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不覚を取りました





騎士様が怪我をした。教室で駆け回って遊んでいたクラスメートに激突され、転倒し、手を捻ったのだ。

今日も今日とて俺の教室に来ていた騎士様(先生の気配を察知するのと隠れるのとが異様にうまく、見つかったことは一度もない)は、俺の友人から手首の包帯を指摘され、子供らしからぬ暗い表情を見せた。



「そうなのです。あれしきの衝撃を堪えることができず、あまつ騎士の命である手の怪我をするなど、心から情けない。鍛錬がたりませんでした」

「姫路の小さい友人くんは、本当に武士みたいな喋り方するよねー」

「岸くんは、剣道やってるの?」

「はい。この春からようやく少年団に通うことが許されました」



騎士様は、前世と変わらぬ生真面目さで俺の友人たちへの対応を終えると、くるりと俺に向き直った。

竹刀を握っているためか少し硬くなって来た小さな手が、俺の両手をそっととる。



「姫、このたびは不覚をとりましたが、どうかいましばらくお待ちください。鍛錬を積み、必ずあなたを守り抜けるだけの剣士へ成長してみせます」

「は、はぁ」



懇願するような瞳にじっと見つめられると、相手は小学生だというのに、妙に気恥ずかしくなる。

岸は本当に姫路が好きだよなぁ、と友人たちが微笑ましく見つめている。はい!と騎士様が元気よく返事をしている。

俺は、俺も剣道やっときゃよかったかなぁ、と思っていた。

そうすれば、私は騎士様ともっと長く一緒に過ごせたのに。

――と思ったら、急な乙女思考に恥ずかしくなってしまった。




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