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◇9 押し花

 そして、数日後。やっと外に出てもいいという許可ももらうことが出来た。


 ここまで結構長かった。治っても身体が疲れてるからって中々ベッドから出してもらえなかったんだから。もう大丈夫ですよって先生が言ってもお母様とお父様が無理は禁物だと許してくれなかったし。


 それが今日ようやく! 長かったぁ……ベッド生活には慣れていたけれど、こっちに来てからベッド生活じゃなかったからだいぶ退屈したんだよね。よし、早く貰った花束を早く押し花にしてあげなきゃ。



「こんにちは、ドルトさん」


「おや、こんにちはお嬢様。お元気そうで何よりです」



 ドルトさんは、ここアドマンス公爵邸の庭師さん。この素晴らしい庭を作ってくださっているベテランだ。私も、ラミラス畑を作る時たくさん相談して手伝ってもらった。



「それで、相談があるんですけど、ここのお花をいくつかもらっていいですか?」


「花を、ですか。プレゼントされるのですか?」


「一応プレゼントなんですけど、そのままじゃなくて押し花にしてみようかなって」


「押し花?」



 マリアにも説明したように、同じく説明すると、なるほど! とすぐに分かってくれた。でしたらいくらでも持ってってください! と許可をいただけた。



「お嬢様からのお願いですからね、花達も喜びます」


「ふふ、出来上がったらドルトさんにもプレゼントしますね」


「本当ですか、それは楽しみですな!」



 久しぶりだからと、簡単な平たいお花を選んで摘んだ。綺麗なお花ばかりだからきっと素敵なものができるはず。ドルトさんが丹精込めて育てた花だから無駄にしないように気をつけなきゃ。



「お嬢様、これでよろしかったでしょうか」


「うん、ありがとう」



 その後、大事にお花を抱えて私のお部屋に。そこには朝用意してもらうようお願いしていたものがローテーブルの上に揃っていた。分厚い本2冊に、水を吸いやすい紙二枚と、普通の紙も二枚。


 これらを一体どう使うのか全く予想がつかないマリアは、ソワソワと私の手元を見ていた。でも、いたって簡単な作業だ。



「ではまず、分厚い本を開き、普通の紙、その上に水を吸いやすい方の紙を敷き、その上にお花を並べます」



 アルフレッドさんがくれた花と、さっき摘んできた花を並べる。よし、こんな感じでいいかな。



「次に、もう一枚の吸いやすい方の紙を重ね、その上に普通の紙を重ねます。そして、本を閉じてもう一冊の本を重ねます」


「ぺったんこになってしまうのでは?」


「そう、ぺったんこにするの。これで数日間このままにすると、水分が抜けて完成よ」


「では、保存できるという事ですね」


「でも、完全には水は抜けないから乾燥させて保存するか、それか加工するか。本当ならラミネートがあるといいんだけど……」


「ラミネート、ですか?」


「うん。保護のためにプラスチックフィルムに挟んでくっつけるの」


「なるほど……では、公爵様にご相談してはいかがでしょう」


「お父様に?」


「公爵様のお知り合いに、魔道具を作っていらっしゃる方がいらっしゃいますから。きっと作ってくださると思います」



 でも、ラミネートの(くわ)しい事は私分からないんだよね。素材とか、そういう細かいところとか。ママに買ってもらって使ってはいたけれど。


 と思いつつ、お父様に相談してみたのだけれど……



「魔道具か、それならルーカスに声をかけておこうか」



 断られてしまうんじゃないかな、って思ったのにあっさりOKを出してくださったお父様。なんか……いいのかな? 


 見た事のないものを作らなくてはいけない事になるし、私の適当な説明しかないし。大丈夫かな。なんて思ってしまった。


 因みにルーカスさんとは、宮廷魔術師団の魔術師長だそうだ。そんな人達がいるんだって思うよりも、すごい人にお願いしてしまって、いいのかなというほうが大きかった。


 お忙しい方だからいつその方の所に行こうか、と思っていたのに次の日こっちに尋ねてきちゃってとても申し訳なかった。


 魔術師とは、人々の暮らしを豊かにする魔法を扱うことの出来る人達の事を言うらしい。魔法とは、異世界からいらっしゃった方々が教えてくれたものではなく、大昔からずっと伝えられてきたものらしい。


 私の想像だとモンスターを魔法で倒したりとかっていうものだったんだけど、そういうものでは全くないらしい。そもそも攻撃する為の魔法とかはないみたい。


 大火事とか大洪水とかの災害時に派遣されて助けてくれたり、あと身近にある魔道具を作ったり。


 そんな凄い人に頼んじゃってもいいのかな、そう思っていたのに。



「ラミネーターと、ラミネートフィルムですか、面白いものがあるものですねぇ。ぜひとも私に作らせてください」



 と、こちらもあっさりOKを頂いてしまった。本当に、これでいいのだろうか。あ、あと穴開けパンチとかもお願いしたら快く受けてくださった。


 でも、全く未知の道具なので時間がかかるそう。だから、今回は額縁にすることにした。実はお小遣いが用意されていたようで、好きなように使いなさいと渡されてしまった。悪い気もしたけれどいっか、とそのお小遣いを使って購入した。



「お手伝いいたします!」



 と、何人かのメイドさんが大集合。マリアが何か言ったらしく、もうワクワクした様子でこちらに集まってきたのだ。確かに、楽しいかもしれないね。デザインとか、並べるのとか。



「じゃあ、こんな感じで並べて……」


「まぁ! これが押し花ですか!」


「私、このオレンジのお花にいたします!」



 もう皆さん女子だ。しかもセンスもいいし。私のなんてただ並べただけみたいな感じになっちゃったかも。皆さん褒めてくれたけど。


 何とか私も出来たけれど、それを聞きつけたお母様に自分の分も作ってくれない? って言われてしまった。一体誰がお母様に言ったんだ。まぁ、秘密にするつもりはないけれど。


 お母様はピンクの髪だから、お揃いという事でピンクのお花とかを使って何とか綺麗な額縁を作ることが出来た。あまりうまくいかなかったけれど、お母様が喜んでくださったから、いっか。


 と思っていたら、それを自慢されたらしいお父様が自分の分もと言ってきた。青とか、そういう色の花を使って作ってみた。男性であるお父様にプレゼントするには可愛すぎるかな、とも思ったけれどお母様のように喜んでくれたからいっか。



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