覚醒の前兆
「さて凛の治療を始めるからそこに座ってて」
そう言って袋から丹薬を取り出し治療を始めた。
一刻後治療が終わったが、心配そうにこちらを見ていた。
「ねぇ麗夜…私がいなかった5年間何があったが教えてくれる?」
お母さんは軽く手を握りそう言った。
無理もない母さんは貿易のために五州をずっと回っていて今日やっと帰ってきたのだ。
「分かりました」
3年前に欠けた書物を修行し丹が割れたこと、毎日のように違う弟子からバカにされてること、自分に仕える人が凛一人になったことなど全て話した。
「…なら、仁は何をしているの?」
ふっ、その名前を聞くと自然に笑いたくなった、そう親父の名前だ。
「あいつは俺が廃人になったときから息子なんてなかったことになってるよ一族の恥だとね」
そう言うと母さんも黙り気まずい空気になった。
何分かの沈黙のあとげほ、げほと咳音が聞こえた。
「凛!大丈夫か」
怪我をすることは日常だが倒れるのは初めてだ、自分の無力に呆れるほどだ。
「麗夜様は私は大丈夫です」
凛はいつもの笑顔で返事をしてくれたが、顔は堅苦しかった。
「麗夜、ちょっとこちらで話しましょう」
母さんは察してくれたのか外に出るように言った。
「凛はいい子だね、あなたが廃人になってもあの子だけはあなたを見捨てなかったわ」
「ねぇ母さん遠回しじゃ時間も勿体無いからそろそろ本題に入ろう」
ちょっと驚きながらも話し始めた。
「麗夜あなた修行できる体に戻りたくない?」
そう言われた時希望が見えた、何年も何度も数えきれない方法を探して試した、全て無意味だった…。
「本当に治るの?!」
母さんの顔を見るともちろんと書いているような笑顔だった。
「体のどこかに黒い石はない?」
確かに黒い石があった廃人となった3年前から突如出てきたのだ、取れないし壊さない、うんざりしながらも持っているしかなかった。
「3年前からずっとあった座ると出てくるんだけど」
確信をもつかのように言い始めた。
「じゃそこに座って壊すからね」
この時の笑顔が不気味すぎて笑えなかった、冗談かと思ったが顔を見ると本気だ…
ふん!っと共に何かが割れる音が響いた、すごい力と共に怖かった、後数センチずれてたら息子も一緒に消えるところだった。
「さあ、これで壊したけどどうかな?」
体はどころも変化してないけど前より清々しい気分だけだった。
「うーん清々しい気持ちになった」
「え、それだけ?」
「それだけ」
母さんはあれ?みたいな顔をしていたがそれだけでもよかった。
「まあ母さんのおかげで多少良くなったし今はこれでいいよ」
笑顔で答えながらも心のどこかでがっかりしていた…
「今日はもう遅いからもう寝るよ、おやすみ」
そして寝てる時にそれは起きた、
体中が痛い骨が頭が全てが…
「ハァハァ」
痛みのあまり起きてしまった、くそなんだよこれ、数分間我慢したものの耐えきれず気絶してしまった。
目を覚ますと全く知らない場所にいた。
「なんだここ」
疑問を持ちながらも歩き続けた。
「おい、小僧」
目の前には全く知らないおじさんがいた。
「やっと気づいたか」
そこには知らない人が3人いた。
「えっと誰…ですか?」
俺たちはお前の前世だ。