表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

序 「空を舞う光」

 序 「空を舞う光」


 空にいくつもの点が見えた。

 青く澄み渡った空に浮かんだ点が近付いてくるのを、一組の男女が眺めていた。

「全く、凝りもせず……」

 青年が呟いた。寝起きでボサボサの黒髪を掻きながら、溜め息をつく。

 どこか野性味のある顔立ちに、熱気の篭った瞳の青年だ。しかし、それでいて彼の態度は冷静そのものだった。

「そろそろ、防衛圏内に入るな……」

 隣で、女性が静かな声で呟いた。長く艶やかな黒髪が風に揺れる。

 刃のように鋭い切れ長の双眸を更に細め、腰の左右に携えた短刀に両の手をかける。

 刹那、光が二人を包み込んだ。

 青年の右目が灼熱の赤、左目が澄んだ水のような青の光を帯びる。淡い光に包まれた身体は、右手に行くにつれて赤が濃くなり、左手に行くにつれて青が濃くなっている。

 対する女性は、右目が雷のような黄金の、左目が淡い緑の光を帯びていた。青年のように、彼女の纏う光も左右で色が変わっている。

「行くぞ、ヒサメ」

「あいよ、リョウ!」

 二振りの小太刀を抜き放った女性に、青年が応じる。

 雷光を纏った右の小太刀が一閃された瞬間、刃を包んでいた輝きが飛んだ。空を雷光が駆け抜け、空に浮かんでいる点にしか見えなかった輸送機を、いくつも巻き込んで撃墜する。

 青年が右の拳を大きく振り上げた直後、地面を一直線に炎が走った。青年の足元から、真っ直ぐに遠ざかっていく炎は、輸送機の真下に辿り着いた瞬間に大爆発を起こす。一気に燃え上がった炎は火柱となって空へと辿り着き、輸送機を呑み込んでいく。

 加速する輸送機が近付いてくる。三分の二程度は撃墜できただろうか。それでも、二人が相手をするには数が多い。

 女性が左の短刀を振るう。突如巻き起こった突風が上空の輸送機に直撃し、バランスを崩させる。バランスを崩した輸送機が別の輸送機に接触し、お互いに破壊し合って爆散した。

 青年が左手を空へ伸ばす。その手の先にあった輸送機が凍り付き、空中で砕け散った。

 二人のいる場所にかなり近付いた輸送機の底にあるハッチが開いた。人と同じぐらいのサイズの機械が投下され始める。

「ちっ!」

 青年が舌打ちし、地面を蹴って跳躍する。

 人間の限界を超えた跳躍力で、青年の身体が宙を舞う。青年の足の裏で爆発が起き、その反動で身体を浮き上がらせる。右手に炎を、左手に冷気を纏い、降り注ぐ殺戮機械を空中で薙ぎ払う。

 女性も、駆け出していた。二つの短刀を逆手に持ち替えて、常人を逸した瞬発力で大地を翔ける。大きく地面を蹴って跳躍し、雷光を纏って空を駆け抜けた。雷鳴が空気を裂く爆発のような音を響かせながら、雷に近い速度で輸送機に接近する。そのままの速度で左右の小太刀を振るい、輸送機を切り裂いた。

 速度と、力で強化された刃が輸送機の装甲をいとも簡単に貫き、切断する。

 女性が輸送機を撃墜し、青年が吐き出された機械兵器を殲滅していた。

 雷鳴と突風が吹き荒れ、冷気と炎が荒れ狂う。

 背後には街が広がっていた。輸送機は、街を蹂躙するためのものだ。二人は、迎撃のためにここにいる。

「取り逃した分は頼むぜ、ユウキ……!」

 口元に笑みを浮かべて、青年は拳を握り締め、目の前の殺戮機械に突き込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ