おまけ
このところ、騎士様はだいぶ忙しいようだ。
俺が就職してからというもの、週に一度は何があろうと逢瀬の時間を作っていたのに、最近ではだいぶご無沙汰である。
とはいえ俺が不安になることは無い。愛を歌うメールは毎日届くし、電話だって、疲れて寝てしまった俺が取れないことはあろうとも、騎士様がそれを欠かしたことはない。
つまり、単に俺は、騎士様が忙しさのあまり体調を崩さないか心配なのである。
「姫っ!」
と思っていたら、騎士様が俺の一人暮らしの家に訪れた。
「ようこそ、騎士様。急にどうされたのですか?」
騎士様との今世での出会いから随分経ち、何かと急だったり突飛だったりする騎士様の行動にも、俺は落ち着いて対応できるようになった。
騎士様は今や俺より背が伸び、顔もなかなかのイケメンになった。あの学園内ではもちろんのこと、二人で外を歩いていても女子の視線が痛いほどだ。
玄関で俺をすっぽりと抱きしめたまま、騎士様が、嬉しそうにくすくす笑う。
「お聞きください、姫」
「はい?」
「姫にお会いできない長く辛い日々、耐え忍んだ甲斐がありました。実績を上げ、先ほどついに父を説き伏せました。次年度から、私は父の会社を継ぎます!もう学生ではないのです!ともに暮らしましょう、姫!!」
目が点である。
「じ、実績?とは」
「随分前から父の仕事を手伝っていたのです。そして父の提示する実績を上げたら、社を継がせてもよいと言われていました。このところそれが立て込んでいて、お会いできぬ日々は血の滲むような想いでした」
「え、え、ええ?こ、高校はどうなさるのです」
「姫、驚いた様子も愛らしい。高校も今年度で終わりにいたします。互いが社会に出たら、共に暮らす約束でしたね。ああ、長かった。これからは永遠に共にありましょう!」
たしかに、可能な限り早く迎えに行く、とは言っていたが、俺は騎士様の本気を見誤っていたのかもしれない。
もっともっと長く、俺は待つつもりだったのだけれど。
再開から10年。
俺、27歳。騎士様、17歳。
この春、結婚します。
おしまい




