表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は鈍感で  作者: 烏川 ハル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

前編

   

「あっくん、今日も一緒に帰ろう!」

 放課後。

 敦弘のクラスに入っていくと、いくつかの冷やかしの目がこちらを向いた。視線だけでなく声に出す者もいる。

「またヨメが来てるぞ」

「羨ましいぜ、幼馴染のいるやつが」

「今日はバレンタインだからな」

 彼のクラスでは、私は敦弘の『嫁』あつかいだ。彼の耳にも聞こえているはずだが、鈍感な敦弘は誤解している。愛称の『よめ』だと思っているのだ。

 私の名前は「清芽」と書いて「きよめ」と読む。ただし「きよめ」では母親の「清美きよみ」と紛らわしいので、昔から「よめちゃん」とか「よめ」とか呼ばれてきた。

 でも、親しくない男の子たちが私を愛称で呼ぶわけないのに!

 なんで敦弘はわかってくれないのだろう!


「もう二月も半ばってことは、そろそろ今年最後の実力テストか……」

「実力テストは日頃の蓄積。付け焼き刃の勉強じゃダメだよ、あっくん」

 駅前の商店街を抜けて住宅街へと続く道を、二人で並んで歩く。彼の部活がない日の、いつもの下校風景だ。

 私と敦弘は小学校も中学校も高校も一緒で、母親同士が昔からの仲良し。家も近所なので、家族ぐるみの付き合いだ。

「そうだけどさ。でも勉強って、一人だと難しいだろ?」

 前々から敦弘は、一人で机に向かうと勉強以外のことをしてしまう、とよく言っている。それで定期テスト前は、私の部屋で二人で勉強する習慣になっていた。

 実力テストは定期テストとは違うから、私としては、改まってテスト勉強の予定はなかったが……。

 敦弘と一緒ならば話は別だ。しかも今日はバレンタイン、いつどうやってチョコを渡すか悩んでいたけれど、部屋で二人きりになれたら、いくらでも機会はある!

「じゃあ、今日から一緒に勉強しようか」

「そう言ってもらえると助かる」

 嬉しい返事だ。顔では何気ないふうを装いながら、心の中で私はガッツポーズした。


 かつては「よめちゃんのお嫁さんになる!」と言っていた敦弘。『嫁』と『夫』の区別もつかないほど小さい頃の話であり、当時は家族公認のカップルみたいだったが、いつのまにかそんな空気は消えてしまった。

 今では単なる仲良しの幼馴染だ。親友と言えば聞こえはいいが、異性として意識されていないのでは、と心配になるくらい。

 私としては、小さい頃よりむしろ今の方が敦弘を好きなのに!

 いくらアプローチしても気づかない彼を振り向かせるには、バレンタインは絶好の機会。今年こそ何とかするつもりで、手作りチョコを用意してあって……。

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ