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終章 「その、次へ」

 終章 「その、次へ」


 戦いは終わった。

 国連軍の被害は甚大だった。だが、世界地図からユニオンという国は無くなった。

 国一帯が跡形もなく吹き飛び、中心人物だったカソウ・ヒカル、セルファ・セルグニス、ヤザキ・シュウ、ハクライ・ジン、ハクライ・カエデ、エンリュウ・ショウ、エンリュウ・ミズキの七名の死亡が発表がされた。

 ユウキは仮設住宅のドアを開けた。今は、そこがユウキたちの住処だ。

「そろそろ、ここから出られそうだ」

 家の中へ入って、ユウキはそう言った。

「私たちは、どこへ行くの?」

 シーナが聞く。

 ユウキたちは、皆、事前に渡されていた偽造の身分証で難民に紛れ込んでいた。

 とりあえずの住居として提供された仮設住宅にずっと住んでいるわけにもいかない。手続きや処理が済み次第、ユウキたちも受け入れた国の市民として生活することになる。

「皆、同じところみたいだよ」

 ユウキは偽造身分証を見つめた。

 記されている名前は、アイオ・ライト。シーナの偽名は、エメラ・ライトだった。

 別の部屋には、レェンやハルカ、リョウたちもいる。

 人数が多いため、レェンはハルカたち姉妹と相部屋、リョウとヒサメも相部屋になっていた。ユウキとシーナは、マーガレットと一緒に暮らしている。

「それにしても、父さんたちは全部見抜いていたんだろうな……」

 マーガレットへと視線を向ける。

 後になって判ったのは、マーガレットにも偽造の身分証が渡されていたということだった。つまり、ヒカルたちはマーガレットがアウェイカーであることを知っていたのだ。

「こうなることも、気付いていたのかしら……」

 マーガレットが呟いた。

 ユウキも、何となくそう思っていた。

 いつか、ユニオンが世界から敵と見做されて攻撃されるのではないか。ずっと前から、そう考えていたのかもしれない。だから、この身分証も既に用意してあった可能性もある。

「……ねぇ、もしかして……」

 シーナが小さく呟いた。

 もしかしたら、ヒカルは装置を壊せなかったのではなく、壊さなかったのではないだろうか。ユウキと全く同じ力を持っているヒカルが、気付けなかったとは思えない。

 ヒカルが壊していなかったから、ユウキはユニオンに向けられた装置を見逃した。

「わざと、死んだって言うのか……?」

 ユウキは愕然とした。

 ヒカルたちは、自らこの世界から姿を消したのだろうか。

 そうすることで、アウェイカーが、人間の手で倒せる存在であると周りに伝えることができる。人間の手に負えない存在ではないのだと、アウェイカーの脅威を小さなものに変えようとしたのだろうか。

 国のトップだったヒカルが死んだとなれば、アウェイカーたちの士気も低下する。ユニオンのような国を創ろうという動きも抑えられるだろう。

「……そうか」

 ユウキは、気付いた。

 ユニオンは無くならない、とヒカルは言った。それは、ユニオンという国がアウェイカーだけの国ではないことにも関係している。ユニオンはアウェイカーであることに関係なく、あらゆることに寛容な国だった。そこに住まう人々も、お互いを思いやることを良しとしていた。

 アウェイカーの存在に寛容な人もいるのだ。

 ユニオンという国を知っていた人がいる限り、あの国が無くなることはない。

 国とは、そこに住まう人々なのだから。

 ヒカルが言っていたのは、そういうことだ。

「俺たちが、伝えて行かなきゃいけないんだ」

 壁に立てかけられた日本刀に目を向けて、ユウキは言った。

 ヒカルたちの思いは、ユウキたちに引き継がれたのだろう。かつての戦いを生き抜いた者たちから、ユウキたちは多くのものを託された。

 きっと、彼らの魂もユウキたちは受け継いでいる。

「責任重大ね……」

 マーガレットが苦笑した。

 彼女も、笑えるまでに回復している。強い女性だ。

「大丈夫、一人じゃないんだ」

 今度は、ユウキたちがそれを次に繋げて行くのだ。

 不安はある。

 立ち止まることも、振り返ることも、するかもしれない。

 それでも、迷うことだけはしないだろう。

 ユウキたちが、これからの世界を生きて、創って行くのだから。



 ――終――


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