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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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佐藤の後悔

演習場の中央で佐藤講師は腕を組み、鋭い視線で二人を見据えた。


「実戦に入る前に、まずはスキルの棚卸しだ。今使える手札とこれまでのポイントの割り振りを正確に把握しておきたい。如月さんはどうかな?」


凛は静かに一歩前に出ると、流れるような動作で説明を始めた。


「私は現在、三つのスキルを主軸にしています。周囲の地形や敵の配置をトレースする『空間把握』。離れた場所の空気を圧縮し物理的な干渉を行う『見えざる手』。そして、空間をえぐり取る防御無視の攻撃『虚空穿こくうせん』です」


『見えざる手』は、一見地味だが極めて汎用性が高い。遠くのスイッチを押す、敵の足首を掴んで体勢を崩す、あるいは仲間への攻撃を空気のクッションで和らげる。破壊力こそ『虚空穿』に劣るが、その利便性は特殊系の中でも群を抜いていた。


続いて悠太が口を開く。


「俺は罠スキルが三つです。獲物を落とす『落とし穴』、対象を跳ね飛ばす『バネ床』、足などを縛り上げて対象を捕らえる『スネア』。これらを組み合わせて敵を仕留めるのが俺の戦い方です」


佐藤は二人の説明を咀嚼するように聞き小刻みに頷くと、次にスキルボードの成長傾向について問いかけた。


悠太はまだ新スキル『スネア』を一つ取得しただけ。凛は『見えざる手』の取得と『敏捷性』『物理防御』のステータス強化にポイントを割いていることを伝えた。

意外にも探索者界隈有数の最強スキル『虚空穿』は初めから備わっていた初期スキルであった。


話を聞き終わり「なるほど」と自分に言い聞かせるように呟くと、佐藤の表情がわずかに曇った。彼は深く重い溜息をつき、自らのスキルボードを見つめるよう少し上を向く。


「……いいか、二人とも。これは俺の最大の失敗であり、後悔から来る忠告だ」


佐藤の声には、第一線を退いた者特有の苦渋が混じっていた。


「俺はかつて、単独でも戦える万能な探索者を目指した。支援職でありながら、敵に襲われても死なないように『筋力』『防御』『敏捷性』などステータススキルに多くのポイントを振ってしまったんだ。その結果、どうなったと思う? 」


二人が顔を見合わせ、首を横に振る。


「何でも卒なくできるが、何をやらせてもプロの頂点には届かない、中途半端な中堅止まりの出来上がりさ」


佐藤は自嘲気味に笑った。


「もし俺がステータス上昇に欲を出さず、支援系スキルの深化だけに特化してポイントを注ぎ込んでいれば……今頃、もっと上の景色が見えていたはずだ」


スキルツリーには主に八つのステータス上昇スキルが存在する。


『筋力』『魔力』『物理防御』『魔法防御』『敏捷性』『器用さ』『体力』そして謎の多い『運』。


このうち『器用さ』と『運』は主に希少な素材加工や調合の成功率を左右する生産系向けのステータスと言われている。


「特殊系において、ステータス強化は毒にも薬にもなる。死なないための守備固めは必要だが、ポイントを振りすぎると後で後悔することも多い。君たちはなるべく『ステータス強化』よりも、まずは『固有スキルの取得』に重きを置いたほうがいい。二人の価値はステータス画面の数値ではなく、君たちにしかできない現象そのものにあるんだからな」


佐藤の言葉は悠太の胸に深く刺さった。


三百ポイントという今の悠太にとって大きな数値を要求する新スキル。もし途中で不安になり、手近な『敏捷性』などにポイントを逃がしていけば、罠使い《トラップメイカー》としての活躍は遠のいていく。


(自分のスキルの可能性を信じるしかない)


「まあ、如月さんが防御系を取ったのも駆け出しの生存戦略としては決して間違いじゃない。今はまだどうとでもなる。ただ今後ステータスにポイントを振るのは、慎重に考えてからのほうがいいと俺は思う。これからのポイントは如月という存在を完成させるために使え」


佐藤はそう締めくくると、演習場の奥へと視線を向けた。


「さて、講釈は終わりだ。……そろそろ、君たちのための『相手』が用意できたようだぞ」


背後の暗闇から、ガチガチと骨を鳴らすような不気味な音が響き始めた。


プロが調整した今の二人にとって最も過酷で最も理想的な敵。


悠太は精神を集中させ、魔素の糸を指先に感じ取った。


ステータスに頼らない、自分だけの罠の真価を証明する時が来たのだ。


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― 新着の感想 ―
肉体的ステータスはダイレクトに生存に繋がるから無視も難しいよねぇ。特殊スキルで生存が可能ならいいんだけど。
ステータスはある程度勝手に上がるからポイント使うのもったいないってことなのかな?
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