表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

背中の翼

作者: 霜月

 幼い頃は空を飛びたいと思っていた。いや、思っていたと言うのは語弊があるかもしれない。

 あの頃は飛べると信じていた。大人になったら、飛行機やヘリコプターなんかじゃなくて、背中に生えた翼で自由に飛び回るつもりだった。

 だけどそんなのはファンタジーだ。人間に翼なんて生えやしない。重力という硬い鎖に縛り付けられ、地べたを這って生きるしかない。

 そうして生きて二十余年。今、男はビルの屋上に立っていた。

 柵を乗り越え、風に身を晒している。

 足下では色とりどりの明かりが煌めき、暗闇の中に光のプールを作っている。吹き上げる風が賑やかな声を運んでくる。

 息を吸うたび、冷たい空気に熱が奪われていく。白い息となり外へと逃げていく。同時に恐怖という名の炎は鎮火していく。

 体を震わせるのは恐怖ではない。冬の寒さだ。

 一歩踏み出せば全てが終わる。なのにその一歩が踏み出せない。

 怯えはない。恐怖もない。必要なのは覚悟だけ。

 男はなぜだか幼き日のことを思い出していた。

 本気で空を飛べると信じていた無知な過去。

 だがそれが背中を押した。

 過去の自分に証明するため、男は空へと歩いた。

 残念なことに背中に翼は生えなかった。だけど自分の意志で、確かに空を飛んでいる。

 冷え切った空気が、刃のように肌に打ち付ける。風を切る音が耳に響く。

 重力の鎖から逃れる術はなかったが、それは肉体だけ。心は自由に空を飛んでいた。

 自由とは何者にも縛られないこと。自らの意思で歩み続けること。

 男は暗闇の中へと姿を消していった。

面白いと思ったら評価お願いします!励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ