第漆話 人喰い
家に帰った緋色は親が眠っている間、リンゴを砕かず持つ練習をしていた。実際は豆腐などでやってみたいところだが、欲張っても良い成果は得られない。まずは簡単な物からだ。
とは言っても、リンゴですらなりたての自壊者には難しい。
「手に集中させず、発散させる…!」
砕かないように力むと、逆効果になる。なので緋色は腕に入る力を分散させる為に、足や腹に力を入れる事にした。そうすると見事に持つことが出来たが、力が入らず、落としてしまった。
「バランスって難しいな…」
その日はもう寝ることにした。
一週間後、力の入れ方については慣れることが出来た。
「もう豆腐だって持てるし、ダイヤを砕くことも出来るぞ!」
「ダイヤを砕くんだ。いやだなー。」
こんなギャグを言っている栄光だが、緋色の練習には多大な影響を与えた。八割がたは栄光のおかげと言っても過言では無い。
「そしたら、自壊魔術の使い方を学ぼう!まず、やり方としては体に溜まっているエネルギーを発散するイメージ。腹筋に力入れるみたいに、全身に力を入れる。けどこの時にはちゃんと発散させるイメージを持たないといけない。」
「こう?」
全身をグッと力むと、何となく体でエネルギーの流れが分かった。
「何となく出来たよ?」
「それはまあ簡単だけど、ここからだよ。この時に『自壊放出』の後に自分の魔術を叫んで、効果が発動する場所だけの力を抜く。全身の力を抜くとか、入れるのは簡単だけど、部位によっては一部ってのが難しい。僕の場合は背中だから面積が大きいけど、緋色くんの場合はどうだろう?」
「『人喰い』でしょ?じゃあ口とか?」
「別に人喰いだからといって、口で食べるとは限らないよ。精神的に食べるという意味かも。そこは能力の解釈によるね。」
人喰いのイメージがあまり湧かなかったので、緋色は少し考えたが、あまりいい物は思いつかなかった。
「歴代の『人喰い』使用者の文献を見るには、自分の空間を作り出して、そこで精神を喰らうみたいなものがあったよ。」
「じゃあ、心を食べるとか?一部の心に絞るみたいな。」
「その場合だと、なんだろーな?例えば悪心を食べて、敵意を無くすみたいな。」
「じゃあ、力を抜くのはどこ?」
「んー、概念的な要素が強くなるけど、腹部かな?心を心で食べる感じ。」
話し合いの末、心を食べる事になった緋色は早速やってみた。
「自壊放出 人喰い!!」
腹部の奥の方の力を抜くと、腹に大きな口が現れたような感覚があった。
「成功だね。精度を上げれば、他の部位で発動できるようになったり、イメージだけで発動出来たりする。イーターのいいターニングポイントだと思うよ。」
こうして緋色は人喰いを操れるようになった。悪を倒すためにまた一歩進んだ。
第漆話 【終】
この作品が面白いと思ったら是非★やブックマーク、コメントなどお願いします。
また、他の連載作品などもお願いします。




