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目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜  作者: 楠ノ木雫
第三章 幸運のしるし

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◇15 【クローバー】

「……それ、何?」


「え? あぁ、これは接着剤でございますよ」



 ……いや、思いっきりレジンじゃん。


 それは、屋敷のキッチンに向かっている最中のことだった。とあるメイドさんが、廊下の窓で作業をしているのが見えたから声をかけた。



「壊れちゃったの?」


「えぇと……実は、荷物を運んでいる時にぶつけてしまったのです。ですが大丈夫ですよ、すぐに対処出来ますから」



 そして、出てきたのは接着剤のようなもの。それと……あれ、それって、懐中電灯?


 まさか、と思っていたら接着剤を接着部分に塗り、懐中電灯のようなもので光を照らしていたのだ。


 うん、これ絶対レジンだよね。



「ほら! いかがですか? すぐにくっつくのですよ!」


「うわ、くっついちゃった……」


「これぞ魔道具の力というものです!」



 うん、この世界の魔道具は本当に驚くものばかりだ。というか、凄すぎて言葉が出ないものだってある。



「……あの、さ、お願いしてもいい?」


「え? お願いですか?」


「うん」



 地球には、ハンドメイドというものがある。かくいう私もハンドメイドをした事があるのだけれど、それは……レジンのアクセサリー作りだ。


 身体が弱い私はインドアだったから、こういうハンドメイドも挑戦、というかママに勧められた。だから、いくつか作った事がある。


 じゃあ……この世界にもレジンがあるのなら、作るしかなくない? だって、押し花もいっぱいあるんだし。だよね? うん、やっぱり作るべきだよね! うんうん!


 そうと決まれば、まずは道具を揃えなきゃ。


 そうして、私のレジンアクセサリー作りが開始されたのである。



「その接着剤がくっつかない素材ってない?」


「そう、ですね……」



 と、メイドさんがとあるものを持ってきてくれた。これは……透明なシート? この感触は……もしかしてシリコンかな?


 やってみないと分からないけれど、これで何とかいけそうかな。


 その接着剤と魔道具のライトをもらい、私は私室に戻った。そして、貯めに貯め込んだ押し花をわくわくしながら厳選した。初めて作るから、最初は小さいものを作ろう。このサイズがいいかな? と小さな白いお花を選んだ。



 シリコンシートに、まずは接着剤らしいレジンを丸の形になるようゆっくりと垂らす。そして、すぐにライトを当てて固める。テープで貼り付け、ひっくり返す。シリコンシート側になっていた平らな部分が上になるから、その部分に薄く接着剤を広げてから選んだ押し花を綺麗に並べ、またレジンを垂らす。


 ぷっくりになるまで垂らしては固めてを繰り返す。


 うん、これで、いい、かな?



「出来た!」


「まぁ! とっても素敵です!」


「接着剤で押し花を閉じ込めるなんて、考えもつきませんでした!」



 という周りの声で気が付いた。なんか、後ろにメイドさん達集まってない……? 集中していて気付かなかった。


 何かあるたびに思うんだけど……ここのメイドさん達って、女子力高いよね。ちょっと、負けたような気分になるな……


 なんて思いつつも、久しぶりに趣味を満喫出来て嬉しかった。押し花がいっぱいあるから作りすぎはダメだよねと我慢していたけれど、これならいっかとまた押し花づくりを再開しレジンで固めては私室にレジンの押し花チャームがどんどん増えていった。



 そんな、ある日の事。


 お母様と二人でアフタヌーンティーの時間を過ごしていた時の事だった。



「え? 押し花を、ですか?」


「そうなの。以前こちらでお客様をお呼びした時ね、飾ってあったアヤメちゃんが作ってくれた押し花の額縁あったじゃない? あれが素敵で気に入っちゃったらしいの。どこで購入したのか聞いてきたから、娘の手作りよって教えてあげたら私にも作ってほしいって言われちゃったの」



 プレゼントした額縁をお母様とお父様は執務室や客間に飾ってしまった時、何度も私室にしてくださいって言ったのに。恥ずかしいからって言っても、本人達は外す気は更々なかったから諦めたけど、こんな事になってしまったとは。



「とても絶賛してたのよ。こんな花の使い方は普通思いつかない、って。それで、提案があるの」



 絶賛ですか。でも、ここのお花はとっても綺麗だから、ってところもあるかもしれない。私の加工でお花の綺麗なところが邪魔しちゃうかなって思ってたから、それは正直嬉しいな。


 けれど、お母様は爆弾を投下した。



「私のお店に置いてみない?」


「……え”!?」



 お母様の経営しているお店、【ティスタニティ】という名の、装飾品を扱うお店だ。とっても人気で有名なお店となっているのだとか。一回行ってみたいなって思ってはいるんだけど中々行けないのよね。



「あ、あの、装飾店、では……?」


「最近は雑貨も扱うようになったのよ。それに、装飾品も作ってるじゃない」


「う”っ……」



 ……私、レジンについては全くお母様に言ってないはずだったのに。一体誰だ、お母様に言ったの。



「あんな発想誰も思いつかないわ。きっと世の中の女性達が喜ぶアクセサリーになると思うの。どう?」


「どう、と言われましても……」



 あ、勿論無理はさせないわ。とニコニコしている。お母様も経営などの部分は手伝ってくれるようだ。でも、ただのド素人の作ったものをお母様の大切なお店に並べるなんて、絶対邪魔になる!



「もし難しいなら、金具部分はこちらから受け持つわ。それならどう?」


「……本当に、いいん、ですか……?」


「えぇ、本気よ。それに、これも勉強の一つになると思うの。どう?」



 勉強って言われると……断れない。まぁ、私が今勉強してるのは淑女としての基本の知識だけ。そういったものには触れた事もないし、将来私は何をするのか全く考えた事もなかった。


 お母様がここまで言ってくださってる。マリア達も、とっても素敵ですって言ってくれて、とても嬉しかった。お世辞なのは分かってるんだけど、それでも。



「……あの、お店の隅あたりに置いていただけるなら」


「ふふ、本当なら来店してすぐに目がいくど真ん中に置きたいのだけど、仕方ないわね」



 そ、そんなの無理ですっ!!!



 この異世界に来てまだ一ヶ月しないうちに、アクセサリーのチャームを作るお仕事をいただいてしまった。養ってもらっている側だから何か返したいとは思っていたけれど……返せるように頑張ろう。


 でも、お庭のお花をあまり傷めたくないから、作る量は少なくしてもらった。ブランドって事にしちゃいましょ? と言われてその通りに。


 【クローバー】


 この名前で、売り出される事になった。この世界には、クローバーという植物はないそう。似たものも探してみたけれどなかった。


 地球では、幸運のしるしと思われてきたからこの名前にしてみた。ロゴももちろん四つ葉のクローバーだ。


 でも、どうなるかな……絶対他の装飾品に埋もれちゃうよね。多分置きっぱなしになっちゃうだろうなぁ……


 お母様は、私が作ったチャームをアクセサリーに加工してくれる適任者をすぐに屋敷に呼んでくれて、瞬く間にアクセサリーに生まれ変わってしまった。とても素敵なアクセサリーに姿を変えてしまったから、これがプロの技かと尊敬してしまった。



「さぁて、お店に出してどうなるかとっても楽しみだわ」


「きっとご来店された方々の目に留まります。すぐ売り切れると思いますよ」



 そこまでいく? だって、プロが加工してくださったとはいえチャームは素人よ? さすがにそれはないと思うんだけど……


 そんな軽い気持ちで屋敷の庭でお母様と優雅にお茶を飲んでいた時、屋敷のメイドさんが私に知らせてくれた。


 出してすぐ完売した、と。


 アクセサリーも、額縁も。



「ほらね、こうなると思ったわ」


「う、そ……」


「さすが、私達の娘ね」



 私は、口が塞がらなかった。


 それからというものの、次はいつ出るのか、予約は出来ないのか、依頼をしたいのだけれど、といったものが多く言われるようになったそう。お母様からは、焦らず決まった数だけを作りなさい、と言われている。と言ってもだいぶ少ない量ではある。いいのかな、きっとお店の方達大変だよね。



「いーい? 無理をしないってお母様と約束しなさい。私達はアヤメちゃんが倒れちゃう姿は見たくないの。重荷を背負わず、好きなように作ってちょうだい。ね?」


「でも、いいんですか?」


「少なく作る事で希少性が高まるわ。これも戦略の一つよ。きっとすぐに社交界に広まるわ。手に入れる事が難しい、他とは全く違うデザインのアクセサリーを作っている【クローバー】という名のブランド。とね」



 と、言ってくれた。いいのかな? でも、お庭のお花を無暗に切っちゃうの嫌だし、いっか。


 因みに、今お母様と私の胸もとにはお花のネックレスが飾られている。勿論私が作ったものだ。それを見て羨ましがっていたアメリアさんにも色違いのお花で作ったネックレスを贈らせてもらった。



「肌身離さず使わせてもらうわね」


「お、お母様、そこまでは……」


「なぁに言ってるの、可愛い愛娘が作ってくれた大切なネックレスなのよ? 当たり前じゃない」



 とっても喜んでくださったらしい。


 あと、羨ましがっていたのはもう一人。お父様だ。男性の方だから中々使えない為、その代わりにカフスボタン今こっそり製作中だ。これも挑戦の一つかなって頑張ってる最中。


 いいものが出来るといいな。お父様、気に入ってくれるかな?



 もしよろしければブクマ、評価、ご感想などなどよろしくお願いします。特にご感想やレビューなどがあればとても嬉しいです。励みになります!

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