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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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プロ探索者の実力

ダンジョン内の講習室。


微量の冷気が漂う部屋で、特殊系の講師を務める佐藤はホワイトボードの前に立っていた。


「まずは君たちの現在地を確認しよう。甘露寺くん、如月さん。君たちの魔素量は今どれくらいだ?」


悠太が「二百を少し超えたくらいです」と答え、如月も「五百くらいです」と続く。


(一ヶ月しか違わないはずなのに、もう俺の目標魔素量に到達してるのかよ)


如月の魔素量に驚きを隠せない悠太を気にすることもなく、佐藤は小さく頷き淡々と数字を語り始めた。


「覚醒して間もない頃はそんなものだ。魔素量は、日々の戦闘や訓練、才能にもよるが、平均して月に二百程度上昇する。順調にいけば一年で二千から三千ほどの計算だが……現実はそう甘くない。壁にぶつかり、停滞する時期が必ず来る」


佐藤はそこで言葉を切り、二人をまっすぐに見据えた。


「参考までに。俺の現在の魔素量はだいたい一万五千だ」


「一万……五千……」


悠太は絶句した。自分の現在地の七十倍以上。桁が違いすぎる。

テレビやスマホなどでは魔素量が数万という探索者は珍しくないが、身近にいるかというと、その数はかなり少ない。言ってみれば、プロスポーツ選手に直接指導を受けているような感覚。

隣に座る如月も、その圧倒的な数値に驚きを隠せない様子だった。


しかし、佐藤の表情は晴れない。


「ただ、これだけの魔素を積み上げても、スキルツリーにあるスキルを全て取得することは到底不可能だ。ツリーは深淵。先へ進めば進むほど、要求されるスキルポイントも上がる。初めのうちは余っているように感じるポイントも、使い道を一つ間違えれば取り返しのつかない弱体化を招く」


佐藤の声が冷たく響く。


「特に特殊系は物理系や魔法系と違ってセオリーが確立されていない。情報が圧倒的に少ないんだ。スキルボードをよく見て、自分がどの領域を支配したいのか、一ポイントたりとも無駄にせず、考え抜いてスキルを選択すること。それができない奴は、中層へ行く前に脱落する」


重苦しい沈黙が流れる。


悠太の脳裏には必要ポイント三百という自分の中では途方もない数字を要求してきたスキルの文字が浮かんでいた。自分の選択は正解なのか?


「さて……理屈はこのくらいにしよう。まずは、君たちがこれから挑む世界がどれほどのものか肌で理解してもらう」


佐藤がゆっくりと立ち上がり、両手を下げた。


「――『共鳴レゾナンス』、開放」


瞬間、部屋の空気が一変した。


佐藤の全身から、濃密な、目に見えるほどの蒼い魔素の渦が噴き出した。それは突風のように物理的な圧力となって二人を襲う。


「っ……、あ……」


如月の顔から血の気が引き、その膝が激しく打ち鳴らされる。空間を把握する彼女のスキルが佐藤から放たれる質量を伴った殺意と威圧感を余すところなく捉えてしまったのだ。


悠太もまた、本能が逃げろと叫ぶのを感じていた。脚がガクガクと震え、立っているのがやっとだ。目の前にいるのが同じ人間とは思えない。巨大な災害、あるいは底の見えない底なし沼がそこにあるかのような恐怖。


「これで、出力は50%程度だ」


佐藤が声を抑えると、魔素の渦がわずかに収まった。しかし、その余韻だけで呼吸が苦しい。


「ここに呼ばれている講師たちは全員が俺と同等かそれ以上の実力者。そして、世の中には俺たちが束になっても、指一本触れられずに全滅させられるような怪物がゴロゴロいる。魔物も、人間もな。本能的に無理と悟ったら迷わず逃げることも探索者にとっては大事なんだ」


佐藤は魔素を完全に収めると、椅子に深く腰掛けた。


「一万五千の魔素があっても、俺はまだ『支援職』として誰かの背中を守ることしかできない。甘露寺君の『罠』。如月さんの『空間』。それがどこまでの深淵に繋がっているのか。それを決めるのは君たちがこれから選ぶスキルと、その覚悟次第だ」


悠太は、自分の掌を見つめた。


今までは第二階層のネズミ相手に小銭を稼いで喜んでいた。だが、今見せつけられたのは自分が目指すべき道の途方もない奥深さだ。


(これが、探索者の道か)


恐怖で震えていた悠太の瞳に静かな火が灯った。


一万五千の先にある世界。それでも抗えない強大な存在。

これから自分が身を置く世界を、現実を、身を持って体験させてくれた。


(間違ってたのは自分だった。こんな経験はなかなかできるもんじゃない)


今日この場にいること、プロの探索者に出会えたこと、その幸運を噛み締め、悠太は明日への心構えを新たにした。

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貴重な体験
魔素上昇量=スキルポイント?
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