第1章 宇宙への旅立ち
ワマラ社の最高経営決定会合としての上級役員会議は、政府と別の会議とされていた。
「今回は、初代名誉会長にも参加していただきます。なお、既に知っていると思いますが、彼らこそ、この会社を起業した存在であり、その名声は、全人類に轟いております」
司会しているのは、現ワマラ国国家元首、雪野直宏だった。この人は、初代国家元首の孫に当たる。そんな彼に紹介されて入ってきたのは、雪野雄一だった。
彼は、今、平水、加賀、宮崎と共に、ワマラ社名誉会長の職についている。その一方で、4人で研究室の一室で長期間に渡り研究する事もある。
「今回の話は、宇宙と言う、今まで誰も行った事がない場所に対する問題なので、ワマラ国宇宙研究機関より、初代国家元首をお連れする事が出来ました。現在、宇宙空間に進出する競争が激しさを増しつつあります。衛星が二つあるこの惑星は、まず、大きい衛星である、ガイアに上陸し、その後、小さい衛星であるウラノスに上陸します。その2衛星を足がかりにして、宇宙全土に進出して行く予定です」
雄一は座りながら言った。
「その計画でも問題はないが、そもそも、宇宙にはどうやって行くんだ?平面上の移動ならば、魔法結晶体の魔力でどうにかなるが、重力に逆らって上がるとなると、まだまだ理論がうまく完成していない」
「失礼ですが、元国家元首は、理論が出来ていないからといって、それを実行に移さなかったのですか?」
「理論と実測は違うもの、そう言いたいのか?」
「そう言う事です。すでに、機械は出来あがっています。あとは、打ち上げるだけです」
「最初は、人間を乗せずに、人工衛星でも乗せるべきだな」
「その予定です。それが済むと、次は、実際に人に乗ってもらいます。登場者は既に選考済みです。彼らは、死の危険と隣り合わせだと言う事も、承諾書に署名していただいております」
「なるほど、では、それでいこうではないか!」
雄一が言った。同時に閣議は終わった。
雄一は、結局、起業時のアパートに住んでいた。無論、他の3人も同じである。
「ただいまー」
ドアを開けて中に入る。なぜか、2人多かった。
「あれ?スタディン神とクシャトル?」
「そう、暇だったからって、ここに来たみたい」
「なるほどね」
智弘の説明を受ける雄一は、そのままテーブルの周りに座った。
「そう言えば、他の神様はいるんですか?」
彩夏が、スタディン神に質問した。
「いや、オメトルから出れたのは、自分とクシャトルだけだ。他の神々は、あそこから出れなかった」
幸琥は聞いた。
「オメトルって、なんですか?」
「ああ、オメトルって言うのは、神々の墓場と呼ばれているところだ。その空間は、この空間から見て、完全に離れた所にある。神しかいけないところだ。だが、戻ってくる事は、自分達で最初で最後だろう。そう言うところだ」
スタディン神は、そう言って、黙り込んだ。
「で、なんで、スタディン神は、ここに?」
雄一が聞いた。
「自分も、元々は君達と同じような人間だった。そう聞いて、驚くかね?」
「いえ、別に驚きません」
「そうか、この前、と言っても既に100年以上も前だが、魔法暴走によって、地表面上が魔法汚染になった時があっただろう?あの時、向こう側とこちら側にわずかにほころびを見せた。そこを二人で通ってきたって言う事だ。そして、出てきたのが、君達と最初に出会った時、あの場所だったと言う事だ。ただ、それだけだよ」
「そうですか」
そして、クシャトルが言った。
「そう言えば、今、宇宙に行こうと思っているところなの」
スタディンが言った。
「宇宙?あの空間にか?」
「そう、私達が生まれた時には、既に宇宙進出をしていたから、それまでの事を経験できなかったでしょ?だから、こんな事は、貴重だなって思って」
「宇宙文明のほうには連絡しているのか?」
「彼らは、もう、いるかわからないよ。ただ、その残留物はあるけど」
宇宙文明と聞いて、すぐに、彩夏が反応した。
「え?何の話?宇宙文明って、本当にあるの?」
「ああ、聞かれたらしょうがない。ああ、そうとも。宇宙文明は、実在する。君達が宇宙空間に出れば、すぐにでも遇えるだろう。だが、生きているかは分からないが」
「ほんと!それってすごい事!」
「しかし、我が社以外の3社も現在宇宙に向かっている。これからどうするかだ…」
その時、雄一の携帯がなった。
「はい、雄一です。ああ、直宏か、うん…、え?今からか?分かった。じゃあ、現場で会おう」
通話自体は1分ぐらいだった。
「これから、通信衛星発射実験をしますが、来ますかだと」
「無論行く」
神すらいくと言った。6人は、そのまま、発射場へと向かった。
こうして、発射実験場所へ無事にたどり着いたのは、発射実験開始1時間前だった。
「名誉会長、よくぞいらしてくださいました」
挨拶をしたのは、宇宙省大臣の遠山雄哉だった。
「遠山。これが、そのロケットか」
「そうです。ワマラ国初のロケット、G-6921、椡型です。全長140m、外円の直径90m。液体酸素と液体水素を燃料として、尾部ブースターより混合した燃料を噴射します。全質量400tg中、6割が燃料に費やされています。中央の白く長い筒状の物、最上部が三角錐になっているものです。基本的にこれを立体的に拡大、縮小させたものが基本設計になります。中央部が、いわゆる本体になります。三角錐の部分に人工衛星を積み込む事になります。現時点では、積載重量は950kgが限度ですが、技術開発は現在も進んでいます。三角錐の下部及び周辺についている4本のオレンジ色の物は、全て燃料です。現在では、これが最初の物なので、基本的にこれを底敷きとして、開発が進んでいくでしょう」
「なるほどな。では、あのロケットの周りに引っ付いている霜みたいなものはなんなのだ?」
「あれは、ドライアイスです。二酸化炭素を凍らせたもので、−79℃にて、昇華する性質があり、濡れずに済むっていう事で、採用したんです。まあ、本体を冷却するのにうってつけだったと言うもの理由のひとつですが」
「なるほど。では、発射まで、少し待つとしよう」
1時間後、6人は、VIP待遇を受けた。さすがに、名誉会長まで登りつめると、こう言う待遇も当然のように行われるのだ。
「さて、皆さまには、発射する瞬間を見ていただきたいと思い、特別席をご用意させていただきました」
「確かに、特別席だが、なぜ、このような建物屋上の吹きさらしで、太陽ギンギンの中、パイプ椅子に座り続けていなければならないんだ!?」
「ご辛抱下さい。もう間も無く、発射します。発射時刻は、本国首都標準時12:45:39です。あと、30秒…」
ゆっくりと時が流れているようだった。
そして、発射の瞬間、轟音と共に、巨大な人工物は、無事に、打ちあがった。
翌年、人工衛星は無事に機能し続けていた。そして、人類初の宇宙飛行が近づいていた。




