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白き誓い

春だった。


八阪神社の桜が、ゆっくりと散っている。


風が吹くたび、花びらが舞う。


小さな家の縁側。


白瀬かのんは座っていた。


目は開いている。


でも。


色は見えない。


世界は、光と影だけになっていた。


それでも。


困ることはあまりない。


なぜなら。


「かのん」


声が聞こえるから。


白瀧だった。


長身。


細身。


若白髪の髪が、春の光に揺れる。


白瀧は湯呑みを持ってきた。


「お茶」


かのんの手に渡す。


かのんは笑った。


「ありがとうございます」


白瀧は隣に座る。


少し間があって。


かのんが言った。


「桜」


白瀧が見る。


庭の桜。


風に揺れている。


「咲いてる?」


かのんは聞いた。


白瀧は少し考える。


それから言う。


「そうだね」


「綺麗だよ」


かのんは微笑んだ。


「……いいですね」


その声は穏やかだった。


白瀧は少しだけ空を見る。


昔のことを思い出す。


祇園の夜。


神禍。


せな。


そして。


あの瞬間。


白瀧は言った。


「かのん」


かのんが顔を向ける。


「はい」


白瀧は少し迷った。


それから言う。


「僕」


「隊長を辞めたんだ」


かのんは少し驚いた。


「そうなんですか」


白瀧は笑った。


「うん」


「神選組は続いてる」


「でも」


少し間があって。


「僕は」


「君のそばにいる」


かのんは何も言わなかった。


でも。


頬が少し赤くなる。


「…ありがとう‥ございます」


小さく言う。


白瀧はその手を取った。


かのんの手。


少し冷たい。


でも。


確かにここにある。


白瀧は静かに言った。


「君の目は」


「僕が守る」


かのんは笑った。


「大丈夫です」


「隊長の声が聞こえるから」


白瀧は少しだけ驚く。


かのんは続けた。


「隊長の声が」


「私の光です」


白瀧は少しだけ息を止めた。


そして。


静かに笑う。


桜の花びらが舞う。


祇園の空は穏やかだった。


長い戦いは終わった。


それでも。


二人の時間は、これから始まる。


白瀧は小さく言った。


「……そうだね」


「僕も、君の存在が」


「光だ」


桜が、静かに散っていった。


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