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第拾話 ヒーロー

朝の静寂を破るように町では騒ぎが起きていた。悲鳴と怒号が耳を(つんざ)くような午前8時。

港が近いこの田舎ではパニックなど街全体にすぐ広がる。


他区に行くためのたった一つの駅が爆破されたのだ。市民にとっては自壊者の騒動だと思われていた。実際にはパニック状態に陥った天界者の所業であった。


「何で…何でだよぉぉぉ!!何でボスがぁぁ!!」


数日前、天界基地に何者かが立ち入り、天界ボスである「一二三 四五六(ひふみや しごろう)」が暗殺された。

市民もつられてパニック状態になってしまう中、一人の大学生らしき青年が天界者の首を掴んで、倒した。


「な…何だよぉぉぉぉ!!てめぇぇぇぇ!!」


天界者は数秒暴れていたが、少し経つといきなり人が変わったかのようにシュンと静まった。


「俺が何かって?そりゃ…」


「ヒーローだ。」


大学生はそう言うと周りの大衆に言った。


「自壊者が悪という先入観は今ここで捨ててください。これからは全てがフラットに悪な時代です。」


大学生は信じられないような事を淡々と話した。そんな中、市民の一人が声を上げた。


「じゃあ、市民(俺ら)は何を信じればいい!?」

「何も信じてはいけません。もう、『天界者』、『自壊者』、『市民』と区切られた時代ではありません。世界はパニックに陥っています。だから自分のことは自分自身で守らなければいけません。」


そう言うと高校生は脱出し、町には静寂が再び訪れた。それは“恐怖”か“希望”か…



一二三から真の敵を聞いてから数年経ち、緋色は凛々しい顔立ちになった。それと共に強さも増し、そこらの天界者ならば余裕で倒せるような強さになった。


近藤(こんどう)さん、情報収集は終わりましたか。」

「ああ、バッチリだ。それよりお前朝から無理しすぎじゃないか?天界者を味方につけないといけないとはいえ、そんなに無理ばかりしすぎるとお前が過労で倒れるぞ。精神的な疲労はクローン体から本体にも伝わる。」


近藤瑛仁(えいじ)は第三部隊幹部長であり、緋色のサポートを行っている。真の敵は自壊ボスのハレオ・ダスボだ、と自壊者全員に伝えた時から緋色がダスボを倒せるように、情報収集や殲滅を行っている。三十代で少し髭は生えているが、町を歩けば大勢の人々がついてくる。


「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。今はとにかく天界者を説得しないと。一二三が亡くなって改めて決心した。この物語(ストーリー)は誰かが裏で引っ張っている。そいつを殺すまで、俺は止まりません。いや、止まれません。」

「殺すじゃないだろ。」


近藤が訂正する。


「喰らうんだ。」


第拾話 【終】

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