泣かないで
子供の成長は早いもので、騎士様の背丈も、前世以来再会したあの春から、10センチ以上高くなった。
顔立ちはまだあどけないが、しかし瞳に宿る力強さは、成長した行く末にまた前世のあの騎士然とした凛々しい出で立ちになろうことを予感させる。
――いまはその瞳も翳っているが。
再開からおよそ2年、春3月。
今日は俺の卒業式だ。
「姫、……しばしの別れとはわかっていますが、やはり、寂しく思う私を、どうか軟弱だとお責めにならないでください」
やはり高い声で、やはり小さな身体で、騎士様は悲しげに言う。
対して10も歳上の俺は、声変わりをとうに終えた声、さして高くもないが当然騎士様よりは高い背、そして、――性は同じく、男である。
騎士様と再会してから、多くの時(ほぼ毎日である)をともに過ごしたが、聞けなかったことがある。
すなわち、俺が、女ではないということについて、どう考えているのか、だ。
いつか聞かなければならないと思っていた。
しかし聞けなかった。どうしても勇気が出なかった。そのたびに思った。私は、女の身で、この世に生を受けたかったと。
成長した騎士様は、きっとイケメンになるだろう。10も歳上の俺は、その頃にはオッサンだ。いつか、同じ年頃の美女とかと付き合いたいと思う日が来るのではないか。
俺なんかと契ってしまったことを、後悔する日が来るのではないか。
だが騎士様は、俺の悩みなど、気にかける素振りすら見せなかった。ただひたすらに、毎日俺に愛を囁き、態度で愛を示し、俺との未来を語り続けた。
「私がこの世に生を受けるのが遅れたばかりに、姫をお待たせして申し訳ありません。どうかしばらくお待ちください。可能な限り早く姫を迎えに上がります。そして、前世からの約束を果たしましょう。私とともに、今世を添い遂げてください。愛しています、我が愛しの姫よ」
その誠実な眼差しは、前世に向けられていたものから、まったく変わらない。
ああ、私も。
「私も、……あなたを愛しています。待っています、いつまでだって。わたくしの愛しの方」
はやく、大きくなってくださいね。




