灯りに捧ぐ
掲載日:2021/11/30
高層ビルの灯りの
ひとつひとつに、
見知らぬ人たちが、
暮らしている。
何かしら息がある。
あの灯り、あの部屋、
同じ時を生きている。
会うこともない、
見えることもない。
幻想かもしれず。
その奇跡には
今も怯えている。
会えるはずもない、
見えるはずもない、
あなたを知ったから。
あなたは私の夢、
理想、救い、そして、
言葉が出ないままの私を、
私のままに
成り立たせるもの。
いつからなんだと、
今日も考えている。
私が私を生きなく
なったのはいつからか、
空と雲と土に埋もれ。
高層ビルの灯りを
遠くから眺めたとき、
あなたは泣いていた。
私はそのとき、
心から言葉を落とした。
拾えない深い穴に、
無気無しの言葉を落とし、
心まで引きずられて
私は落ちていった。
私は私を失った。
人たちが溢れてくる。
騒々しさが戻ってくる。
嬉しそうな顔なら、
なぜか哀しくなる。
自分の人たちを忘れて。
言葉がボコっと
出てくるまで待とうか。
言葉にしか頼れず。
それだけのことなのに、
私は私を探して疲れた。
あなたは私の希望、
情愛、明日、そして、
涙も出ないままの私を
私のままに、
連れてゆくもの。
どうか安らかに。
どうか心地よく。
見知らぬ人たちに捧ぐ。
知り得たあなたに捧ぐ。
高層ビルの灯りに捧ぐ。




