両手を高く上げ、降参のジェスチャーを示した。


「参ったよ、少年。完敗だ。これ以上の続行は無意味だね」


静寂が戻った試験会場に、隔壁が開く重厚な音だけが響き渡る。


悠太はゆっくりと立ち上がり、自身の足元を見つめた。


結局、戦闘開始の合図が鳴ってからこの瞬間まで、悠太は開始地点から一歩も動いていなかった。

ただその場に立ち、自らが描き出した設計図通りに魔素を操るだけで、押し寄せる精鋭たちを完封し、合格を勝ち取ったのだ。


『――全試験体の無力化を確認。戦闘不能および降参により試験終了とする。挑戦者、甘露寺悠太を合格とし、第五階層への進入資格を付与する』


無機質なアナウンスが室内に響き渡る。

悠太は深く、長く溜まった息を吐き出し、その場に膝をついた。魔素はほぼ底をつき、精神的な疲労も限界に近い。しかし、その瞳には確かな達成感が宿っていた。



一方、その一部始終をモニター越しに見ていた管理センターのスタッフたちは、静まり返った部屋で言葉を失っていた。


「……信じられん。ソロの進入試験の合格基準を遥かに超えている。消滅スキルとはな」


一人のスタッフが震える指でログを指し示す。通常、ソロで挑む探索者の場合、試験体一体に基準以上のダメージを与えるか、あるいは四体の猛攻から一定時間逃げ延びることができれば、その立ち回りを評価されて合格となるのが通例だ。

一人で四体全てを相手取るのは、この階層にいる探索者にとって、それほどまでに不条理な現実なのである。


「それなのに、この少年は二体を跡形もなく消し去り、一体を戦闘不能に追い込み、最後の一体を降伏させた? 覚醒したばかりの探索者が最先端の再生素材を完全に無効化できるのか。

先日の空間を操る女子生徒にも驚いたが、こんな結果、過去の全記録を遡ったって一度もないぞ」


管理センター内に、どよめきが広がる。


試験導入以来一度も見たことがない未知の体系。


戦術、魔素の運用、そして底知れないスキルの特異性。


ダン研管理センターの深部において、甘露寺悠太が予測不能な存在として、確実に刻み込まれた瞬間だった。


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― 新着の感想 ―
手札がもっと増えればクールタイム問題も解消されてさらに強くなるね。他の探索者なら発射や発動を一つ一つするのに対して、設置なら限度の範囲でいくらでもできる。
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